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日記

kahoの日記: STAP細胞の非実在について 4

日記 by kaho

なめてますね,これ.
何と言って,理研の対応です.

STAP論文についての手技解説の発表,だそうですが,これは無意味です.
なぜなら,STAP細胞など存在しないから.
間違った書き方をしたとか論文制作の作法のことではありません.「存在しない」のです.
私は証拠も提供しました.しかし,受け入れられなかったようです.

この論文は画像の捏造や文章のコピペ,結果の解釈の間違いなど多数の指摘がされています.
それらは大問題で,問題の大きさとしてはこれだけで論文の撤回があってしかるべきです.が,私はそこはあえてここでは語りません.他の場所で語られているからということもありますが,もっと本質的なこと,つまり「STAP細胞は存在しない」ことを問題にしたいからです.

どうしてSTAP細胞が存在しないといえるのか?
私はこの論文のインサイダーではありません.従って誰がどのように間違いを犯したかどのような意図を持っていたかといったことは分かりません.
しかし,彼らが公開しているデータから彼らの捏造,少なくとも完全な誤りは証明できます.
彼らはそうとは知らず,自分たちの捏造を世界に公開しているのです.

どのデータから?
それは,次世代シーケンサーの生データからです.
今回の論文(2報)のうち片方ではChIP-seqという実験を行っています.そして(本当は論文の公開時にするべきですが)しばらくした後でこの時のデータを誰にでも使えるように公開しました.実験の詳細は省きますが,この実験では対照実験として”input”と称した染色体配列そのものを読んでいます.
これは細胞のDNAの配列がほぼランダムに断片化されて記録されているので,丁寧に見ていくとその細胞がどのような染色体構造を持っているのかが分かります.

彼らの論文ではT細胞を酸で刺激することで細胞の初期化を行ったとしています.
初期化された細胞が,例えばMuse細胞のように,元からあった幹細胞を選別しただけでないことの証拠として,論文ではTCRのゲノム再構成を証拠として提出しています.TCRとはT細胞レセプターのことで,一つの細胞が一つの抗体だけをつくるように切り貼りされるので,T細胞とそれ以外では全く長さが異なってしまうため,ここを見れば一度T細胞になったものかどうかが分かるからです.
奇妙なことにこの再構成がSTAP幹細胞からつくられたマウスでも観察されるかは論文に記載されていません.これを出せ,という意見はかなり早くからありましたが,これまで出していませんでした.

私はこのまっとうな意見に対して「調べる手段はあるよ」と思っていました.それが先程述べた”input”です.
このデータは50塩基ほどの断片なので,再構成されたDNA配列全体は分かりません.しかし,切り取られた配列がなくなるため,「再構成が起きたかどうか」は分かります.
ゲノム再構成とは染色体のある部分が編集されて短くなるので,DNA配列をみるとその部分がなくなってしまいます.
もしSTAP細胞がT細胞からつくりだされたとすると,ES細胞,CD45+細胞,STAP細胞で比較するとES細胞に比べてCD45+細胞とSTAP細胞ではTCR領域のDNAが減っていることが期待されます.
この解析を始めた時,私は軽い気持ちで,実験生物学をやっている人が見つけられないものでも自分ならすぐに分かるという軽い優越感を得ようとしていました.
しかし,結果は驚くべきものでした.
まず,CD45+s細胞はTCRの再構成がわずかに見られます.しかしSTAP細胞,そして低pH環境下においたCD45+細胞では再構成は観察されなかったのです.
これが私の解析が悪いせいなのかと思い,全く異なるT細胞のデータを使って調べましたが,他のデータでは確実にTCR再構成を観察することが出来ました.つまり,STAP細胞はT細胞由来ではなかったのです.
この段階で私は,この論文におけるT細胞の選別が非常に悪く,幹細胞が混ざっていたのではないかと推測しました.しかしそれは甘かったのです.
低pHで処理するとT細胞はほとんどいなくなります.ではなぜSTAP幹細胞ではTCR再構成が起きていることを証拠として提出しているのでしょうか.これは,実験の手技が悪いとか,ミスであるとか,そういう話ではありません.

それもこの”input”の比較によって明らかになります.
その内容は更に長く専門的になるので,また日を改めて書こうかと思います.

  • プロトコル公開されました.
    論文と矛盾する点が多いので,苦し紛れに見えます.
    ゲノム再構成についてはこの部分でちゃんと述べています.

    (iii) We have established multiple STAP stem cell lines from STAP cells derived from CD45+ haematopoietic cells. Of eight clones examined, none contained the rearranged TCR allele, suggesting the possibility of negative cell-type-dependent bias (including maturation of the cell of origin) for STAP cells to give rise to STAP stem cells in the conversion process. This may be relevant to the fact that STAP cell conversion was less efficient when non-neonatal cells were used as somatic cells of origin in the current protocol.

    8つのサンプルのうちゲノム再構成がみられたものはなかった,だそうです.
    これは私が提出した資料を見た可能性があります.そうだとすればこの数日のうちに書いたものでしょう.
    だとすれば分化した細胞から作成されたという証拠はなくなるし,論文の図も誤っていることになります.数枚の図の訂正ではすまない「修正」が必要になるでしょうね.

    次の日記で書こうと思っていましたが元々CD45はここで述べられているようにT細胞のマーカーではなく血球系の広い細胞のマーカーです.論文中でT細胞だと書いた部分は全て間違っており,ゲノム再構成についての記述も全て削除しなければならないでしょう.
    最初はCD45+で細胞を選択した理由は単なる無知か,わざと(幹細胞を含む)雑多な細胞を混ぜるためだと思っていました.その中にSTAPとなりうる細胞が含まれているかもしれないからと.しかし恐らくそうではありません.他の研究者が理解しづらくするための煙幕だと,今は思っています.

    --
    kaho
    • by minet (45149) on 2014年03月05日 18時24分 (#2556777) 日記

      他所がやると失敗すると聞いて、錬金術時代の、弟子がこっそり金を混ぜて師匠の実験「成功」を演出していたエピソードを思い出していたのですが、
      そんなどころではなく、本当に金はないという事なのですね…

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