舞鶴市:引揚記念館の資料、記憶遺産に…ユネスコに申請
毎日新聞 2014年03月04日 13時39分
第二次世界大戦後、大陸からの引き揚げの記憶を後世に伝えようと、京都府舞鶴市は4日、日本人のシベリア抑留や引き揚げに関する舞鶴引揚記念館の資料570点を、世界記憶遺産に登録するよう国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部に申請した。
舞鶴市は終戦の1945年から58年まで、引き揚げ者約66万人を受け入れた港湾都市。市が運営する記念館は、抑留者と国内の留守家族との手紙、引き揚げ受け入れに関する公文書など約1万2000点を収蔵している。
申請したのは、抑留者が木の皮から作ったメモ帳に記し、監視の目を逃れて持ち帰った「白樺日誌」▽帰らぬ息子を舞鶴港で待ち続け「岸壁の母」のモデルにもなった故端野いせさんのはがき▽抑留者が留守家族を気遣い、近況を知らせたはがきや手紙▽強制労働など抑留中の生活を描いた絵−−など。
記者会見した多々見良三市長は「戦争がもたらした悲惨な状況を生き抜いた一人一人の人間の記録であり、世界平和を考える上で貴重な資料。終戦70年となる2015年にぜひ登録を実現させたい」と話した。
世界記憶遺産は、世界の人々の記憶にとどめておくべき重要な文書や絵画などの保護を目的にユネスコが92年に創設。申請は2年に1回、一国2件まで受け付ける。15年の登録には、鹿児島県南九州市が「知覧特攻平和会館所蔵の特攻隊員の遺書」などを申請。文部科学省が国宝「東寺百合文書」、奈良県御所市の水平社博物館などが「水平社宣言と関連資料」の申請準備を進めている。5月末までに2件に絞られる。【鈴木健太郎】