2014年3月4日火曜日

KA-10SH LIMITED VersionⅡ 改造記

改造に出していた私の唯一の手持ちのヘッドホンアンプ、KA-10SH LIMITED VersionⅡが
ようやく完成して戻ってきました。






手頃な価格・低ノイズ・比較的良好な音質・改造と音質向上の余地が大きい、
これらの理由から5年ほど前に流行った春日無線変圧器の真空管ヘッドホンアンプキット
KA-10SHの最新モデルです。

かつてのブームをリアルタイムで経験されている方から見たら「何を今更KA-10SH 」と思われるかもしれませんが、最新モデルは抵抗も良い物になり出力トランスも厚みのあるものに変更されていて、純正状態でも非常に素晴らしい音だと思います。
今更と言わず是非聞いて刮目していただきたい。
正確には、MkⅢとLIMITED VerⅡからが現在の仕様になっているとのことです。
そこに改造を加えると、それはもう筆舌に尽くしがたい化け方をしてくれます。



経緯

当初、私はこのKA-10SH LIMITED VersionⅡを春日無線さんの店頭で買いました。
買ったとは言っても、ハンダゴテも握ったことのないヘナチョコなので、
キット価格にプラス2万円ほどを加えて春日無線さんの方で組み立てていただいた
所謂「完成品」をお願いして手に入れた形です。
つまり部品も組み立てもド純正。
音質の傾向としては、良い意味で真空管らしからぬハッキリした音。
トランジスタアンプと言われて聞いても違和感がないだろうと某有名ブログの方もおっしゃっていましたが、まさにその通りで非常にバランスのとれた汎用性の高い音でした。
確かに情報量も駆動力も実に良好なものでした。
しかし、エージングも一通り完了して半年ほど使い込んでくると気になる部分も出てくるわけで、低音の描写力や高音の伸びや空気感など、高価なビンテージ球に差し替えてもどうにもならない部分が出てきました。
そこで兼ねてから気になっていた噂。「KA-10SHは改造で化ける」
ネット上で情報を集るうちにKA-10SHの改造を受けていただける実績ある方を発見し、
これは是非にとお願いすることにしました。




結果

化けました。
コストパフォーマンスとかいう比較概念なんか吹き飛んでしまうほどに
素晴らしいの一言につきます。




詳細

今回の記事の趣旨はこの部分です。
改造を依頼させていただいた方から教えていただいた事、ネットで仕入れた知識、店頭で聞いた知識など、実は受け売り情報のオンパレードですが便宜上あたかも自分の言葉のように書いています。
どうか悪しからず。
これから興味を持って入手される方にも、既に所有されていてまた手を加えようと考えている方にも、少しは有益な情報を提示することができたらこの記事は成功です。



● カップリングコンデンサーの変更
春日無線オリジナルの品 0.047μF 2個をJensen銅箔オイルコンデンサー 0.047μF 2個に変更。

効能
Jensenの銅箔オイルコンデンサーはしっとりしつつも凛とした音。
今回施工していただいた方から、Jensenの他にAuricapも別候補として提案して頂いていましたが、
詳細相談の上、私の好みからするとJensenが良いだろうとのことでお勧めいただきこちらを使用することにしました。
私の方でも調べた所、Dynamicapも高性能なコンデンサーとして定評があるようでしたが、色々調べていくとどうもDynamicapはややドンシャリでメリハリの強い傾向らしく、
Dynamicapを使うとなんでもかんでもDynamicapの音になってしまうため使用を避ける人もいる、という内容を散見しました。
結果的にJensenにして正解だったと思います。
純正のカップリングコンデンサーもシャキッとして良いものだとは思いますが、時にカサついた乾いて伸びない面があるようにも思います。
Jensenにすることで厚みがありつつ女性ボーカルや高音楽器の音も非常に上品でしっとり美しく感じるようになりました。凛とした音、というべきでしょうか。
情報量の向上にもつながっていると思います。
尚、カップリングコンデンサは容量が小さくなると線の細い音に、容量を増やすと太い音になる代わりに解像度が低下するという傾向が一般的にあるようです。
黄金色が鮮やかなコンデンサです。







● 電解コンデンサーの変更
純正は日本ケミコンSMGシリーズのもので、以下の構成でした。

  350V 100μF  3個
  200V 100μF  3個
  16V   100μF  2個

これを以下の構成に入れ替えました。
改造前内部画像に写っている黒い電解コンデンサに比べ軒並み容量が倍以上に増えており、
物理的なサイズもまた既存のものよりも倍近い大型なものになっています。
そのため、ラグ板への固定が安定するよう下方へ角度をつける形で取り付けていただいています。

  日本ケミコンKMRシリーズ 450V 330μF  3個
  ニチコン KMMシリーズ 200V 1000μF   1個
  (電源整流部に取付けてある200V 100μF  2個は純正そのまま)
  ニチコン MUZE KZシリーズ 50V 100μF  2個

効能
コンデンサ容量を倍以上に増加させたことで余裕のある鳴りっぷりになりました。
淀みなく、出し惜しみすることなく音が雪崩れ込んでくる。そんな感覚を覚えました。








● 整流部ダイオードの変更
抵抗に似た形状の純正のダイオード 4個をSic(炭化ケイ素)ショットキーバリアダイオード 1200V耐圧のもの4個に変更。

効能
ウルトラファーストリカバリダイオードよりも更にレスポンスの高速なダイオードにしたことで、これも音がズバッと流れこんでくるようになったと思います。
上記の電解コンデンサーの容量増加と合わせるとより効果的とのことで、
懐の深い鳴りと良好な瞬発力を両立した音になりました。




● 真空管ソケットの変更
純正のプラスチックっぽいソケットをテフロン製ソケットへ変更。

効能
元のソケットも悪くはありませんでしたが真空管の抜き差しが非常に硬く、不要な力を入れてしまい真空管を破損させる恐れがありました。
また、真空管を差し込んだ状態だとやや球にグラつきがありました。
交換後のテフロン製は球の足受け部分が真鍮削り出しに金メッキを施したもので非常に精密な作り。
硬すぎず緩すぎない使い心地で、尚且つ球がカッチリと揺らぐこと無くハマってくれます。
この保持性の高さのお陰で不要な振動を防ぐ事ができます。音もぶれなくなります。
今回はなんと筐体内部からシャーシをリーマー加工してサイズ調整した上で取り付けていただき、
土台のあった施工前よりもミニマルな洗練された外観になりました。
また、ソケットの変更に伴いラグ板の穴の調整も行ってあります。
ソケット周りは部品が非常に集中しているエリアでありここを取り替えるということはそのままレストアに近いレベルの作業になることを意味します。
この密集地帯を一度解体した上でさらに設置配線する作業は本当に大変だったろうと思います。

                 改造前のソケット部分


                 改造後のソケット部分





● ボリュームの変更
純正のLIMITED VersionⅡはアルプスRK27 100KΩ。これでも十分良いボリュームではありましたが、今回はボリュームもアップグレードしたいとお願いしたところ東京光音 2CP-2508-S A100K を見繕っていただきました。
シールド板付2連式ボリュームで、アルプスRK27と比較しても非常にガッシリとした大型のボリュームです。
筐体内部と干渉したためシールド板の先端を切削して短く加工。
軸もRK27より直径が大きかったため前面パネルをリーマー加工で調整していただいた上で取り付けてあります。

効能
ボリュームが音質に与える影響は周知の事実ですが、ギャングエラーが皆無なのは勿論のこと、ボリュームを絞っても音の鮮度が失われる感じが全くありません。
また、回転に伴う音量の変化も正確に感じます。
高価ではありましたが無色透明な非常に優秀なボリュームだと実感しました。
KA-10SHの改造というとやはりアルプス、ソフトンあたりの銘柄が良く出てくると思いますが、
東京光音のボリュームも是非話題のテーブルに上げていただきたいと思いました。








● 電源周りの配線材の変更
電解コンデンサー周りの配線材をOFC 0.7mm 金メッキフッ素線に変更しました。
電源周りの改善の一貫ということになりますが、こちらも上述の電解コンデンサー・Sic-SBD関連の効能に一役買っていると思います。
施工していただい方曰く、無色透明またはやや暖色の傾向とのこと。
内部配線を見ると、金色の筐体と相まって非常に美しいです。
線の引き回しもまるでプリント基板の線を連想させるような直線的な美しさで配線されており、実に見事でした。
完成後は隠れてしまう部分ですが、気持ち的にもこういった要素は大切な気がします。
線材はオヤイデさんなどでメーター600円ほどで入手出来ます。








●信号周りの配線材の変更
ボリュームから真空管増幅部にかけての音声信号に関わる部分の配線材をビンテージ配線材に変更しました。
1920〜30年代に製造されたDUDLOというメーカーのもの。
28AWGという非常に細いエナメルコーティング銅単線にコットン被覆がなされた物です。
私の方からはただ単に「(なんか音が良さそうだから)ビンテージ線材を使いたい」と獏とした大雑把なリクエストを出しただけだったのですが、
今回はなんと施工していただいた方にて数種類のビンテージ線材を取り寄せた上で、組立後のエージング状況や全体の音傾向を考慮しながら選定、更には配線前にコットン被覆をロウ漬けまでしていただいております。

 ○ DUDLOに関して、私なりに調べてみたこと
正式名称 Dudlo Manufacturing Company
自動車産業が台頭してきた1900年台初頭に創業したアメリカの電線メーカーのようです。
耐久性に優れた高品質エナメルコーディング線を開発したことで急成長を遂げ世界規模で大きなシェアを誇っていたらしいです。
フォードの自動車モデルTの誕生に合わせてイグニッションコイルを開発・提供し、フォードとの蜜月時期もあったとのこと。
全盛期はおよそ1923年頃。
その後の世界恐慌の影響によりグループ会社の再編や吸収合併等でゴタゴタがあり、 Dudloとしての営業は1930年に終了した模様。
Dudlo創業メンバーの手によるPhelps Dodge Magnet Wireに吸収された後、同じくDudloの創業メンバーによるRea Magnet Wireによって2005年にPhelps Dodge Magnet Wireの買収が決定した。
自信のない英語サイトを苦し紛れに解釈しただけなので、複雑な後半はちょっと間違っているかもしれませんが
おおよそそんな感じらしいです。
もしも現代まで生き残っていたら、ベルデンの様な存在になっていたのかもしれませんね?

効能
ビンテージ物の銅線は現代と製造方法が異なり精錬に時間をかけて作られていることから、現代の線材とは分子の並びが違っているようです。その恩恵で解像度に優れているという面もあるとのことでした。
今回は全体の音のバランスから、温かみ・深みと瞬発力を兼ね備えたものを選定していただいた形になります。








● 抵抗の変更
カップリングコンデンサー程ではないにしろ抵抗もやはり音質に与える影響度合いは大きいもの。
今回は基本的にVishay Z201で全て統一し、Z201が対応していないW数の抵抗に関してはDALE NS-2B及びNS-5、RN65Dという優先順位で抵抗を変更しました。
自分で言うのもなんですが非常に贅沢なラインナップだと思います。
発熱のある電源周りの抵抗は、しっかりと他のパーツと距離を取れるような形で取り付けてあります。

元の抵抗構成
酸金 4.7kΩ 3W  1個
酸金 1.2kΩ 3W  1個
酸金 10kΩ  2W  2個
酸金 430Ω 2W  1個
KAMAYAカーボン抵抗 30kΩ       1W  2個
KAMAYAカーボン抵抗  470kΩ 1/2W  4個
KAMAYAカーボン抵抗 22kΩ    1/2W  2個
KAMAYAカーボン抵抗  2kΩ     1/2W  4個
KOYA特殊電力形SPR  680Ω      1/2W  2個

変更後の抵抗構成
DALE NS-2B 4.7kΩ 1個 
DALE NS-2B 1.2kΩ 1個 
DALE NS-2B 10kΩ  2個
DALE NS-2B 430Ω  1個
DALE NS-5  30kΩ    2個
DALE RN65D 470kΩ 4個
Vishay Z201 22kΩ   2個
Vishay Z201 2kΩ   4個
Vishay Z201  680Ω  2個
効能
上記の構成は主に、電源周りはDALE、信号周りはVishayという形で分かれていると思います。
カップリングコンデンサの変更と相まって解像度は格段に良くなりました。
最高級泊抵抗の名高いVishay VARも試してみたくはあったのですが、
しかしVARは0.4Wのものしか無く、
また、中身のエレメントが剥き出しの構造であり故障率の不安があったため
今回は使用していません。
海外から取り寄せればもしかすると0.4W以上のものもあるのかもしれませんね。
しかしそれであっても十分すぎるほど豪華なラインナップだと思います。
殆どは秋葉原ラジドデパートにある海神無線さんで購入しました。
海神無線の店主曰くVARは開放的でオーディオ好みの音、Z201はVARよりも正確さを重視した音で音楽制作をされる方が好んで買う傾向があるとのことでした。
また、Z201は80〜100時間程度で初期エージングが完了した後、再び音離れの悪くなる谷間の期間が来るから根気よくエージングするようアドバイスを頂きました。
尚、これはネットで得た情報ですが、NS-2Bを信号周りに多用すると暗い音になる傾向があるそうです。

画像の抵抗類は、当初誤って全てZ201で購入してしまった時に撮影したものです。
実際の組合せとはやや異なりますが、ざっくりとしたイメージということで・・・











● ヘッドホンジャックの変更
純正のヘッドホンジャックはスイッチクラフト製の12B。
これを、バネ強度を調整した上で12Bゴールドに変更しています。
この部分の変更に関しても、施工していただいた方のほうでわざわざ他の候補品を取り寄せて比較検証した上で最終的にこちらのジャックを選定したという経緯がありました。
また、純正状態のジャックは食いつきが非常に硬く、プラグの抜き差しをする際にも
ヒヤヒヤするほどだったのですが、取り付けの際に適度な硬さに調整して頂いてあります。
これも、金色の筐体と相まって素晴らしい輝きです。







● RCAジャックの変更
WBT社製NexgenシリーズAgタイプへ変更

効能
もともとついていたRCAジャックは個体差のせいか、左右でRCAケーブルの刺さり具合が極端に違いました。
片方は緩く、動かすと音が途切れることがありました。
もう片方は何かが内部で引っかかっているかのうな異常な硬さで、抜き差しにかなりの握力がいるほどでした。
おそらく確実に歪んでいたのだと思います。
今回はより精度が高く音質的にも良い影響を与えてくれそうなものを物色しましたが、RCAジャックという製品で品質の高さを謳っている商品というのが実は巷にはほとんど存在しないという事が今回のパーツ探しで良くわかりました。
つまり、商品レビューに関してもネットで探すのはほぼ絶望的ということでもあります。
私が候補として発見できたのは、オヤイデ、フルテック、Via Blue、そしてこのWBTでした。
その中からとりわけ品質の良さそうなものとしてこちらの商品を選びました。
ダメ元でこのWBTジャックのレビューを検索してみたところ、カーオーディオ関連のブログでこれを使用した記事を2つほど発見しました。
音がシャキッとした。ざっとそんな感じのレビューだったと記憶しています。
こちらの品はRCAジャックとしては異様に高価でしたが、実際に取り替えてみてその接続の確実で滑らかなことにとても驚きました。
施工していただいた方も現物を見て、これは内部接点の構造が非常によく考えられた品だと評していました。
元々のRCAジャックよりも外径が大きかったため、こちらも背面パネルをリーマー加工しサイズ調整をして、回り止め対策を施した上で取り付けてあります。











● ボリュームノブの変更
これは完全に外観だけの問題ですが、筐体がシャンパンゴールドともいうべき色なので
これに似合う物を探すのに苦労しました。
最終的にはマルツパーツにてLinkmanのゴールドカラーのアルミ製ツマミを購入しました。
これは、ちょっとガッツポーズを決めたくなるほどマッチしたので非常に嬉しいところです。

http://www.marutsu.co.jp/shohin_76780/
Linkman  25X15JXS-7
アルミ製ツマミ 色 : ゴールド
シャフト径 Φ6.1mm
外形 Φ2.5mm  × 1.5mm








● 出力トランスの菊座ネジ排除
これを取り除くことによってシャーシに対してトランスカバーがしっかりと接点を持つことが出来、それによって確実にアースが取れるそうです。そのためノイズ減少が見込めます。リクエストはおろかそんな効果があることすら全く知りませんでしたが、こういった部分も提案されずとも施工して頂いておりました。
非常にありがたい事だと思います。




● 制振材の取り付け
KA-10SHは構造上、シャーシ内部の天井側にラグや配線やパーツが集中する構造になっており、底面部は逆に何もありません。
この内部底面全体にオトナシートを貼り付けていただきました。
KA-10SHはタカチから販売されているUC15シリーズという高級シャーシに対して更に厚みと剛性を持たせた特注品を使用しています。
剛性が高いのは音響機器にとっては良いことですが、反面一度響くとなかなか振動が止まらないという面もあるそうです。
オトナシートを内部に貼ることによって不要な振動を吸収してくれます。



● パイロットランプ配線の固定
パイロットランプの根元部分を一度折り返した上でタイラップで固定して頂いています。
これもノイズ対策の一貫です。こちらについてもリクエストすらしていなかったのに、ありがたいことに施工していただいておりました。
この他にも細かい所で様々な配線の工夫とノイズ対策を取っていただいています。
素の状態でもKA-10SHは静粛性に優れた真空管アンプですが、上述したようなこれらの施工の積み重ねによって、非常に背景の黒い、ちょっと真空管ヘッドホンアンプとは思えない位の静けさを手に入れました。




● ソビエト球 Voskhod  6N23P
今回の改造が完了してアンプを返送していただくにあたり、なんとご好意により
ソビエト球 Voskhod  6N23P まで頂戴しました。
こちらは暖かさと力強さのある球ということで薦めていただきましたが、実際に聴きこんでみると非常に素晴らしい球で、完成したアンプとの相性も流石というべきものでした。
解像度や音の分離、バランスといった基本的な部分は文句なく、その上で中低音域の説得力に何とも言えない説得力を持った音でした。
胸元までズシッと響いてくるほどにと重みのある音にもかかわらず速度や生命力があり、音色の再現も濃くて豊か。
ボーカルはしっかりと前面に出て、エレキギターのザラツイた質感は使用しているギターアンプの性格の違いまで分かりそうなほどリアル。ベースなどは弦の感触まではっきりと再現しとりわけエレキベースの直進性は見事。
こう書くとゴリゴリした音のように想像するかもしれませんがそうではなく、自然な暖かさのある音色で尚且つ吸い込まれるような空間の奥行きを感じさせるという、独特の空気感をもった球です。
音楽ジャンルは結構対応範囲が広く、ポップス、メタル/ヘヴィネス、エレクトロニカ、歌謡曲、オーケストラ、ソロ演奏など、独特という言葉は使いましたがしかしそれに反して幅広いジャンルを魅力的に鳴らしてくれます。
テレフンケン、シーメンス、ムラード、テスラなどが有名な一方でこの球は日本ではあまり名前が知られていないようです。
しかし海外ではVoskhodマニアのような人が存在するほど評価のある球らしく
6N23P、とりわけロケットマークが付いたこのVoskhodのものは指名買いする人がいるほどなのだとか。
私はテレフンケンCCa とシーメンスCCaを所持しており、球については半ば満足していたのですがなんの。それらに勝るとも劣らない魅力があります。
人によってはハイ落ちした音と評することもあるようですが、個人的には高音域もしっかり表現できているように思います。
確かにテレフンケンやAmperexの音と比較すると若干粗さはあるとは思いますが、
「粗さ」を「力強さ」に変換してしまう何かがあります。
実際に音を聞くと、この音にハマってしまう人の気持ちがとても良くわかります。
Voskhod というのは銘柄というよりも実際は工場の名前で、ロシアのVoskhod工場は真空管の他にも様々な工業製品を手広く製造しており品質は押並べて良好だったようです。
私が頂いた球もやはりロケットマーク。全体的にプリントはだいぶ薄くなってしまっていますが、星のマークとともにCCCPという文字もうっすら見えます。
尚、私が所収している6DJ8系の各種球の聴き比べについては追々また別の記事で書いていこうかと思っています。






詳細以上




音について

改造していただいた方のほうでも約10時間の初期エージングをしていただいたとはいえ、
帰ってきたアンプの音は、中身をほぼ入れ替えたばかりのアンプとは思えないほどぶったまげるものでした。
端的に表現すると、 濃く・深く・鋭く・エアリー という感じでしょうか。
とりわけ空間の奥行きが、音色の濃さと相まって非常に凄みのあるものになりました。
かといってマッタリした所は全くなく、深く重たい音が余裕の馬力で流れ込んできます。
低音域は描写力が確実に向上し、高音域は美しく柔らかさと温かみを持ちつつ伸び、中音域も以前のややあっさりした面影は消えてとても肉厚で充実したものです。
曲によってはそれこそ息が止まりそうなほどの深い深い空間が出てきて飲み込まれそうに鳴ります。
私の手持ちのヘッドホンは冷淡だとか気難しいとかつまらない優等生と揶揄されることの多いベイヤーダイナミック T1ですが、そのT1がこれだけハジけた音を出せることに驚いています。
私の家に届いてから現状、エージングとしては50時間を超えた段階なので、まだまだこれからという所。
今後のエージングの進捗とそれに伴う変化については、また追って記事を上げていこうと思います。



始まりから終わりまで

最初に依頼の打診をしたのは2013年の年末、もういくつ寝るとお正月という時期でした。
そこから内容の相談とパーツ決めのお話を進めていき、部品の手配の完了、アンプの発送をするまでにおよそ一ヶ月を要しました。
そこから作業を開始となり、段階ごとに音質のチェックと調整を並行しながら組み立てて頂いて最終的に完成し受け取るまでに一ヶ月。
詳細決めを含めた全工程合わせて二ヶ月でした。
その間も不明な点や確認のやりとりをするにあたり色々と勉強になることも多く、
振り返ればとても濃い二ヶ月でした。
あっという間だったという気がします。




実感したこと

 
(KA-10SHの配線画像は数あれど、純正組立の内部画は意外と貴重ではないでしょうか?)

今回の改造依頼は、実際に作業する側の立場から見ると厄介なものだったと思います。
上記画像の通り、春日無線の純正組み立てはかなりしっかりしたもので、配線の端はしっかりとからげてある上に不要な余り線はキッチリと切除してあり余計なものが一切ありません。
あれこれと欲張ったリクエストをお願いしてしまったため部分改造というよりほぼレストアに近いレベルに膨れ上がり、ほぼ全解体してから再組上げというものになりました。
そのため、このガッチリ組まれた純正状態を解くにもかなりの労力を要したらしいです。
にも関わらず、詳細の部分各所で述べたように非常に細かい部分まで考慮してお願いしていない部分までもしっかり手を入れてもらったという、本当に至れり尽くせりの素晴らしい仕事をしていただきました。
この場をお借りして改めて深くお礼を申し上げます。
今回の件で、アンプに限らず人の手によって作成された物の価値ですとか、仕事観というものにまで思いを馳せることになりました。
そいういう意味でもとても貴重な経験になりました。
このアンプは、同じKA-10SHとは言っても私のためだけの特別なワンオフ機。
今後も長く大切に使っていきたいと思います。

















2014年2月13日木曜日

活き活きとした音



さて、活き活きした音を楽しむためには何が一番大きいだろう。

機材
再生ソフト
音源

どれも大切だけど、ここ最近の私の一番の感想は

第一に電源環境
第二に音源
第三にプレイヤーソフト

世間では

第一にイヤホン・ヘッドホン・スピーカー等の音の出口

と言われてるけれど
正直なところ最近はそうでもないんじゃないかな、なんて感じています。
結局のところ音の出口は服装のようなもの。
もっと大元の土台になる部分を固めておかないと表層的な変化をなぞるだけの
ペラいものになってしまう気がします。
電源環境が安定している夜中の時間帯に聞くことができる説得力のある音。
体験したことのある人にはなんとなく同意いただけるんじゃないかと。


次いでプレイヤーソフトに関して。
私はPCオーディオな人間なのでアナログプレイヤーやCDプレイヤーの音には憧れるものの
まだその音を知らない。
知らない中で善処できる所として音質に定評あるソフトを使うというわけですが
Macでオーディオする人の中ではほぼ皆が使っていると思われるAudirvana+。
今更ですが、これがまたとても滑らかで深くいい音を出してくれます。
とりわけつい最近バージョンアップしたVer1.5.12になってからは、ますます滑らかで情報量も音色も豊かになって、これひょっとしたらCDプレイヤーの音に近くなったと言ってもいいんじゃないかと思わせてくれるくらいには所謂「高音質ソフト」から一皮むけた感じに思えました。
高級CDプレイヤーの音、聞いたこと無いですけど。
そこの所は想像力逞しくして物言ってます。
適当な事言います。ヴィトゲンシュタインにはなれませんので。

ちなみに唯一のヘッドホンアンプを改造に出してしまっている私は今
アップルが誇る革新的なイヤホン、天下のEar Pods(それと延長コード)で音楽を楽しんでいます。
iMacのイヤホンジャックに直差し。
オーディオファンの風上にも置けないこんなハイエンドな環境ですら相当な音を出します。
飢えと乾きは最高の調味料と曰ったキケロの言葉は実に身に沁みます。

最新のiTunesの音もかなり良い物になりましたが、それでもAudirvanaの音の方が
情報量や楽器の生々しさや堂々とした鳴り方など圧倒的に素晴らしい音です。
お金払って買った心情補正も性能のうちです。
プレイヤーソフト大事。






その次に音源ですが、やっぱり作品の録音品質って大きいですね。
下手な機材の買い替えでは覆せないほど大きなものがあります。

今回のお話で一番言いたかった事は、実はこれに関する事なんですが
とどのつまりは、
私こんなに音のいい作品を見つけてしまいましたという自慢話です。




 Karen Souza  /  Essentials

http://www.amazon.co.jp/Essentials-Karen-Souza/dp/B005MAHWN6

ジャズボーカルです。
巷ではジェニファー・ウォーンズ、ドナルド・フェイゲンなどの作品が優秀な録音として有名ですけど、この作品も相当のものだと思います。
有機的な音というよりは若干人工的な音ですが、
是非聞いていただきたい一枚です。
こりゃあすげぇ!と是非唸っていただきたい一枚です。
五反田のTSUTAYAでたまたま見つけました。

聞いてください。

以上。









ブログを始めました。

ブログを始めました。

ブログ名の由来は、私が大人げないからです。
いい年して分別がありませんし、興味のあることと無いことで態度が全く違う。
好きなことは周りの空気も読まずに突っ走る一方
興味のないことに対しては、「ちょっとひどいんじゃないの?」と思われるくらい
冷淡・学習しない・鈍感。
そんな自分はダメだなと思いつつも、最近は半ば仕方がないこれが自分の拭い切れない性質だと諦めながら、人に迷惑をかけないよう注意しつつ暮らしています。

そんなわけで、
始めようと思ったきっかけは、日々体験したこと、感じたことなどを防備するのがひとつの目的。
私は日頃興味のあること以外は驚くほど記憶力が欠如しているので
自分の生活を振り返るためにも必要だと感じました。
昔行った家族旅行のことさえきれいさっぱり記憶から抜け落ちている程なので
思い出の蓄積もままならない人間には必要なことかと。

別の目的としては
その蓄積や自分への客観的な観察からどんな展望が開けるだろうかという実験の意味もあります。

記事やレイアウトの編集方法など分からない事も多々あるので
簡単な事を欲張らないボリュームで書き進めながら学んでいこうと思います。

続けることも重要ですので
とにかく自分に負担の無い無理のないボリュームで進めていこうかと。

ただ、今後の願望としては
せっかく読みに来ていただいた方に何らかな有益性のある内容のものにはしていきたいな
というのがあります。

というのも
私が趣味の内容で色々な情報や知識を入手したくて検索をする時
最も有益な情報はやはり個人個人の体験に基づいて書かれたブログだったからです。
しかし反面、掘り下げの浅い、なんの役にも立たない興味も喚起されない内容のブログもまた多く、検索に引っかかってくるだけ邪魔な存在の記事が非常に多いのも確かです。

追々の理想ではありますが
読んで何かしらの情報源となったり思考のトリガーになるようなものを掲載できるようになればいいな、と思っています。
その代わりブログ名でもエクスキューズ済みですが、大人げなく思った通りのこともひっくるめてここでは丸めずに書いていこと思います。
丸めた言葉よりも正直な感想や考えのほうが読んでいて面白いと思うからです。
ああ、あんだか馬鹿な事言っているな、と一歩引いた目線で読んでいただけたら本望です。

現在私は主に
・ツイッター
・mixi日記
・自宅Macのメモ帳につける日記
と3つの手段で物を書いているわけですが
このへんの使い分けについても使っていくうちに明確になるのかなと楽観視しています。

よろしくお願いします。