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離農者増、進む法人化 生産力回復が鍵 仙台市被災沿岸部

ハウスでは、トマトの不要な芽を取り除く芽かき作業が進む=2月25日、仙台市若林区荒井笹屋敷のクローバーズファーム

 東日本大震災で被害が出た仙台市沿岸の農村部で農家の法人化が進む。震災で離農した人からの耕作依頼が相次ぎ、農地集約の受け皿となっている。新規法人は収入増を見込み、稲作と園芸の複合経営を目指す。農業再生のモデルになりそうだ。(報道部・馬場崇)

<複合経営狙う>
 2月下旬、仙台市若林区の七郷地区。農事組合法人クローバーズファームのハウスでは、約3000株のトマトが青い実を付け始めた。
 「うちのトマトは糖度が高いんだ」。作業の手を止め、同法人専務理事の細谷滋紀さん(43)が語る。
 法人設立は2012年春。津波で農地が浸水し、ハウスなど農業施設と農機具を失った専業農家4人が集まった。水田約40ヘクタールでコメを作り、9棟のハウス計約50アールでトマトなどを栽培する。
 昨年春、除塩を終えた水田でコメの作付けを再開した。昨夏にはトマト栽培を始め、秋に初収穫を迎えた。目指すのは稲作と園芸の複合経営。細谷さんは「水稲の栽培期間は100日。ハウスは1年中栽培でき、安定収入を得られる」と語る。
 約1800ヘクタールの農地が津波で浸水した仙台市では、震災前は14だった農業生産法人数が21に増えた。背景には離農者の増加がある。
 同法人にも耕作依頼が相次ぐ。水田約40ヘクタールのうち、半分は震災後に集まった農地。「高齢化に加え、農機具を失って再開を諦める農家が多かった」と代表理事の菊地柳秀さん(70)が説明する。集約をさらに進め、50ヘクタールにまで広げる計画だ。

<1センチ100年必要>
 ただ、課題は多い。震災がれきの撤去時に養分を含んだ表土がはぎ取られた。「表土が1センチになるまで100年かかる」と菊地さん。生産力は十分に回復しておらず、昨年の作付けでも収穫量は落ち込んだ。
 政府は、新コメ政策で主食用米から飼料用米へ作付け転換を促す補助金を拡充するが、加算の条件は収穫量。菊地さんは「10アール当たり10俵(600キロ)以上収穫がないと最高額を受けられないが、今の生産力では7、8俵がやっと。最高額でなければ費用対効果は薄い」と言う。
 4月にはハウス建設や農機具整備のため借り入れた資金の返済が始まる。法人化することで投資の約8割は国の補助で賄ったが、年400万円の返済が10年間続く。
 菊地さんは言う。「経営の収支はとんとんの状態だが返済が始まれば赤字。何とか経営を軌道に乗せたいが簡単ではない」


2014年03月03日月曜日

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