ソ連が1968年にチェコスロバキアに侵攻した時、モスクワの株式市場は暴落しなかった。なぜか。それは当時のモスクワには株式市場がなかったからだ。対照的に3月3日はロシア軍の部隊がクリミアを実効支配したとの報道を受け、ロシア株が10%も急落した。
1968年と現在との違いを考えれば、新たな冷戦が始まるとの説は誤解を生む恐れがある。2014年のクリミアと1968年のチェコスロバキアとでは、政治・経済の背景が全く異なる。
ロシアはもう、はるかベルリンまで続く帝国など保持していない。縄張りを失ったという痛みのせいもあって、プーチン大統領はウクライナを、ずいぶん小さくなったロシアの勢力圏に引き留めようと躍起になっている。
■深くからむ今日のロシアと西側
これと同じくらい重要なのは、世界はもはや、二つの相いれない政治経済体制、すなわち資本主義の西側と共産主義の東側という敵対する陣営には分かれていないということだ。ソビエト体制が崩壊した後、ロシアはグローバルな、そして資本主義の体制に加わった。今では、ロシアと西側の金融、ビジネス、社会の制度は互いに深くからみ合っている。確かに、今日になって東と西の争いが新たに進行してはいるものの、これは冷戦時代とは全く異なる土俵で行われており、適用されるルールも異なっている。
西側がロシアと商取引をしていることは自分たちに有利に働くとロシア政府は思っているかもしれない。ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン氏は恐らく、西側の外交政策は資本家に牛耳られている――だから、これら西側資本家はロシアにおける経済的利益が脅かされる状況を容認しない――という旧ソ連時代の教えをまだ信じているのだろう。ロシアが2008年にグルジアに軍事介入した際に西側が強い対応を示さなかったことも、そうした印象を強めたのかもしれない。
ロシアに関する著作を先日発表したベン・ジュダー氏によれば、西側の財界人や元政治家がロシアとのビジネスに熱心であるために、プーチン氏は「欧州のエリートは、自分に立ち向かうことよりもカネを稼ぐことの方に関心があると確信している」のだという。
しかし、柔道好きなプーチン氏なら、急な体重移動が強みを弱みに変えてしまうことを承知しているはずだ。ロシアと西側諸国が相互依存の関係にある以上、ロシア政府がろうぜきを働けば、その経済的な代価は自分たちが払うことになりかねない。
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