【ベルリン】ドイツはつい2週間前、外交上の栄光に浴していた。ウクライナの暴力の連鎖を断ち切り、親ロシア政権の崩壊のきっかけとなったヤヌコビッチ前大統領と野党指導者との「停戦」合意を主導したからだ。
しかし、つかの間の栄光だった。数日もしないうちにロシア軍がウクライナのクリミア半島を支配下に置いた。はらはらするような展開の中、ドイツの穏健な外交政策の限界が試され、ドイツとロシアとの緊密な関係に対する疑問が浮上することは確実だ。
ロシア軍、クリミア半島を掌握
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メルケル独首相はウクライナ危機の解決を目指す外交努力で中心的な役割を果たしてきたが、ロシアに対する発言は他の欧米諸国首脳に比べ際立って穏やかだ。
同首相は2日に行ったプーチン露大統領との電話会談で、ロシア軍のクリミア半島占領は受け入れ難いものであり、国際法に違反すると非難した。しかし制裁を警告する代わりに、欧州安保協力機構(OSCE)を含む「連絡グループ」の枠内でウクライナとロシアが政治対話を開始するよう訴えた。
シュタインマイヤー独外相は2週間前、フランス、ポーランドの外相とともにキエフに飛び、ヤヌコビッチ氏と野党指導者による挙国一致内閣の発足に向けての仲介役を務めた。ドイツはそれ以後、ロシアとの関係を悪化させないよう細心の注意を払ってきた。6月にロシア・ソチで開催される主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)の準備作業への参加取りやめを発表したのも、当事国の中で最後の方だった。
欧州の外交筋によると、ロシアを除く7カ国(G7)が2日発表したロシア非難の声明は、ドイツが難色を示したために発表が数時間ずれ込んだという。ロシアをG8から追放するとのケリー米国務長官の提案について、シュタインマイヤー外相は「私は、G8は西側諸国が今もロシアと直接話し合えるただ一つの場であると主張する人々と同意見である」と述べた。
ドイツのエコノミストや業界団体は、ウクライナでの対立が拡大すれば、欧州のエネルギー供給を危機にさらす恐れがあると警告しており、それがドイツがロシアとの対立を望まない理由の1つとみられている。ドイツはロシアの貿易相手国として第3位を占め、2013年のドイツ企業によるロシアに対する直接投資は約220億ドル(2兆2400億円)に達している。
ガブリエル独経済相は、予定されていた6、7両日のモスクワ訪問を実施する意向だ。独政府当局者によると、同相は滞在中にプーチン大統領との会談を求めるという。
ドイツの天然ガス・原油輸入のうちロシア産が占める比率は、全体の3分の1超。ドイツは原発全廃に向かっており、ロシアへのエネルギー依存度は高まるとみられている。ドイツの政策当局者は以前からエネルギー供給源の多様化について議論しているが、主としてコスト要因からほとんど進展はみられない。連邦議会のフィリップ・ミスフェルダー議員は、「ウクライナ問題でロシアに制裁を課せば、ドイツの雇用を危うくする恐れがある」と懸念する。
メルケル氏はオバマ米大統領と違い、ロシアに対し強硬姿勢をとるよう求める国内的な圧力を受けていない。ドイツ国民は軍事行動を懸念するうえ米国に疑念を抱いており、それを反映して、政界の右派も左派も対話と外交の必要性を強調するようになっている。米調査会社ピュー・リサーチ・センターの昨年の調査によると、米国に好意を持っていない人の割合はドイツ、ロシアの両国ともに40%で、ポーランドの24%を大きく上回った。
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