2014年03月05日

「俺がバス囲んだから勝てたんだぜ!」という壮大な勘違いについて

※以下の記事は、あくまでも去年の清水(2013/3/30)におけるバス囲みについての考察であり、必ずしも他チームのバス囲みや居残りに当てはまるとは限らないので、あしからず。あと、しみスレにはもう貼られちゃったのでアレですが、今後は2chへの直リンクは控えて頂きますようお願い致しますm(_ _)m

 清水が勝利した開幕戦の翌日に行われたJ2の某試合で、試合結果に不満の一部サポーターが、試合終了後にスタジアムに居残ったというニュースがあった。それで、後日そのことについて書かれたブログ(下記参照)を見つけたのだが、その内容が非常に秀逸で共感するところが多かった。そこで、自分としてもこの機会に、昨年の清水におけるバス囲み事件を振り返ってみようと思う。


Jリーグが不人気になって行く理由の一端。千葉サポ居座り報道について。
追補記事「Jリーグが不人気になって行く理由の一端」 結局サポーター自身が考えていく問題なんだろう。

 上記の記事の主張は、乱暴に要約すると、「居残りやバス囲みは、Jリーグのことを良く知らない人たち(≒ライト層)に悪いイメージを与えるので、やめたほうが良い」というもので、この点については自分も同意である。しかし、上記の意見に対しては、「そんなこと言ったって、ライト層云々よりも自分の応援する目の前のチームの方が大事だ。フロントや監督の過ちを正すためには、時にはサポーターによる実力行使もやむを得ない」という反論があり得る。

 現に清水の場合も、「バス囲みがあったから勝てるようになった」という意見が聞かれることがある。確かに、去年の開幕戦後の清水の戦績を見てみると、

J1第1節:vs大宮△(2-2)
J1第2節:vs横浜●(0-5)
J1第3節:vs湘南△(1-1)
ナビ第1節:vs甲府△(1-1)
ナビ第2節:vs磐田●(1-5)
J1第4節:vs広島●(0-4) ←ここでバス囲み
J1第5節:vs鳥栖○(1-0)
ナビ第3節:vs川崎△(0-0)
J1第6節:vs磐田○(1-0)
J1第7節:vsC大阪△(1-1)
ナビ第4節:vs大宮○(3-2)
J1第8節:vs浦和○(1-0)

 となっているので、清水が勝てるようになった時期は、バス囲みがあった時期とほぼ一致する。しかし、だからといって、バス囲みの「おかげで」勝てるようになったとは限らない。むしろ、バス囲みは、ライト層へのイメージ云々を抜きにしても、チームに与えるデメリットが大きく、慎むべき行為だというのが自分の意見である。以下、この点について詳細に述べてみたい。


1.清水が勝てるようになったのは、バス囲みではなく非公開練習のおかげ

 昨年序盤の清水の不調を語る時、いわゆる「3ボランチ」に象徴される指揮官の戦術選択のまずさが指摘されることが多く、そんな無能な指揮官は囲まれて当然という言われ方をされることがある。しかし、清水が勝てなかった原因は、本当に戦術のせいだけだったのだろうか。自分としては、事はそう単純ではなく、以下に述べる複数の要員が絡み合って序盤の不調があったと考える。

①そもそもの戦力が足りていなかったこと
 ⇒アレックス、大前、小野、大悟という攻撃の核の放出による得点力低下
②新加入のバレーのコンディション不良
 ⇒バレーはキャンプ中の練習試合&PSMで無得点、開幕時点で戦術バレーは無理
③主力選手の怪我
 ⇒キジェ・河井を欠いて左SBのレギュラーが不在
④3ボランチへの移行の失敗
 ⇒個人的には、①~②の事情があった上でやむを得ない選択だったと思うが…
⑤チームとしての戦い方の意思統一の不足
 ⇒戦術変更があったことによる時間不足
⑥自信喪失&メンタルコントロールの失敗
 ⇒良い時は良いが、悪い時はとことん悪いという若手中心の懸念点がモロに出た。
⑦対戦相手が単に強かった
 ⇒リーグ戦1位の広島、2位の横浜FM、前半戦2位の大宮が相手

 これに対し、4月から勝てるようになった原因だが、まずバレーのコンディションが徐々に戻ってきたことで、②の問題が解決された。それにより、前年の2ボランチをベースとした「戦術バレー」への移行が可能になり、④⑤の問題も解決された。また、キジェが鳥栖戦から復帰したことにより、③の問題が解決されてDFラインが安定した。⑦の点でいえば、それまでの対戦相手よりも相対的に弱い鳥栖(年間12位)、磐田(年間17位)、浦和(年間6位+カウンターが弱点)といった相手と対戦できたことも大きかった。
 そして、個人的に一番大きいと思うのが、広島戦の敗戦後~磐田戦までの約2週間の間、練習を全て非公開にした点だ。以前、エスパルスニュースの中で、枝村選手が2005年の残留争いについて語っていた記事で、「…あのような(降格のかかった)状況では、練習時におけるサポーターの応援がかえってプレッシャーになっていてキツかった」という趣旨のことを述べていて、なるほどと思ったことがある。要するに、このような状況では、選手達は一種のパニック状態に陥っているので、まずは外部の雑音を取り除いて彼らを落ち着かせ、彼らがやるべき仕事(=練習)に集中させてあげることが一番大切なのだ。
 非公開練習があったお陰で、選手は外部の雑音から遮断され、落ち着いて目の前の課題に取り組むことが出来た。その結果、選手・監督間で話し合いを重ねるなどして、⑤のチームとしての位置統一が図られ、④の戦術バレーへの移行もスムーズに行えた。更に、パニックが落ち着くことで、⑥のメンタル面の自信も僅かながら取り戻すことができた。これらの要素に加え、上述したバレーのコンディション向上や対戦相手の弱体化などが相まって、何とか3月の苦境を脱することができた…というのが自分なりの理解である。
 それでは、上記のプロセスに、バス囲みがどれくらい貢献しているのだろうか。先ほどの項目と対比させてみると、

①戦力不足
 ⇒バス囲み後も依然として改善されず
②バレーのコンディション改善
 ⇒バス囲みと関係なし
③主力選手の怪我からの復帰
 ⇒バス囲みと関係なし
④3ボランチから2ボランチへの修正
 ⇒バス囲みのずっと前(湘南戦)からやってた
⑤チームとしての戦い方の意思統一
 ⇒バス囲みはむしろ逆効果
⑥自信の回復
 ⇒バス囲みはむしろ逆効果
⑦対戦相手の弱体化
 ⇒バス囲みと関係なし

 という訳で、バス囲みをやってみて、何か1つでも改善した項目があっただろうか。ほとんどの項目はバス囲みとは無関係であり、⑤の意思統一や⑥の自信回復に至っては、バス囲みにより選手を恫喝することはかえって逆効果だった可能性が高い。
 もっとも、一部の方はこう反論するかも知れない。「それまでの清水には危機感が不足していたが、バス囲みのお陰でチームに危機感が生まれ、そのお陰で勝てるようになったのだ」と。そう思いたい気持ちも分からないではないが、悪いけどそれはちょっと違うと思う。それまでの試合結果や試合内容がヤバいことは、自分のような素人を含めた誰の目にも明らかであり、それに対して選手達が何の危機感も抱いていなかった…なんてことがあり得るのだろうか(いや、ない)。むしろ、選手達はサポに恫喝されるまでもなく強い危機感で一杯で、前述のパニック状態に陥っていた可能性が高い。
 そもそも、やる気のないバイトや宿題嫌いの中学生ならまだしも、「サポに恫喝されるまで危機感を抱かない」程度のプロ意識では、J1チームのレギュラーなど到底務まらないだろう。選手のことを子供扱いするのは勝手だが、それってある意味選手に対して、「お前のプロ意識はやる気のないバイト並だ」って言っているに等しく、とても失礼なことなんじゃないかと思うのだが…。
 まあ百歩譲って、一部サポのいう「危機感」とやらが勝利の一因だったとしても、それは前述した②~⑦の要素を凌駕するほどのものとは個人的には思えないし、それがバス囲みによって初めてもたらされたものとも思わない(試合後のブーイングで十分)。むしろ、サポーターからの反発を承知の上で、失敗すれば自らも責任を問われかねない非公開練習という英断に踏み切った清水のフロントこそが、低迷脱出の隠れた功労者であり、讃えられるべきであると思っているのだが、いかがだろうか。


2.バス囲みの負の側面について

 ここまでで、バス囲みには実はチーム状態を改善する効果がほとんど期待できないことを書いてきた。続いて、バス囲みの様々なデメリットについて言及していきたい。

(1)チームのリソース(=人的資源)の無駄使い

 サッカーの場合、次のリーグ戦までの準備期間は僅か1週間しかない。この中で、前の試合のリカバリーをし、反省点を確認した上で、次の試合に向けた準備を進めていかなければいけない。チーム状態が悪ければ、それこそ改善すべき点は山ほどあるはずであり、選手や監督、それにチームスタッフ達にとっては、1分1秒たりとも無駄にできないくらい貴重な時間であると考えられる。
 しかし、清水のバス囲みが行われた日には、選手バスが長時間拘束され、結局試合後の重要なミーティングができなかったと聞く。これはもう、一種の営業妨害と言って良いだろう。また、バス囲みの対応に追われたスタッフ達についても、本来はやるべき他の仕事があったはずであり、こうした予定外の仕事に人員や時間が取られることは大きな痛手であろう。
 選手達にとっても、自分たちに攻撃的な外部の声に対しては、心理的に防御態勢を取らざるを得ず、そのことが気になってプレーが萎縮したり、練習に集中できないという事態は容易に想像できる。数日後には強敵との戦いが控えているというのに、これ以上選手の敵を増やしてどうしようというのだろう。フロントが練習を非公開にしたのも、ある意味当然の処置といえる。

(2)素人がクラブ経営に口を出すことの危険性

 バスを囲んだ一部のサポーターは、ゴトビ監督や原強化部長の退陣を求めていたと聞く。しかし、こうした一部の過激派の声にクラブの経営が左右されることは、チームにとって致命的な痛手となる可能性がある。
 確かに、サポーターも「客」である以上、クラブに対し様々な面で改善要求をする権利はある。例えば、試合の運営に関する改善点とか、広報のやり方についてアイディアを出すだとか、そういったことはむしろどんどんやったほうが良いと思う。しかし、監督人事や選手の獲得・放出・起用といった事項にサポーターが口を出すのは、やはり越権行為と言わざるをえないだろう。そこは、サッカーに関する深い知見はもちろん、チームのビジョンや財政事情を踏まえた高度な判断が必要になる場面であり、素人がおいそれと口を出して良い場面ではない。悪いけど、そういうことがやりたい人は、サカつくで自分のチームを作って思う存分やってくれ。
 分かりやすいように1つ喩え話をしよう。あなたは旅客機に乗って目的地を目指していたとする。たまたま遭遇した嵐のせいで機内は大揺れ、先程からジェットコースターのような上昇と下降が繰り返され、いつ墜落するかも分からない恐怖と戦っている。どうも、この飛行機のパイロットは新人で、運転が下手くそなのではないか。どうせ死ぬなら、イチかバチかで俺が代わりに操縦をしてやろう。俺は飛行機についてそこらの素人よりは詳しいし、ゲーセンのフライトシミュレーターで高得点を取ったこともある。さあコクピットのドアを開けろ、俺を中に入れて、代わりに操縦桿を握らせろ…。
 という状況を仮に想定したとして、果たして周りの乗客(=サポーター)はそれを認めるだろうか。少なくとも自分にとって、バス囲みやアンケート(笑)により監督の解任を求めるが如きの行為は、上記の無謀な乗客の例とさほど変わらないように思える。

(3)「コアサポーターは特別」という間違った特権意識

 上記のような苦言を呈すると、「お前は普段ロクに応援にも来ていないくせに偉そうなことを言うな」とのお叱りを受けるかもしれない。確かに、自分は関東在住の上、時間と予算の関係であまり現地観戦に行くことができないでいる。スカパーを月額契約して毎試合視聴し、後援会や携帯サイトの会員にも登録はしているが、清水に落としているお金の額は微々たるものだろう。
 これに対し、年間チケットを購入したり毎年ユニを購入して清水に多くのお金を使っている方々や、毎試合ゴール裏で熱心に応援をしているサポーターの方々には、本当に頭が下がる思いだし、自分なんかよりもよっぽど選手の力になっていると思う。この点については、自分も潔く認めざるをえない。
 しかし、しかしである。それでもサポーターというのは、どこまでいっても「客」であり、ある意味で「素人の部外者」であるという事実には変わりないのではないか。先ほどの航空機の例でいえば、自分がエコノミークラスの客で、熱心なコアサポはファーストクラスの客、という程度の違いでしかない。ファーストクラスの客だからといって、パイロットの代わりに操縦桿を握っても良い…ということにはならないだろう。また、ファーストクラスだからといって、あまりにも横暴な振る舞いをしていれば、次回からはブラックリスト入りして、航空機のご利用をお断りされてしまうこともあるだろう。

(4)行為の正当化によって繰り返される悲劇

 そもそも自分はひねくれ者なので、「危機感を持たせるために云々…」という目的すら怪しいものだと思っている。だって、人がバス囲みのような暴挙に及ぶ時、そんな冷静な判断が働くだろうか。むしろ、試合に負けた怒りで満たされ、冷静な話し合いなど望めない状態なのではないか。そうすると、「チームに危機感を持たせるためにやった」かのごとき自己弁護は、実は自己の感情に任せた行為を正当化するために考えられた、後付けの理屈なんじゃないかとすら思えるのだ。
 上記の理屈がまかり通ると、「バス囲み=正しいこと⇒次も同じことをやってもよい」との認識から、こうした行為が繰り返される危険性がある。これまでさんざん述べてきたように、バス囲みそれ自体にはほとんどメリットがないにも関わらずだ。その結果、バス囲みの負の側面(リソースの無駄遣い、素人の経営介入による混乱)が増幅され、ひいてはチームとサポーターとの信頼関係が損なわれるほどの事態に発展しかねない。

(5)ガス抜きは他でやってくれ

 上記のようにデメリットばかりのバス囲みだが、ポジティブな効果が全くないこともない。その1つは、バスを囲まなければ収まりがつかないほどの怒りを溜め込んだサポーターに対し、ストレス発散の場を与えるというものだ。一度バスを囲んでスッキリすれば、当分の間バスを囲むことは我慢できるという訳だ。
 ただ、自分としては、悪いがそんなしょうもない目的のために、清水というチームの貴重なリソースをつぎ込んで欲しくはない。サッカーは勝負事なんだから負けることもあるし、こちらの調子が悪かったり相手が強かったりすれば、手も足も出ないことだってあるだろう。その場合は、どうかバスを囲む以外の方法で怒りのエネルギーを発散させて欲しい。飲みに行くとか、仕事するとか、そのへん走ってくるとか、ネットで憂さ晴らしするとかなんでも良いが、ストレス解消するなら他の方法がいくらでもあるだろう。

(6)選手や監督だって同じ人間

 同じ「ファミリー」の仲間である選手や監督に対して、ある程度の罵声等はしょうがないとして、それでも人として超えちゃいけない一線ってのがあるんじゃないだろうか。


3.総括

 以上のように、バス囲みその他のサポーターによる実力行使は、チーム状況を改善する効果がほとんど見込めないにもかかわらず、その弊害は非常に大きいので慎むべきだというのが自分の意見だ。幸い、清水のフロント陣は、一部のコアサポーターの暴走に対しては毅然とした態度で接しているため、上記の弊害が表立って現れているとはいえない。しかし、そんな清水だって、サポーターによる実力行使が常態化すれば、いつかはジェフ(あ、言っちゃったね…)のようなことにならないとも限らない。
 自分はしがない一サポであり、何の権限も実力も持っていない以上、いざ事が起こった時にそれを止めることはできないだろう。ただ、実力行使に及ぼうとする人々には、自分の行為がチームに与える影響というものをもう一度冷静に考えてもらいたいと思うし、後になってから自らの感情に任せた行為にについて、「チームに危機感を持たせるために仕方なくやりました(キリッ」のような卑怯(ひきょう)な言い逃れをして欲しくないとも思う。


バナー


↑ ↑ ↑ ↑ ↑
☆ランキング参加中です☆
宜しければクリックお願いしますm(_ _)m


posted by m_maru |15:23 | エスパルス雑感 | コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/shuttlenk/tb_ping/101
コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」