私は「原発風俗嬢」(2)デリヘル経営者が目撃した「被災2年後の性」

「まさに生き残るために必死の日々でした」と振り返るのは、福島県内でデリヘルを経営する女性経営者。彼女が見た「原発事故からの復興」を振り返る。

 とにかく、震災からしばらくは、営業するにも女の子はいないし、停電に断水と何もできない状態が続きました。でもどういうわけか、営業用の携帯電話は、震災の直後から鳴りっぱなしでした。そのコール数は、原発の爆発事故が起きてから、さらに増えた気がしましたね。きっと人のぬくもりが欲しかったんじゃないですかね。ただ、イチイチ電話に出てお断りするのも大変だし、あまりに電話が鳴るのでしばらくは全部電源を切りましたね。

 福島県内で地域密着型のデリヘルを経営する佐藤理子さんは、現在45歳。元ソープ嬢から経営に従事して7年ほどになる。ふだんは客からの電話を受けて、女性を派遣するマネジャー業が中心。震災当日から再開までは、事務所で寝泊まりして対応に当たっていたという。

 ようやく、再開のメドがついたのは、4月になってからです。ウチはデリヘルですから、ホテルが確保できないとまったく仕事にならない。親切な常連さんが、『あそこのホテルはお湯が出るぞ!』って情報をくださって、その時はとにかく人手も足らないし、お客さんもひっきりなしで、キャスト(在籍女性)のコはオープンラストまでそのホテルでってことも多かったですね。

 当時は怖いこともありました。やっぱり地域によって、復旧までの時間にタイムラグがあって、自宅やマンションなどの出張でも、中には『階段が途中で壊れてて、上に行けないんですけど』ってコもいたり。さっきまで大丈夫だったのに、プレイ後に、部屋の壁が崩れてしまったりとか。キャストが下敷きにならなくてよかったと、身震いしましたね。正直、自分が現役を引退してたことにホッとしましたよ。

 やがて、復旧作業にメドが立つと、日を追うごとに目立つようになったのは、原発作業員たちからの電話だった。そのコール数もハンパではないという。

 今も困っているんですけど、原発作業員の宿舎に呼ぼうとするお客さんが、めちゃくちゃ多いんです。ウチに限らずほとんどの業者は、デリヘル嬢に限らず不特定の人間が、宿舎に出入りしようとすれば、すぐに警備員が飛んできて止められるのもわかってるし、例えば、キャストのコが何かのトラブルに巻き込まれても、こっちは何も手助けできない。警察に目をつけられるのも嫌で全部、断ってますけどね。外出してホテルに入ってくれるといいんですけど、面倒なのかホテル代をケチってるのか‥‥。まあ、プレイ代金を値切るのは、作業員も被災者も何でもない人もみんな一緒ですけどね(笑)。

 福島第一原発の周辺は、事故の発覚以来、風俗需要が一気に高まり、「風俗バブル」が1年ほど続いたという。

 でも、あれから2年たったので、お客さんの数はひと頃よりだいぶ落ち着いてますね。一時は、作業員のお客さんも命がけですから、とにかくガツガツしていて「本番強要」のようなトラブルも絶えませんでした。今はだいぶ少なくなりましたね。当時は、まさに戦場。働く女の子も作業員も皆、命がけでしたから‥‥。

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