第60話 戦争の時間
■第60話 戦争の時間
今回のクエストはレベルⅢ、荷馬車の護衛だ。
目的地である竜人大陸の王都まで、寄り道をしなければ10日ほどで辿り着く。
しかし今回は中間地点(5日後)で、寄る場所がある。
その場所は鉱山都市ベスタだ。
鉱山都市ベスタは山岳側にあり、途中で魔物が多く出る森を抜けなければならない。
ベスタまで4日ほどかかる。
そこに荷物を降ろし、新たな荷物を積む。ここで荷下ろし&積み込み、休憩を兼ねて3日ほど滞在する予定らしい。
鉱山都市を出て王都を再度目指す道程。
こちらも4日ほどかかる。
つまり中間地点まで5日+鉱山都市ベスタまで4日+休憩3日+鉱山都市ベスタを出発して竜人王国まで4日――合計16日。
王都に着けば仕事完了。
約15日で金貨2枚(約20万円)のクエストだ。
拘束時間は長く、馬車や食料、休日の宿代込みの値段だが、魔物と戦わない日や休日まで含めれば割の良い仕事とも言える。
留守の間の家はメイヤに任せた。
『おまかせ下さいリュート様! リュート様の1番弟子であるこのメイヤ・ドラグーンが完璧にお家を守ってみせますわ!』と意気込んでいたが、頼もしいと思う前に不安が募るのはどうしてだろう……。
また出発前にスノーとクリスは、ご近所へ手土産を持って挨拶回りをしていた。
留守中の家を気遣ってもらうためだ。
可愛らしい年下の2人が手土産持参で挨拶をしに来て嫌がる人物はいない。
まったく自分には過ぎた嫁達だ。
街を出発して1日目。
竜人王国を目指す街道は道が整備されているのと、人通りが多いため危険な魔物は基本的に一掃されてしまう。
あくまでオレ達を雇ったのは鉱山都市ベスタへ向かう途中の森を抜けるためだ。
森を抜けるため魔物との遭遇率が高くなる。
だから護衛者を雇ったのだ。
雇い主の馬車5台、シミル達3人が乗る馬車が一番前。次に雇い主の馬車、最後にオレ達の馬車が続く。
計7台だ。
予想通り、最初の5日間進む街道は人通りも多く平和そのものだった。
ただ問題があるとすれば……
「旅の間はウォッシュトイレが使えないんだよな」
オレはシアが御者台を務める幌馬車で荷物と一緒に揺られながら、溜息をつく。
まだ出発して1時間も経っていないが、ウォッシュトイレが無いことを考えると自然と溜息をついてしまう。
スノーも同様で2人一緒に溜息をつく。
「あの快適さを知ったら、二度と戻れないよ」
「早く家に帰ってウォッシュトイレを使いたいよな」
反対にクリスは渋い顔で首を振っていた。
『あんな魔王兵器が無くても困りません!』
どうもクリスはウォッシュトイレを敵視しているようだ。
今度その理由を問い詰めてみるか。
しかしまさか、持ち運び用の簡易ウォッシュトイレを作って馬車へ積み込む訳にはいかない。
馬車には食料、武器、弾薬、防具一式、着替え、毛布、鞍、手綱、用心のため積み込んだ魔術液体金属の小樽×2など――旅に必要な品物が所狭しと置かれている。水は魔術で生み出せるため持って来ていない。
オレ達が座るスペースも考えると、簡易ウォッシュトイレを積み込む場所などない。
御者台に座るシアが、簡易ウォッシュトイレの存在を知ると、ぶつぶつ呟き始める。
もちろんシアもウォッシュトイレ体験済みで、身も心も取り込み済みだ。
「あの方に頼めばウォッシュトイレを旅にも? いやしかし……にウォッシュトイレを運ばせるなんて……」
その後ろ姿は真剣そのもので、声をかけるのは躊躇われる。
しかたない……ウォッシュトイレのことは諦めるとして、折角の暇な時間を有効に使おう。
オレは魔術液体金属が入った小樽の1つを取り出し、足の間に挟むように抱える。
「リュートくん、何するの?」
「んー? 折角暇だから、ちょっと試作品でも作ろうと思って」
防具&小物、スノー&シア用のAK47がほぼ作り終わった頃、他装備品作りに手を出していた。
その装備品とは――手榴弾だ。
文字通り『手で投げる榴弾』であり、『手投げ弾』とも呼ばれる。
榴弾とはグレネードのことで、命中すると破片と爆風を撒き散らす小型の爆弾だ。
グレネードの語源は、スペイン語の『グラナダ』――『石榴の実』から来ている。
そのため英語だとハンドグレネード(Hand grenade)になる。
手榴弾は13世紀頃に確認され、17世紀には『擲弾兵』と呼ばれる中隊も存在していた。
初期の手榴弾は陶器製の酒瓶や鋳造製の青銅や鉄の球体に黒色火薬を詰め導火線をつけた物だ。
そしてイギリスでは1917年から手榴弾の研究が開始。
1921年には手榴弾の厳しい定義を完成させた。
以下がその定義である。
1:どんな角度で弾着しても起爆すること。
2:余計な作業、調整なく手榴弾・小銃擲弾に使えること。
3:着衣に引っかかる外部突起のないこと。
4:防水であること。
5:投擲手が間違って落としても安全なこと。
6:半径10メートルの殺傷半径をもつこと。
7:小銃擲弾として小銃に損傷を与えず、最良の射程距離であること。
8:性能が低下せず長期間の貯蔵が可能なこと。
以後、多くの手榴弾が各国によって作り出されてきた。
そして手榴弾は進化し攻撃用『爆裂手榴弾』と防御用『破片手榴弾』の2種類に別れ、使い分けられるようになった。
爆裂手榴弾は『爆発した時の衝撃波』によってダメージを与える手榴弾だ。
炸薬を包んでいる外殻は、爆薬の威力を高めるため比較的薄い。
威力は遮蔽物の無い空間であればほぼ均等で攻撃力は高いが、均一殺傷半径は約10m程度と破片手榴弾に比べると狭い。
これは投擲手が身を隠す場所のないところでも使えるように(巻き込まれないように)したためだ。
破片手榴弾はその名の通り、爆発によって飛び散った破片でダメージを与える手榴弾だ。
やや話はずれるが……俗に言われる『パイナップル』と呼ばれるモデルは、爆発のさい外殻周囲によく飛び散るように溝が掘られていた。しかし第2次世界大戦中、爆薬と破片の生成が研究されたが、手榴弾の外側の溝は破片を作り出すのにまったく意味を成さないことが判明。せいぜい滑り止めの役に立つしかならない。
そのため現在、アメリカ製手榴弾は溝の無い丸い形をした物が多い。その理由は『野球のボールに近い形の方が兵士達も慣れているため投げやすいだろう』という考えからきている。
話を戻す――破片手榴弾内部には巻かれた金属帯等の、破片の材料となるものが収められている。
殺傷範囲は爆裂手榴弾より広く約15mほどあり、通常は破片を避けるため遮蔽物(例えば塹壕など)に隠れつつ投げる。
オレは最初に防御用の『破片手榴弾』を作ることにした。
部品点数が多いため、時間のあるうちに手を出しておこうと思ったのだ。
そのため防具&小物、スノー&シア用のAK47を作り終える頃、必要な部品(弾体、外殻、プルリング、撃針バネ、撃針、レバー等)は魔術液体金属で作り出した。その際、ちゃんと記録を取り、各部品に関して完成品と言って良いレベルに達している。
しかし問題は炸薬だ。
例えば現在、オレは魔力で無煙火薬を作り出し発射薬として使用しているが、これを手榴弾に入れて起爆したらどうなるか?
一応破裂はするが、通常の手榴弾より威力は劣ってしまう。
なぜか?
手榴弾に使われている炸薬――TNTなどの爆薬に比べて、無煙火薬は燃焼速度(熱エネルギーの伝播速度)が圧倒的に遅いからだ。
ロケット弾、砲弾、弾丸の発射薬の燃焼速度は、秒速10~100m程。
対してTNTなどの爆破薬の燃焼速度は、秒速3000~8500mにも達する。
さらに高性能爆薬『RDX』の燃焼速度は、秒速約8700m。
オクトーゲンの燃焼速度は、秒速約9200m。
瞬間温度は摂氏1500~4500度にも達する。
専門的に分類するとハンドガンに使われるのが『発射薬』。
さらに高威力な砲弾や爆発物内部に詰められている物を『爆薬・炸薬』と言う。
今回製作する手榴弾に詰められている『爆薬・炸薬』はTNTと呼ばれる物だ。
ハンドガンの発射薬を魔力で再現出来たのだから、手榴弾に詰めるTNTも作れる筈だが……。実際、メイヤ邸で試作品を作り何度か試してはみたが、上手くはいってない。
ハンドガンに使う発射薬――無煙火薬より、魔力を消費させられる感じはしている。
もう少しでコツが掴めそうな気がするのだが……
なので馬車移動の暇な時間を、折角だからTNT炸薬――手榴弾制作に挑戦しようと思ったのだ。
「へぇーそうなんだ」
『よく分かりませんが、凄いですね』
2人には聞かせられない部分――第1・2次世界大戦などを省いて手榴弾について説明したが、彼女達は適当に相づちを打つだけだった。
興味が無いのが丸わかりだ。
オレの行動に興味を失った2人は、仲良く隣り同士座り合う。
「それじゃわたし達は、この前のお話の続きでもしようか」
『リュートお兄ちゃんの匂いと血どちらがいいかの話ですね』
何それ怖い。
スノーは相変わらず匂いフェチで、洗濯物のシャツや運動後の汗の匂いなどを嗅いでくる。クリスは血袋の名残で、たまに血を飲みたそうにしているので少しだけ飲ませている。
ちなみに血を飲ませた後彼女と夜を一緒に過ごすと、感度が上がるのかいつも以上に反応が良くなる。
スノーとクリスは互いに趣味・趣向が違うため、その良さを話し合っているようだ。決してギスギスしたものではなく、和気藹々としている。
妻同士仲がいいのは嬉しいが、話している内容にはちょっと引く。
こうしてオレ達の初レベルⅢクエストは順調に進む。
問題が起きたのは出発して、7日後のことだった。
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竜人王国を目指す街道の中間点に、予定通り5日で辿り着く。
見晴らしの良い草原から、鉱山都市を目指し森林に挟まれた道へと進む。
鉱山都市は文字通り鉱山が産業の中心となっている街だ。
山岳側にあり、森林を抜けなければいけない。
そのためどうしても魔物との遭遇率が高くなる。
つまりここからが本番と言うわけだ。
森林街道に入ると、オレ達も今までとは違う空気に気を引き締めてた。
だが、出てくる魔物はレベルⅡの時に街周辺で狩っていた魔物達だった。しかも集団ではなく、多くて4~5匹。大した相手ではない。
元気が有り余っているのか、レベルⅢのシミル達が飛び出しテンポよく倒してしまう。
お陰でオレ達の出番はなかった。
楽で良かったが野営の時、シミルに『まったくこれだからレベルⅡは役に立たないんだよな』と嫌味を言われた。そのレベルⅡにあっさり負けたのは自分なのに、記憶力が悪いのだろうか。
……また懲りずに喧嘩を売られるよりはまだマシと考えよう。
夜の見張り役に関しては、シミル組とオレ達組で2つに振り分けた。
最初はオレ達、後半はシミル組だ。
オレ達は人員をさらに2組に分け夜の見張りに立つ。
最初がスノー&クリス組、後半がオレ&シア組みだ。
夜の見張り役ではシアの気配察知技術が抜群に役立ったが、オレは殆ど足を引っ張るだけだった。
ちなみにこの場合、魔物素材は倒した冒険者の物になる。つまり、クエスト外ボーナスだ。
馬車で移動しているため、素材を持ち運ぶのも楽。
ボーナス+クエスト達成金を合わせればそこそこの金額になるだろう。
問題が起きたのは森林街道に入って2日目の午後。
後もう少しで野営地に適した広場という所で、前方の馬車が止まる。
オレ達の馬車も停止せざるを得なかった。
「なんか前の方で言い争い? みたいな感じの話し声が聞こえてくる」
このメンバーで一番耳が良いスノーが、前方の様子を告げた。
言い争いとみたいというのが気になる。
「……オレとスノーが前方に行って確認してくる。クリスとシアは周辺を警戒して、いつでも移動出来るようにしておいてくれ」
メンバー全員の返事を聞き、オレとスノーはAK47を手に前方へ駆け足で移動する。
馬車を振り返ると、クリスがM700Pを手に幌の上に腰掛けていた。
周辺の警戒といざという時、オレ達を援護するためだろう。
オレとスノーはすぐに問題の場所へと到着する。
そこには――シミル達と雇用主のゴムゴに囲まれて、1人の中年男性が幹へ背を預け座り込んでいた。
オレ達の商隊に1人無謀にも挑み、撃退された盗賊では無い。
見た目はゴムゴのような商人で、全身に傷があり、服のあちこちが血で汚れていた。
ゴムゴが水を手渡すと男は必死に喉を動かし飲み込んでいく。
シミルはオレとスノーに気付くと顔を顰めるが、仕事と割り切ったようで状況を説明し始める。
「野営地と決めていたこの先の広場で、魔物達に襲われた生き残りだとよ。これから詳しい話を聞くところだ」
丁度いいタイミングというやつらしい。
スノーに頼んで、男性の怪我を魔術で治す。
男は水を飲むのを一時中断して、スノーへ礼を告げた。
水を飲み干した中年男性は一息つくと、この先の広場で起きた出来事を震えながら話し出す。
彼も商人で、仲間商と資金を出し合い護衛者を雇って鉱山街ベスタを出た。
広場で野営の準備をしていると、大鬼の集団約50匹に襲われた。
しかも商人達を逃がさないよう息を潜めて近づき、一斉に挟撃してきたらしい。
彼はたまたま運良く包囲網を抜け出すことが出来、九死に一生を得たとのことだ。
「お、大鬼、50匹だって!?」
シミル達が驚愕する。
大鬼とはオークよりも強い上級種だ。身長は平均3メートル、筋力も1、2回りほど大きい。この辺ではほぼ最強の魔物だ。
しかし知能はオークと変わらず、作戦を立て組織だって動くことはまずあり得ない。
襲われた男も、自分が悪夢でも見ているのかと思った、と言っていた。
それほど不自然な出来事だ。
話を聞き終えたスノーが指摘する。
「多分それ、懸賞金首の双子魔術師が関わってると思う。聞いたことのある手口だし、間違いないと思うよ」
双子魔術師――一卵性双生児の魔術師で魔物を恐怖で縛り服従させ、組織だって襲わせるのが特徴。魔術師としての腕も高く、2人同時に攻撃魔術をおこなうことで魔力を共鳴させ、一時的にAマイナス級の攻撃をしかけてくるらしい。
懸賞金がかけられている有名な魔術師だ。
だとしたら冒険者レベルⅣクラスの仕事になる。
シミル達も双子魔術師を知っていたのだろう、さらに動揺し浮き足立つ。
「あ、あの双子に大鬼50匹なんて! 一刻も早く街道を戻って竜人帝國騎士団を緊急派遣するレベルじゃないか!」
「でもまだ生き残っている人がいるかもしれない。まずは斥候で様子を見てくるべきだと思う」
オレの提案にシミルは苛立たしげに睨み付けてくる。
「居るわけないだろ、生きてる奴なんて!」
「けどこのままじゃ、この人のように鉱山街から来る人が危険も知らずまた襲われるかもしれないんだぞ」
「だからどうした。まずは自分達の安全を確保するのが最優先だろうが。ここに居る俺達だって何時襲撃を受けるか分かったもんじゃない。今すぐ引き返すべきだ!」
「自分達の安全を確保するためにも、今どういう状況なのか把握するべきだと言ってるんだ」
オレとシミルの意見が真っ向から対立する。
自然、雇用主であるゴムゴに視線が向けられた。
彼は額から流れる汗を拭い、目を反らす。
「私は冒険者クエストは素人。ここはプロである皆さんに決めて貰えばと思います」
丸投げしやがった。
オレは溜息をつき、折衷案を提示する。
「ならまずオレ達が斥候を務めます。もし3時間経って帰ってこなかったら街へ戻ってください。問題が起きたら狼煙を上げるので、その時はすぐに撤退してください」
「……そっちがやりたけりゃ好きにしろ」
シミル側も生き残るために情報は欲しい。
危険な斥候役をオレ達が引き受けるなら、願ったり叶ったりと言った所だろう。
この決定に雇用主であるゴムゴも納得する。
彼らの許可を取った所で、オレとスノーはすぐさま自分達の馬車へと戻った。
オレはクリスとシアに移動しながら説明することを告げ、馬車から角馬を外して鞍を付けるよう指示を出す。
2人は理由も聞かず準備を始めてくれた。
馬車に繋がっている角馬を外し、シアが念のためと買っておいた手綱と鞍を付けていく。
魔術防止首輪もシアに指摘され、購入しておいた。
2本をベルトに固定する。
ALICEクリップで外していたポーチを自分が扱いやすい位置に装備していく。
馬の準備が整うと、1馬にスノーが乗って後ろにクリス。
1馬にシアが乗り、オレがその後ろに腰を下ろす。
スノーとシアは馬術経験があるため前を任せた。
オレとクリスは2人の背中にしがみつく。
角馬を勢いよく走らせながら、クリスとシアに事情を説明する。
その上で――今回の目的はあくまで斥候。
生存者が居たら救護すると取り決める。
危険を感じたら、例え生存者が居たとしても自分達を優先して撤退すると言い聞かせた。
最初、スノー達は渋ったが、オレは他者より彼女達の無事を優先したい。
その気持ちを素直に吐露して、無理矢理納得させた。
人助けをしたいと言っても、自分達が死んだのでは意味がない。敵はレベルⅣ級。いくら慎重にしてもしすぎることは無い。
そして角馬を走らせて、約30分と少しで目的の広場に到着する。
「こりゃ酷いな……」
オレ達は角馬から下りて、周囲を見回す。
野営地予定の広場は、学校のグラウンドぐらいの広さだ。
5、6台の幌馬車が竜巻被害にでも遭ったように壊れていた。車輪や主軸は折れ、馬車は横転し、幌部分はズタズタに穴が空いている。
しかし不思議なことに遺体が1つも無い。
馬車にある筈の荷物も殆どが無くなっている。
シアがAK47を片手に、地面の足跡や痕跡を詳細に観察する。
「……どうやら角馬の死体や遺体を回収、さらに積荷も残らず持ち帰ったようだね。スノー奥様の予想通り、双子魔術師が関わっている可能性が高いと思うよ」
「積荷は分かるけど、どうして角馬の死体や遺体なんて持ち帰ったんだ?」
「大鬼用の食料にするんだよ。大鬼の知能は低いから恐怖と褒美――この場合、エサを与えれば従うようになる。双子魔術師がよく使う手だよ」
シアの指摘に納得する。
つまり『飴と鞭』か。
自分達は商人達の積荷を、大鬼や魔物達には遺体を与える。胸くそ悪い効率厨だ。
「奴らは獲物を襲ったばかりだから、今なら安全にこの街道を通り抜けることが出来るよ。でも、今なら奴らの痕跡が多数あるからアジトを発見することはそう難しくないけど……どうする若様?」
シアが何か言いたげな物言いをしてくる。
彼女だけではなくスノー、クリスの瞳にも強い光が宿っていた。
もちろんオレだってこれだけの悪行を前にして、腹が立つ。
敵はオーガ約50匹と魔術師2人。正直強敵だ。
だが、オレ達ならやれるだろう。危なそうなら最初は距離を取って戦い、AKで弾幕を張って敵の数を減らしつつ逃げればいい。
オレは彼女達に向き直る。
「ならアジトを突き止めて、奴らを叩くか」
この決定に彼女達はそれぞれ気合いを入れ直す。
オレも怒りを燃やす瞳で断言した。
「――さぁ、戦争の時間だ」
ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日、1月15日、21時更新予定です。
この回は手榴弾の説明を無駄に力を入れて書きすぎた……。
でも楽しかったからいいか!
後、炸薬の話を書いてて思ったんだけどTNT、RDX、C4の擬人化とかないのかな?
主人公が浮気をすると、抱きつき爆発し、ヒロインの服が脱げて裸になるという斬新な話を誰か書いてください。
また今回の手榴弾等に関しては『武器と爆薬―悪夢のメカニズム図解 小林 源文』や他文献を参考にさせて頂きました。
+注意+
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