March 5, 2014
プーチンはソ連を再構築しようとしているのか? 第4代ソ連最高指導者ニキータ・フルシチョフの孫娘ニーナ・フルシチョワ氏が、クリミアでの混乱の背景を説明し、その将来について予測する。
ロシアがクリミアへの支配力を強め、「21世紀のヨーロッパにおける最大の危機」とイギリスの外務大臣が叫
ぶ中、ナショナル ジオグラフィック誌の記者キャシー・ニューマン(Cathy Newman)が、元ソ連最高指導者ニ
キータ・フルシチョフ(Nikita Khrushchev)の孫娘であるニーナ・フルシチョワ(Nina Krushcheva)氏に話を
聞いた。
フルシチョワ氏は、ニューヨーク市にあるニュースクール大学で国際関係学の教授を務め、『The Lost
Khrushchev: Journey into the Gulag of the Russian M・・・
ロシアがクリミアへの支配力を強め、「21世紀のヨーロッパにおける最大の危機」とイギリスの外務大臣が叫
ぶ中、ナショナル ジオグラフィック誌の記者キャシー・ニューマン(Cathy Newman)が、元ソ連最高指導者ニ
キータ・フルシチョフ(Nikita Khrushchev)の孫娘であるニーナ・フルシチョワ(Nina Krushcheva)氏に話を
聞いた。
フルシチョワ氏は、ニューヨーク市にあるニュースクール大学で国際関係学の教授を務め、『The Lost
Khrushchev: Journey into the Gulag of the Russian Mind(失われたフルシチョフ、ロシア人の心のグラーグ
への旅)』の著者でもある。
◆数年前、私がクリミア半島南西部セヴァストポリにいたころ、あなたの祖父に対する民衆の憤りは明らかでし
た。1954年、フルシチョフ氏がクリミアをウクライナに譲渡した際、彼は何を考えていたのかとあるロシア人女
性に聞きました。すると彼女は、「フルシチョフは何も考えていなかった。頭の中にはゴキブリがいた」と答え
ました。
民衆の憤りは理解できますが、非常に不公平です。当時、それはあまり深い意味を持っていなかったと思いま
す。単に地形的な問題であり、この領土やあの領土をどこに置くかというだけの話でした。クリミアは、農業が
盛んで豊かな土壌を持つウクライナのモデルに適していると思われた。実際、フルシチョフはウクライナのため
に最善を尽くしたと思っていました。それは論理的思考で、決してゴキブリがいたわけではありません。
◆フルシチョフ氏はウクライナを愛した。
彼はウクライナ出身ではありませんでしたが、妻ニーナはウクライナ西部の出身でした。16歳の頃、彼はドネ
ツィク(ウクライナ東部)の鉱山で働いていました。同じ職場で働く鉱山労働者たちは驚くほどの仲間意識で結
ばれ、その中で彼のウクライナに対する親近感が育まれた。彼はまた、スターリン時代のホロドモール(1930年
代初頭、スターリンによって引き起こされたウクライナでの人工的な大飢饉。数百万人が亡くなっている)によ
って苦しめられたウクライナに報いようとしました。
◆プーチン大統領がロシアの戦車をクリミアへ移動させていることについて、フルシチョフ氏はどのように考え
ると思いますか?
おそらく祖父はがっかりするでしょう。もちろん、彼自身1956年にハンガリーへ戦車を送っています(ハンガ
リー動乱)。しかし、引退後の1968年に、チェコスロバキアへ戦車が向かうと知った時(プラハの春~チェコ事
件)、彼はとても狼狽して、「12年経っても、われわれはより良い方法を学んでいない」と嘆きました。あれか
ら60年が経ちましたが、やはりより良い方法を学んでいません。
◆つまり、彼はプーチンを支持しない?
ロシア国民を守ることについては、プーチン大統領に同意するでしょう。しかし、祖父がソビエト連邦の崩壊
を想像したことはなかったと思います。したがって、1991年のソ連崩壊の際、何もしなかったエリツィン元大統
領に対してもっと憤慨したことでしょう。エリツィンはクリミアを取り戻してくれると期待していたはずです。
◆プーチンは一体何を目論んでいるのでしょうか?
戦車を送ることで、プーチンが1956年のフルシチョフ作戦計画書からある1ページを取り出していると誤った
主張をする人がいます。プーチンは、自身が歴史的誤りを正していると信じています。ゴルバチョフがソビエト
連邦を崩壊させ、プーチンが必死になって大国を取り戻そうとしている。
◆この一連の事態には、過去の歴史が深く関わっています。かつてチェーホフ(作家)は、「ロシア人は過去を
愛し、現在を嫌い、将来を恐れる」と語ったそうですが?
ロシアは学ばない。後悔しないし、謝罪もしない。過去にとらわれて、前進することを知らない。われわれは
ぐるぐると同じ円の中を歩いている。そして過去だけを持ち、そこに現在はほとんどありません。
◆ロシア軍が実際にクリミアへ動く前、あなたはロイターに対し、ロシアが戦車をほのめかしたら、すぐに戦車
が続くだろうと語りました。次の動きを予測できますか?
あれは予測ではありません。シナリオだったのです。私は予測について慎重です。しかし、私の考えでは、プ
ーチンはウクライナを喉に詰まらせようとしています。彼は、自身が処理できる以上のものを飲み込もうとして
います。ルーブルは既に急落しました。もしロシア経済の破綻が始まったら、つまり、アメリカとヨーロッパが
彼らの脅迫に基づいて実際に行動を起こし、ビザの取得が困難になってロシア国民が自由に移動できなくなり、
銀行口座も脅かされるようになれば、プーチン政権はおしまいです。プーチンはソチで酔っぱらったと思いま
す。彼は、クリミアがソチの上に飾られたさくらんぼと考えたのでしょう。
◆悪化する経済、そしてアメリカやヨーロッパのどこかで入国を拒否される脅威ほど民衆の注意を引くものはあ
りません。
ルーブルの急落、ビザの取得ができないことや、飛行機に乗れない状況ほどひどいことはありません。過去25
年の間で、ロシア人は自国が比較的開かれた国であるという事実に慣れてしまった。その一方で、私はロシア人
が現状に満足していることを決して過小評価してはならないと言いたいです
Photograph by Dieter Steiner, Bettmann/Corbis