わたしには10年以上の付き合いになる女友達が何人もいて、いわゆる中高生時代の仲良しグループとの付き合いが今も続いている。
誰かが結婚するとなれば、披露宴のスピーチから受付、二次会幹事まで全員で分担してきたし、卒業後は互いの誕生日にかこつけて集まる関係で、既婚3名、婚約中1人、独身3名といった顔ぶれ。
職業は主婦に事務職OL、契約社員、フリーター、芸術系フリーランス+私(独身、一応総合職勤務)といったところ。
学生時代を通じてほぼ一緒にいた友人たちなので、さまざまな局面で人生を共にしてきたと言えると思う。
でも残念ながら、このところ、ああ違うな、とか話が合わないな、というよりも分からないな、と思うことが増えてきた。
話題の中心が「夫のグチ、家庭生活、給与面での不満、いかにして仕事をやめるか」などになってきていて、どうもそれが理解できなかったり、話を聞き続けることがしんどく感じるようになってきてしまったからだ。
以前は仕事のグチや、恋愛相談等、将来どうしよう、などといった話がメインだったから、ライフステージの変遷に合わせて、話題も正しく遷移しているのだと思う。
時の流れを感じる。
私はもちろん夫もいないし、家事も1人分しかしていないから(ついでに言うと、仕事を辞める気もまったくない)、生活を共にする相手にままならない部分があり、それについて話をしたいという気持ちが理解できないのだろうなぁ、と思う。
私の主な関心ごとは、仕事であり趣味やレジャー、今後の人生設計といったことだから、被らなくなってしまったのだと思う。
愚痴を言うな、とも思わない。
やはり女は自分の気持ちやら普段感じていることを聞いてもらいたいものだし、学生時代からの親友となれば、身の回りのことを吐き出して、共感してもらって、報告して、というプロセスを10年以上繰り返してきたのだがら、空気を吐くのと同じ感覚で愚痴を言っているのだと思う。
でも。
ただの感情論だけで仕事辞めたいとか、働きたくないとか、こんな給料しかもらえないのに家事と両立させてて嫌だとか、旦那の稼ぎも少ないし、とか、その話題だけだとホントーーーーーにきつい。
別に意見を求められていないのは重々承知しているので、そもそも、昇給率がかなり低いと分かっていて事務職を選んだのはキミだよね、とか、その旦那さんと結婚したのもキミだよね、とか、
仕事辞めてもいいと思うけど、家計から収入20万円前後が減ってしまう場合、どんなことが想定されるか分かってる?
などということはもちろん発言しない。
ただ愚痴りたいだけなのは分かるけれど、正直聞くに堪えないなーと思う部分も出てきている。
いつもずっと、進路が違っても、仕事上の立場が違っても、友達として大切に思っていたから、その子がどんな状況で、どうなっているか気になっていたし、「違う」ことが当たり前で、その上で共感して、心配したり励ましたりしていた。
結婚、出産など、違うライフステージに上がっていく友達の経験談を身近で聞ける事に、とてもわくわくしていた。
でもなんだかそれが、とても難しくなってきている。
私は別に高尚な人間ではないのだけど、関心を持って一緒に話せるトピックスが、美容や節約術といった限られたものになってきてしまっていて、それがなんだかとてもさみしく感じる。
別に、仕事の話とか、世界情勢の話がしたい訳ではないけれど(強く興味があるわけではないし)、みなの関心が社会ではなく、家の中のことに変わってしまったんだな、と。
あるとき、私は友人の1人に、「生活格差が見えてきた気がする。反感を買ってもおかしくないから、気をつけた方がいいよ」と言われたことがある。
事務職で未婚の友人や、旦那の稼ぎが少ない!と言っている友人たちからしたら、あなたの生活レベルの方が高い、それがはっきり見えてきた、と。あなたの方が良い暮らしをしている、と。
「住んでいる家のグレードも、たまに海外旅行に行くことも、みんなはもうそんなことはできないんだよ」
それが悪いとか、だから友情が変わるということはないけれど、気をつけた方がいいよ。ひけらかす様なことは言わないから、大丈夫だと思うけれど、と。
たしかに私は、女性としては収入が多いし、仕事も続けやすい環境にある。
しかし、二馬力で働いている世帯より多くはないだろうし、使うべきところに使い、好きなものにお金をつかえるよう努力して、さらに前提として、老後まで考えて資金計画をたて、貯蓄をしているに過ぎない。
予定していた予算ラインを超えてしまうと、お金がないな、と思ったりする。ごく普通だと思う。
弁当も作って食費も削り、美容費も服飾費もほとんどかけない。たまに切り詰めるの域に達していることもある。
自慢するレベルではないが、ごく普通の節約は当然している。
みんなが独身で、実家に居た頃のほうが、よっぽど生活レベルが高かっただろう。
ただ私は、学生の頃から今のような生活(1人で生きていくに足りる生活)をするためにはどうしたらいいのか考えていたし、ただそのために行動した。
就職してからは、望む生活やを送るためにはどうしたら良いのか、1人で生きていくことになる可能性も十分あると思ったから、老後の生活設計も考えて、困らないようにするにはどうしたらいいか、どうバランスを取ればいいのかと考えていた。
みんなだって、結婚式や将来生まれる子供、住宅取得にかかる費用など、必要なもののためにお金をため、生活を営むためにお金を支出し、家族の楽しみのためにお金をつかっているだろう。いったい何が違うのだろうか。
ただ、思い描いた先に来たというだけの話なのだ。
とてもラッキーなことが重なって、いまの状況にいるとは思うけれど。でも。
みんなは違ったのかな。
同じように仕事を選び、将来を考えて生活を営んでいるはずなんだけどな。
こんなはずじゃなかったと思ってるんだろうか。
あなたくらい収入があれば、いくらでも色々できるよね。
なんでも選べるよね。
言外のニュアンスとしても、口に出されるときもたまにあったけれど、なんだかさみしい気持ちになる。
大切な誰かに愛情を注ぎ、助け合って生きていけることが一番幸せなことだと私は思うんだけどな。
大好きな友達が幸せであって欲しいな、と思うし、いつか私も同じように思うかもしれないから、それが違うとか、おかしいとも思わないけれど。
いま私はもう、あの中で「違う」存在になってしまったんだろうな、と感じている。
- 作者: 酒井順子
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