【ロンドン】仮想通貨ビットコイン業界団体の幹部によると、英国の税当局はビットコインなど仮想通貨を正規の通貨とほぼ同様に扱う規制を近く公表する見通しだ。この幹部は英歳入関税庁(HMRC)が作成している規制案を閲覧したという。
仮想通貨の業界団体、英デジタル・カレンシー・アソシエーション(DCA)のディレクター、トム・ロビンソン氏によると、同氏は先週会合に出席し、そこでHMRCからデジタル通貨(仮想通貨)の税規制案の概要を説明する文書を提示された。仮想通貨は従来の貨幣の要素と投機的な資産の要素を合わせ持つことから、世界各国の税当局は仮想通貨の扱いをめぐる対応に苦慮している。
ロビンソン氏はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、「規制案はかなりまとまっており、HMRCが来週くらいに規制案を公表する、とわれわれは理解している」と述べた。同氏はデジタル通貨サービス会社エリプティック(Elliptic)の共同創業者でもある。
同氏は「説明文書で示されたデジタル通貨の課税措置は、他の通貨のそれとほぼ同じだった」と述べ、「例えば、デジタル通貨の購入や、取引所が徴収する取引手数料には、付加価値税(VAT=売上税のようなもの)が課されない」と話した。
ロビンソン氏は新たな規制について、自身の閲覧した説明文書に提示されていた通りになると確信しているものの、その保証はできないと述べた。HMRCは「ビットコインの取引や仲介手数料の税制上の扱いについてビットコイン業界と緊密に連携している。近いうちにテクニカルな指針を公表する」との文書を発表している。
英国は他の欧州の国々と同様、大半の物品やサービスの購入にVATを課している。ある製品にVATが課されるとすれば、製品の代金がポンド、ビットコイン、ないしそれ以外の何かで支払われたかに関係なく税金を納めなければならないが、英国では現在、ビットコインの購入そのものにはVATが課されていない。投資家がビットコイン投資で得た収益に対するキャピタルゲイン税を支払っているか否かも不明だ。
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新たな指針は、ロビンソン氏の予想通りの内容で公表されるのであれば、通貨の購入にVATを課さないという慣行が維持されることになる。説明文に関する同氏の理解によれば、HMRCはデジタル通貨の取引で得た収益にキャピタルゲイン税を課す公算が大きい。これは、従来の通貨や株式の取引で得た収益にキャピタルゲイン税が課されるのと同様だ。
英国は現在、個人利用のために英国外で購入した外貨で得た収益をキャピタルゲイン税の対象外にしている。投資ではなく個人利用のために購入したビットコインを英当局がどう扱うのかは不明だった。
英税当局の動きは世界各国政府がデジタル通貨への監視を強めていることの表れだ。デジタル通貨はインターネットという末端で利用されるものから、より多くの人々に受け入れられるものに変化している。ロビンソン氏は、ビットコイン利用に対する課税措置を明確にすれば、英国から去ることを考えたかもしれない一部のビットコイン関連会社を、そのまま英国にとどまらせる力になるだろうと述べた。
ノルウェーやドイツなどの国は既に、仮想通貨の売買で得た収益が税の対象になるとの見方を示している。連邦政府レベルのVATが存在しない米国では、内国歳入庁(IRS)が現在キャピタルゲイン税、通常の所得税、ないしその他の税を徴収すべきかを検討している。ただし最終的な規制は公表していない。
ビットコインに関する一連の騒動が浮上するなか、デジタル通貨の監視強化を求める声は高まっている。かつてビットコインの支配的な取引所だったMt.Gox(マウントゴックス)は2月28日、同社のデジタル金庫から4億7000万ドル(約477億円)相当以上のビットコインが消滅したことを明らかにし、被害者とサイバー捜査専門家による消滅したビットコイン探しが加速している。
米証券取引委員会(SEC)を含む金融市場の規制当局は、ビットコインが自らの管轄下にあるか否かの検討をなお続けている。銀行や決済システムを統括する機関がビットコインを監視しているものの、連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、ビットコインがFRBの監督する銀行に「接触しない」限り、FRBにビットコインを規制する権限はないと述べている。
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