「行こう! 今から!」
小さな指で裏山の向こうをさす思いつき。
その夏、ささやかな冒険の終わりに辿り着いた街で。
みんなと見上げた夜の空に、とてもキレイな二つの月を見た。
「なんかチーム名欲しいな」
「ヒーローみたいなヤツがいい!」
「探検戦隊・カエレンジャー!!」
「ただの迷子じゃねーか!!」
それは、まだ彼らが小さかった頃のお話。
周りの大人に黙って、自分たちだけで飛び出した。
遠くの知らない街へ行くだけの、他愛もないものだけど。
子供だった彼らにとって、それは何もかもが知らないことばかりの、かけがえのない大冒険だった。
―――冒険は終わる。
それぞれの理由で離ればなれになる幼馴染みたち。
楽しかった頃の記憶を思い返すこともなくなった、数年後の夏のある日。
管野孝(かんの こう)は、再び二つの月を見る。
自分以外には誰にも見えない、幻のような月。
その原因を探るため、再び足を踏み入れた想い出の街で、孝は幼馴染みたちと再会する。
彼女たちも「二つの月」を目撃し、それぞれの場所から集まってきたのだが、
やっぱり流れた時間の分だけ、距離は遠くなっていた。
そして月の謎を追いかけて辿り着いた奇妙な樹の下で、
彼らは、自分の願いを叶えてくれる力を持った魔法のような道具を手に入れる―――
二つの月の微笑む街角には、口から口へ囁かれる都市伝説の数々がある。
不思議な樹、空に咲く二つの月、道具、夜道を横切る3メートルのウサギ、
アクエンアテン王のチェス盤、謎の美少女剣士―――
「道具」のもたらす「魔法の力」を試しはじめた孝たちと、
街で起こる奇妙な出来事が幾重にも交差する時。
孝の道具「グレイスワンダー」が何者かに盗まれてしまう。
使い方を誤れば、大きな災いにもなる「道具」。
責任を感じた孝は「グレイスワンダー」を取り戻すことを誓う。
かつてのように集まった幼馴染みたちと、
真新しい地図を広げて。
あの日終わった冒険の続きをはじめる――――
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