さて、今回は、声を語る上で欠かせない用語である「倍音」というものについて説明していきたいと思います。
最初に注意書きをしておくと…
ボイトレでこれらの言葉が語られる場合、若干オカルトが入ることがある
ということには注意しておいてください。
要するに、これから書くことには疑似科学が混ざっているかもしれません(笑)。
いや、疑似科学にならないようにできる限りの注意はするのですが、発声法を学びつつ解剖学を学びつつ物理学を学びつつ音響心理学を学び…なんてことはなかなかできないのです。
「学問」としてではなく、「豆知識」と「ハウツー」として読んでいただきたいです。
○倍音とは
ある音が鳴っているときに、人の耳には「一つの音の高さ」が聞こえます。
ピアノの鍵盤のドの音を打鍵すればドの音が鳴りますし、ドの音程になるように発声すればドの音が聞こえます。
しかし、この時に鳴っている音を分析すると、鳴らしている「ドの音」以外の音が同時になっているのです。
すごく簡単に説明すると、鳴らしている音よりずっと高い音、鳴らしている音の2倍・3倍・4倍…の周波数を持ったすごく高い音が、複雑に混ざり合いながら同時に鳴っているのです。
詳しくはこちら↓
・倍音‐Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%8D%E9%9F%B3
このような現象が起きているとき、
・最も強く鳴っている、元になる音→基音
・かすかに鳴っている、基音以外の音→倍音
と言います。
基本的に、どんな音であれ、必ず倍音を伴っています。
人の耳にはあんまり感じられないので実感しにくいですが、「基音だけ鳴らす」ってのはほぼ不可能です。
○倍音が音の印象(音色)を決定する
では、その倍音が「良い声」にどう関わっているかというと…
倍音は、声の印象(音色)を決定するのに非常に重要な要素なんです。
というか、「どんな倍音が含まれているかによって音色が決まる」と言ってしまってもいいかも。
たとえて言うなら、同じカレールー(基音)で作ったカレーでも、足した具材やスパイス(倍音)の種類や数や量によって味が変わってくる感じ。
余計わかりにくい…か?
倍音の少ない音の代表例は…例えば音叉やチューナーのような音取りに使われるもの(倍音が多かったら音が取りにくい)や、フルートやリコーダーのようなエアリードの楽器は倍音が少なめだそうです。
あとは、時報の「プッ…プッ…プッ…」って音なんかをイメージしてもらえれば。
倍音の多い楽器としては、代表例はシンバルですかね。
シンバルについては、倍音が強すぎて、もはや基音が何なのかわからなくなることがありますね。
あとは、サックスはリコーダーより音が「明るくはっきりとした」感じに聞こえますね。
これは、サックスがリコーダーより倍音を多く鳴らす楽器だからです。
倍音が少ないと、「丸く、輪郭のぼけたような、暗い、こもったような音」になると言われています。
逆に倍音が多いと、「鋭く、輪郭のはっきりした、明るい、よく通る音」になると言われています。
同じ高さの「ドの音」を同じ音量で鳴らしても、ピアノと音叉とヴァイオリンとエレキギターとあなたの声と他人の声と…が「ぜんぜん違う音」に聞こえるのは、含まれている倍音が違うからです。
倍音の「多い/少ない」もその原因ですが、他にも「特にどのような高さの倍音が強くなっているか」にもよりますね。
例えば、非常に高い倍音だけが強く鳴っている音と、全域で豊かに倍音が鳴っている音を比べたら、前者をちょっと不快に感じたりもします。
○「倍音」をしっかり鳴らして、良い声になる!
つまり、この「倍音」というものをコントロールできれば、声の「音色」をコントロールできることになりますね。
一般的に、人は、倍音の多く含まれている声を好むとされています。
まあ、時と場合によりますが、普通に考えて「ぼけた、暗い、こもった声」より「はっきりした、明るい、通る声」の方が気持ちいいですよね。
あと、ものすごく高い倍音(高周波)が適度に含まれている声を聞くと、人間は快感を感じる…らしい。
(念のためにもう一度注意しておくと、時と場合によりますが。)
なので、豊かな倍音が出せるようなボイストレーニングを紹介していきたいと思います。
倍音の量を増やすには、体内での声の「共鳴」を増やすことが重要である、と言われています。
体内で声の共鳴が起こるとされている主な場所は、「胸」「喉」「鼻腔」の3箇所です。
・胸
以前から「豊かなチェストボイス」を何度か紹介していますが、胸で共鳴を起こすことで、「低めの倍音」を強く鳴らすことができます。
・ボイトレで春までに「モテる声」になって、4月からの新生活の始まりをいい感じに飾りたい件‐烏は歌う
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/20090323/1237812952
・喉、口(咽喉、口腔)
最も共鳴がイメージしやすい部位で、ここをしっかり共鳴させることで「中〜高めの倍音」を強化することができます。
安定した共鳴を得るには、口を正しく開けた上で、しっかり喉を上下に開いて咽喉腔に共鳴させることが必要です。
・いい声が出せる「口の開け方」‐烏は歌う
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/20090401/1238592800
・「喉を開く」について、再度まとめ‐烏は歌う
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/20090818/1250526924
・鼻腔
鼻腔は「高めの倍音」を響かせるのに適していると言われています。
「高音発声」や「通る声を出す」ためには欠かせない共鳴です。
・典型的なダメ声、「鼻声」とは?‐烏は歌う
http://d.hatena.ne.jp/wander1985/20090329/1238322492
○バランスの取れた倍音構成=豊かな声
で、この3つの共鳴腔の「バランスを保ちながら」良く響かせることが重要なんです。
バランスが崩れた状態では、倍音をいくら強く鳴らしても、むしろ不快な声になってしまいます。
例えば、
・鼻空共鳴と咽喉腔共鳴は強いが、胸部共鳴が弱い
→高めの倍音ばかりが強調されてしまい、「硬すぎてうるさい声」「キンキン声」に。
・咽喉共鳴と胸部共鳴は強いが、鼻腔共鳴が弱い
→高い倍音が鳴らないので、「詰まったような声」に。
というような感じになってしまいます。
なので、3つの共鳴腔のバランスがとれているか、確認しながら練習していきましょう。
なかなか「バランスのとれている状態」を自覚するのは難しいのですが、まずはそれぞれの共鳴腔にしっかり響かせられるように練習した上で、色々な声のバランスを試しながら、「あなたにとってベスト」な声を探っていきましょう。
主にボイストレーニングに関して書いています。中の人はいわゆる「プロ」ではなくただの趣味人なので注意。「歌」だけじゃなく、「声」全般が良くなるボイトレを紹介していきたいです。過去記事は、PCの場合ページ最上部の「記事一覧」からが便利です。