アインシュタイン:来日時の未公表書簡など慶大図書館寄贈
毎日新聞 2014年03月03日 11時16分(最終更新 03月03日 13時51分)
「日本は他のどの国より神秘のベールに覆われている」。相対性理論などで知られる世界的な物理学者、アルバート・アインシュタイン(1879〜1955年)の未公表の直筆書簡など14点が慶応義塾図書館(東京都港区)に寄贈され、3日報道関係者に公開された。アインシュタインが1922年に来日した際、知り合った日本人医師に宛てたもの。うち1枚の裏側には、相対性理論の計算をしたと思われる数式が書き付けられていた。
この医師は、九州帝国大(現九州大)教授だった三宅速(はやり)氏。アインシュタインが欧州から日本に向かう船で体調を崩した際、偶然乗り合わせた三宅氏が治療した縁で親交を深めた。
今回寄贈されたのは、アインシュタインが来日後に雑誌「改造」に発表した日本訪問記の草稿全8枚▽帰国後に三宅氏に送った礼状や色紙▽太平洋戦争中の空襲で亡くなった三宅夫妻のため戦後書いた墓碑銘の原本−−など。三宅氏の孫でエッセイストの比企寿美子氏が保管していたが、アインシュタイン生誕135年を機に寄贈した。
日本訪問記の草稿では「生活に施された造形、個人的な欲の抑制、日本人の心の純粋と平穏を守り続けてほしい」と述べている。数式が書かれていたのは、その草稿の5枚目の裏。数式が約10行にわたって記されていた。
同図書館の田村俊作館長は「日本を愛したアインシュタインの印象が作られる際、三宅氏との友情が大きな役割を果たしたことが分かる」と話した。同図書館は今後、一般公開を検討する。【西川拓】