終戦直後に朝鮮半島から引き揚げた体験をもとにした自伝的小説「竹林はるか遠く」の著者で、米国在住のヨーコ・カワシマ・ワトキンズさん(80)が18日、下関市の東亜大で講演した。「差別のつらさ、家族愛や平和の大切さを感じてほしい」と訴えた。

 青森県に生まれ、生後まもなく朝鮮北部の羅南に移住。母や姉と朝鮮半島を縦断して日本へ引き揚げた。その経験を1986年に米国で出版し、教科書の副読本にも採用された。昨年7月に出た日本語版に、東亜大の崔吉城教授が協力した縁で下関を訪れた。

 作中には日本人女性が韓国人から暴行される場面があり、米国の韓国人社会や韓国国内からバッシングを受けた。カワシマさんは「この本は個人や民族を傷つけるためでなく、戦争に巻き込まれた悲しみや苦しさを伝え、平和を願うためのもの。兄を命がけで救う朝鮮人も紹介している」と訴えた。(大隈崇)

この記事に関するニュース
  • レコメンドシステムによる自動選択