インターネット上の仮想通貨ビットコインの私設取引所「Mt.Gox(マウント・ゴックス)」の運営会社は28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、経営破綻(はたん)した。負債が資産を上回る「債務超過」の状態のため、顧客から預かっていたコインや現金など計約500億円分の大半が返せなくなるおそれがある。

 申請したのは運営会社「MTGOX」(東京都渋谷区)で、負債総額は約65億円。取引システムに深刻な不具合があり、コインと現金の売買を仲介することができなくなったことから、事業をいったん閉じることにした。同社の口座で保管していた顧客のビットコイン約75万枚が何らかの理由によって失われ、返還を求められてもすぐに対応できないという。

 同社のマルク・カルプレス最高経営責任者(CEO)は同日都内で記者会見し、「(取引の)システムに弱いところがあってビットコインがなくなり、迷惑をかけて申し訳ない」と陳謝した。

 代理人の弁護士によると、同社では2月初め、送金が正常に行われないトラブルが相次いだ。原因は取引プログラムの不具合を悪用した外部からの不正アクセスとみられる。コインが不正に引き出された疑いもある、と主張している。

 同社の調査では、顧客から預かったコイン75万枚(時価約410億円相当)と、自社でもつコイン10万枚(約55億円相当)の大半がなくなったという。さらに顧客から預かった現金のうち最大約28億円が同社の銀行口座になく、消失しているという。

 利用者へのコインや現金の返還について、代理人の弁護士は「まったくわからない」としている。

 同社はコインや現金がなくなったのは、いずれもハッカーによる不正アクセスが原因とみており、「そうした痕跡もある」(弁護士)という。今後は外部の専門家と協議したうえで、警察へ被害届を出す方針という。

 同社は利用者からの問い合わせに応じるための専用窓口(03・4588・3921)を設置した。月曜日から金曜日の午前10時から午後5時まで対応する。(篠健一郎)

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 〈ビットコイン〉 インターネット上だけでやりとりされる仮想通貨。2009年ごろに登場した。国が発行・管理する円やドルなどの通貨と違って、特定の発行者や管理者はいない。世界各国にネット上の取引所が20以上あり、円やドルなどの現金で買うことができる。最近の交換レートは1コイン=約550ドル。世界で約1250万枚(時価約7千億円相当)出回っている。日本でコインをもっている人はまだ少ないが、欧米を中心に世界の約3300店で使える。

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 〈Mt.Gox(マウント・ゴックス)〉 ビットコインの売買を仲介する私設の取引所。現在20代後半の日本在住フランス人マルク・カルプレス氏が2011年、米国人起業家から買い取った。コイン専用の口座を設け、取引所を通じて買った人のコインを管理していた。約110万口座(約55万人)が登録されていた。顧客の大半は外国人で、取引量は一時、世界全体の7割を超える最大規模だった。