◯関連記事 「木皿泉のシナリオ講座」受講レポート
こんばんは。ご存知、みよしです。
今回は、脚本家「坂元裕二」さんのシナリオ講座受講レポートです。
京都精華大学にて、10月26日と11月9日の二日に渡り開催された授業が終わり、
講義内容や坂元さんへの質問について、備忘録も兼ねてまとめることにしました。
(※今回の記事は、メモした内容の書き出し(まとめ)です。
できるだけ忠実にするため、所々箇条書きになっています。)

◯坂元裕二について
1967年生まれ、大阪市出身。1987年 第一回フジテレビヤングシナリオ大賞大賞受賞。
1989年「同・級・生」にて連続ドラマの脚本家としてデビューし、
1991年「東京ラブストーリー」などを手がける。
近年の主なテレビドラマとして、2007年「わたしたちの教科書」
2010年「チェイス〜国税査察官〜」「Mother」2011年「それでも、生きてゆく」
2013年「最高の離婚」「woman」などがある。(講座案内より引用)
◯今週の本棚:好きなもの 坂元裕二
http://mainichi.jp/feature/news/20121111ddm015070042000c.html
◯殺人犯がいて、その妹がいる
〈坂元裕二×我孫子武丸 ドラマ「それでも、生きてゆく」対談part1〉
http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20120221/E1329755091036.html
◯「坂元裕二のシナリオ講座」
昨年、精華大学で開催された「Assembly hour」でのお話が面白かったこと、
先日放送された「woman」が素晴らしかったので、応募しました。
一度は抽選に漏れたものの、欠員が出て参加できることになり、
慌てて「最高の離婚」を見ました。他に「わたしたちの教科書」を見ていたとはいえ、
近年の作品もいくつか見ておきたかった……(じんわり後悔)
私を含めた受講生20名が揃ったところで、坂元さんが登場。
薄ピンクのシャツに黒いセーターで、開口一番「お菓子食べてもいいですか?」
最近は、ご飯に豆腐を乗せてめんつゆをかけて食べるのにハマっているそうです。
坂元さんは現在46歳、25年近くテレビドラマの脚本を書いている。
「教師ではないから、理論でなく経験でお話しします」と話されたのが印象的でした。
受講生は18歳〜30代位、京都をはじめ神奈川、横浜、島根や広島からと遠方の方も。
男女比は半々くらいで、小説家や、脚本家を目指す方、学生さんも多かったです。
全2回の授業はシナリオの書き方についてと受講生のシナリオ合評が主な内容。
「続きを読む」をクリックで、シナリオ講座受講レポートへ。
こんばんは。ご存知、みよしです。
今回は、脚本家「坂元裕二」さんのシナリオ講座受講レポートです。
京都精華大学にて、10月26日と11月9日の二日に渡り開催された授業が終わり、
講義内容や坂元さんへの質問について、備忘録も兼ねてまとめることにしました。
(※今回の記事は、メモした内容の書き出し(まとめ)です。
できるだけ忠実にするため、所々箇条書きになっています。)
◯坂元裕二について
1967年生まれ、大阪市出身。1987年 第一回フジテレビヤングシナリオ大賞大賞受賞。
1989年「同・級・生」にて連続ドラマの脚本家としてデビューし、
1991年「東京ラブストーリー」などを手がける。
近年の主なテレビドラマとして、2007年「わたしたちの教科書」
2010年「チェイス〜国税査察官〜」「Mother」2011年「それでも、生きてゆく」
2013年「最高の離婚」「woman」などがある。(講座案内より引用)
◯今週の本棚:好きなもの 坂元裕二
http://mainichi.jp/feature/news/20121111ddm015070042000c.html
◯殺人犯がいて、その妹がいる
〈坂元裕二×我孫子武丸 ドラマ「それでも、生きてゆく」対談part1〉
http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20120221/E1329755091036.html
◯「坂元裕二のシナリオ講座」
昨年、精華大学で開催された「Assembly hour」でのお話が面白かったこと、
先日放送された「woman」が素晴らしかったので、応募しました。
一度は抽選に漏れたものの、欠員が出て参加できることになり、
慌てて「最高の離婚」を見ました。他に「わたしたちの教科書」を見ていたとはいえ、
近年の作品もいくつか見ておきたかった……(じんわり後悔)
私を含めた受講生20名が揃ったところで、坂元さんが登場。
薄ピンクのシャツに黒いセーターで、開口一番「お菓子食べてもいいですか?」
最近は、ご飯に豆腐を乗せてめんつゆをかけて食べるのにハマっているそうです。
坂元さんは現在46歳、25年近くテレビドラマの脚本を書いている。
「教師ではないから、理論でなく経験でお話しします」と話されたのが印象的でした。
受講生は18歳〜30代位、京都をはじめ神奈川、横浜、島根や広島からと遠方の方も。
男女比は半々くらいで、小説家や、脚本家を目指す方、学生さんも多かったです。
全2回の授業はシナリオの書き方についてと受講生のシナリオ合評が主な内容。
「続きを読む」をクリックで、シナリオ講座受講レポートへ。
◯脚本について
まず最初に「脚本(台本)は設計図」と説明がありました。
脚本には「場所、人物、行動、時間帯」が書かれている。

◯小説と脚本の違い
脚本には物語が書かれていない=その人の心は書かれない。
場面・行動・台詞の3つだけがある(書き手が書いて良いのはこの三つだけ)
脚本に書かれるものは「目に見えるもの」「耳に聞こえるもの」以外はない。
どこで何が起こって誰が何を喋ったか。
具体的な情報の積み重ねで、その人が何を思っているかが炙り出される。
坂元さん「解りにくいと思うんで、実際にシナリオを書いてみましょうか。
最近何か面白いことがあった人ありますか?」というハードルの高過ぎる質問!
受講生は夜行バスで来てる人が多いでしょ、とバスに乗る男のシナリオが書かれることに。
教室にはプロジェクターが設置され、書かれたシナリオがリアルタイムで映されました。
シナリオの内容は、ある男が東京駅で女に声を掛けられる。
しかし女の姿は見えず、無視して歩き出すと突然顔に水が掛かる。その女は妖精だった。
ある程度書いたところで、筆が止まる。
坂元さん「すごいつまらないですね。何がつまらないかというと、リアリティがない」
何に一番感動するかというと、この人は実在するのではないか?という部分。
△と□の記号では感動しない。リアリティが大事。
◯会話について
脚本にはモノローグ(独白)とダイアローグ(会話)があるが、
坂元さんが大事にしているのは、ダイアローグ(会話)
会話の面白さとは、二人の会話にズレが起こること(この人何言ってんだろう、となる)

最初に違和感があり「どうしたの?」から対立が起こる。
「頭ぶつけた?」という説得の後に謎の解明があり、告白がある。
坂元さん「人と人の意見が食い違う時に、面白さやドラマが生まれるんです」
相手の考えが分からないからこそ「自分はこう思う」と言う。
そこにコミュニケーションが生まれる。
モノローグ (独白):自分の言いたいことを言っている
ダイアローグ(会話):互いに自分の言いたいことを言っている
坂元さん「面白いものを書こうと思うなら、対立させること」
正義の反対は悪ではなく、もう一つの正義である。正義×正義こそ、ドラマ・会話の面白さ。
しかし、どちらの正義も同じくらい信じないと駄目。
登場人物10人のうち10人全員が正義で、例えば100人の正義を考えはじめる。
そうすることによって、自分がどんどん無くなっていく。
坂元さん「物語を作っていて一番楽しいのはこの時です」
自分が無くなっていくのが一番楽しい。溶けあっていくのが一番楽しい。
いくつかの正義を並べて、どれも信じてあげる。
◯描写について
続いて、遅刻しそうで焦る女の子のシナリオが書かれる。
坂元さん「この人が焦っている様子をどう表現しますか?
○○は焦っていた、という書き方はできません」
例
・パンをくわえている
・靴が脱げる(しかし、置いていく)残った靴のカット
・人ごみを掻き分けていく(すいません!と声を掛けながら)etc…
こういった描写の積み重ねによって、モノローグでは書けないものを書いていく。
坂元さん「そういうことをひたすら考えていく仕事が脚本家です」
描写によって、その人がどれだけ生きているように見せられるか。
あらすじを考えることではなく、ある人間が生きて何をするか、何を知っていくか。
坂元さん「物語は人間から始まっていくんです」
プチプチを潰している女の人が居て、なぜそうしているのか?
それが嬉しくてなのか、悲しくてなのか、怒ってなのかは見た人が決める。
「少しの誤解と多くの理解」「少しの理解と多くの誤解」が生まれる。
「悲しいの私は!」って言うと、その「悲しさ」しかない。
表現の面白さは、曖昧さ。余分なものの面白さを信じている。
その場面が駅なのか、寿司屋なのか。そこに生きている意味がついてくる。
人の気持ちや会話は、その場所の空気に左右される。
「走っている人物」の周辺を描写するなら…
・団地
・犬がたくさんいる
・雨が降っている
・真夜中である
・ポケットにガムが入っていて、それは父の形見etc…
坂元さん「脚本は糸を繋げて引っ張るようなものです」
凧上げのように、謎を引張ってクライマックスがある。
そのために、色んな描写を積み重ねていく。
◯オリジナリティについて
坂元さん「医療ものとか刑事ものとか、書けないものが沢山あるんです」
刑事に追い詰められた殺人犯は、なぜ人を殺したか?その理由にどれだけの分量を書くか?
崖の上で3分話させる人も居るし、180分、240分かける作家も居るかもしれない。
(坂元さんは、もっと時間をかけて書きたくなるから書けない?)
坂元さん「何かを書く際に、それをどの程度書きたくなるか?
それが、その作家のオリジナリティです」
日記も同じで、どこに主軸を置いて書くかにオリジナリティが出る。
朝起きてお祭りに行った一日が「起きた。お祭りに行った」とスピーディーな人も居れば、
「毛布が足にかかっている。目覚ましの音がする」という描写から始まり
いつまで経っても朝ごはんが終わらない人も居る。
何を積み重ねることを選ぶか? がリアリティに繋がる。
◯リアリティを出すポイント
坂元さん「物語が始まる前に何が起こっているかをしつこく想像します」
テーブルに座ったまま喋らせるなど、板つきで始めないようにしている。
例えば、綺麗な景色が見えるテーブル席と、座りやすいソファ席のどちらを選ぶのか。
それを譲り合う描写で、その人の性格や気持ちが伝わる。
ドラマが始まる前、フレームの前に何があるかを想像する。
画面には写らないものまで書くことで、自然と物語は豊かになる。
◯Q&A(受講生の方からの質問と、それに対する回答)
◯ドラマ「それでも、生きてゆく」
Q.大竹しのぶさんが10分に渡って喋るシーンがあるが、
会話劇のなかで、一人の演者に喋らせることについて何か意図があったのか?
A.10分くらい喋る人って現実の世界でも、たまにいるから
本当にそこで喋っているように聞こえるかなぁと思って書いた。
舞台は長台詞が多く、それをテレビでできたら面白いかなと思った。
ドラマで長台詞を入れるときはカットを割る事が多いけれど、
それだと芝居の力を信じていないってことだから、しなかった。
説明台詞を説明じゃなく聞かせるのには技量が必要で、気持ちを込めるしかない。
A「何で遅刻したの?」
B「私今日病院に行ったの。そこでヤクザに絡まれて、喧嘩して、そのまま入院しちゃった」
ではなく、
A「何で遅刻したの?」
B「坊主」
A「お坊さん? 法事だったの?」
B「いや、絡まれたっていうか…」
A「何でお坊さんに絡まれたの?」
質問への回答をずらして行きながら、会話の面白さを積んでいく。
Q.風間俊介と瑛太がオムライスを食べるシーンはどうやって書かれたのか?
A.フミヤ(風間俊介)を説得して、更正させるつもりで書いた。
しかし「7歳の女の子を殺した男を説得し更正させる」こと、
これがいち脚本家にできたら奇跡だなとも思った。
何回も書いた。何回書いても何回書いてもフミヤは泣かない。
坂元さん「泣かないから、ご飯食べたいってさせた。敗北だった」
基本的に、人と話が通じていると思わない。説得して上手く行く、という考えはない。
解らない人には解らないし、伝わらない人には伝わらないと思っている。
坂元さん「争う人を止めることは絶対にできないが、どちらの気持ちも解ってあげたい」
◯ドラマ「最高の離婚」
Q.なぜ灯里が好きな曲はJUDY AND MARY「クラシック」だったのか?
A.坂元さん「周囲にそういう人がたくさん居たんですよね」
誰かが言ってた「クラシックって曲が好き」が心に残っている。
自分が思いついたことより、人づてに褒められたほうが嬉しいのと同じで、
人を経由すると感情は倍加していく。人が見つけたもの、喜んでいるものを面白がる。
いくつものワードを選択していくことが作品になる。
人に伝わるラインで、かつ面白いところを探る(「広島カープ」のモチーフもそう)
Q.「Mother」「それでも、生きてゆく」以降、作風が変化したのはなぜか?
A. 大きなきっかけは、19・20年目に書いた「わたしたちの教科書」だった。
はじめて書いた22時台のドラマだったから。また21時台を書けばラブコメになる。
(※21時台のドラマ枠は、恋愛ものが多く取り上げられる時間帯)
坂元さん「21時台も22時台も、そこに込められている技術と書く大変さは同じです」
Q.新しい脚本の台本はどの程度詰めて書くのか?
A.TV誌にあるようなドラマの相関図ができる程度(誰と誰が仲が良くて敵対しているか等)
仲の良い人が悪く、仲の悪い人が良くなる等、関係表が変わって行くことが面白い。
1クール(11話分)で三人か四人位しか人物を書けない、あとは歯車になりがち。
Q.坂元さんにとっての想像力の源とは?
A.それぞれの定義を持っていても、実はそんなに違いはないんじゃないかなぁと思う。
(占いと同じで、どれかの結果は自分に合ってると感じるように)
坂元さん「 男を男らしく書くのも、女を女らしく書くのもつまらない」
女を強く書く、男を弱く書くことが「解っている」訳でもない。
想像力はそこに届くけれど、その邪魔をするのは固定観念。その人をただ書くだけ。
Q.影響を受けた作品はありますか?
A.O・ヘンリの短編「魔女のパン」
http://cosmoshouse.com/works/loaves/loaves.htm
坂元さん「互いの気持ちのすれ違いというか、物悲しさが好き」
「バター」「パン」「設計士」などの要素が上手く作用している。
◯Q&A(個人的な質問と、それに対する回答)
以下の質問は周囲の方から、代理でさせて頂いた質問です。
質問・回答内容のどちらも引用許可を頂いています。
◯てれびのスキマさん(ブログ:てれびのスキマ)からの質問
Q坂元さんの作品には感情移入しにくい、不可解な登場人物がよく出てきます。
ともすれば感情移入させることがいいドラマだとされる(僕は反対ですが)
昨今の風潮からは逆行すると思うのですが、そこにこだわりがあるのでしょうか?
A.自分じゃない人を描くのが一番楽しい。自分じゃない人を見て貰いたい。
「私と同じ」と思う楽しさもあるけれど「私と違う」ってことも楽しい。
Q.最近は社会派みたいに言われることが多いかと思いますが、
実際には一貫して会話の面白さや妙技でストーリーを繋げている作風だと思います。
リアリティのある会話を書く時のコツや気をつけていることは?
A.ツーショットを書く、ワンシーンを長く恐れずに書く。
テンポよく書くことを意識していると説明台詞で終わってしまう。
リアリティはダラダラしているものだから、大事な要点は回避しながら外堀を書いていく。
本当のことは見た人が感じ取るものだと思っている。
◯ゆーうちさん(ブログ:静寂を待ちながら)からの質問
Q.これまでのご自身の作品で最も「上手く書けた!」と思う箇所を教えてください。
⑴縦軸のストーリー展開に関わる部分
⑵横軸の人物の会話やエピソード、または描写の部分
Q.今までで最も周囲から褒められた作品や描写部分と、それは一致していますか?
A.人が注文するものに対して応えて書けた、というものはある。
上手く書けることは嬉しいことではない(技術はもう進化しないから)
ラブコメを書いていたころのほうが「上手く書けたなぁ」と思っていた。
今はむしろ「こういう人物について描けたかなぁ」という疑問がある。
坂元さん「説得できなくて負けっぱなしです」
「上手く書けた」よりも、正確だったとか、下手でも真面目に書けたとか、
嘘を書かずに済んだなぁという時が嬉しい。
「それでも、生きてゆく」の定食屋のシーンは自分でも正直に書けたなぁと思った。
◯ヒコさん(ブログ:青春ゾンビ)からの質問
Q.瑛太や満島ひかりの演じる役などに顕著なのですが、坂元作品において、
どこか世界からはみ出してしまった、生きづらそうな人間を中心に描くのは何故か?
A.生き易い人はあんまりドラマに出て来ない気がする。
ドラマは生き辛い人が出てくるものだと思う。
言いたいことが言えない人の会話のほうが面白い。
台詞を書くのが好きだし、面白い会話を書きたい。
面白い会話というのは自然と、すれ違う会話になる。
言葉で通じるようなことは喋らなくていい。
言葉を尽くせば尽くす程零れていくものを、お互いや見ている人が感じ取れば良い。
言いたいことが定まっている人は面白くないと思っている。
Q.坂元さんの脚本に非常に映画的なものを感じるのですが、
映画の脚本を手掛けるつもりはないのか?好きな映画作家は?
テレビドラマをメインの活躍の場に置くのは何故か?
A.映画をやる気はない。 自分の作品はワンシーンが10分位あるし、2時間で収まらない。
11話の連続ドラマの尺でないと足りないし、最近は2クール欲しいなと思う。
Q.手紙や電車などのモチーフを繰り返し多用する意図や意味は?
A.手紙:モノローグを書くのが好きじゃない。
普段書かないから、たまにやると効く必殺技みたいなもの。
電車:電車は撮影が大変だから、意地悪みたいなものです。乗り物はそれだけで絵になる。
ヒコさんは自身のブログでも、多くの坂元裕二ドラマの感想を書かれています。
坂元さんが話された内容とリンクするような記事も多く、ドラマを見返したくなります。
『栞の恋』 『さよならぼくたちのようちえん』 『東京ラブストーリー』
『それでも、生きてゆく』http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20110922/
http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130503/
『最高の離婚』http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130325
http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130307/
『Woman』 http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130726/
以上が、坂元裕二さんによるシナリオの書き方+質問への回答です。
以下は授業内で出された課題と、その合評記録、受講後の感想など。
◯シナリオ課題
・二人の意見が食い違って、仲直りじゃなくていいから決着がつくまで
・二人がそれぞれ違う人間であるように書きましょう
(自分の言いたいことを延々と書かない。違う考えを持った二人として書く)
・物語にとらわれずに書きましょう
・誰かの話を書きましょう(自分のことじゃなく)
・具体的なものを書きましょう(名前・風景・描写)
・柱(場所)ト書き(描写)名前もつける(名前には趣味が出ます)
・会話があって、オチがある(伏線を張るとオチはつきやすい)
・三題噺(話題・タイトル・場面)
・枚数は自由(ひとつのシーンが終わるくらい)
三題噺の元となるのは、受講生たちの「好きなもの・嫌いなもの」
自分が言ったものは使えないというルールでした。以下がそのリストです。
(「特撮」が好きな人は「虫」が嫌い、という風に対応しています。太字が私です)
好きなもの 嫌いなもの
特撮 虫
熊のぬいぐるみ クラムチャウダー
昼寝 ゴキブリ
食べ物 天才
ネカフェ 甘いクレープ
塩 マラソン
ドカベン 百人一首
セレッソ大阪 美魔女
スープバー いいね!ボタン
川・海 ある曲
コーヒー 単調な仕事
撮影 編集
関西弁 フランス映画
本の匂い 人身事故
映画(フランス映画) うるさい人・ホラー
ビール 雨
お笑い芸人 蓮コラ
ラジオ 貞子
古本屋めぐり 野菜の傷
再放送のドラマ 坂道
◯私の作品と合評
御題は「雨」「塩」「コーヒー」を選びました(無難!)
1狩野家・居間(夕方・雨)
聡子(45)台所に立って、林檎を剥いている。
ドアが開き、美香(16)が入ってくる。
美香「……ただいま」
聡子「(振り向いて)あっ、おかえり。チャイムくらい鳴らしなさいよ」
美香、答えずテーブルから椅子を引き、座る。鞄を床に置く。
聡子、テーブルのティッシュを数枚取る。
聡子「鞄濡れてるでしょ、これで拭きなさい」
美香「(無言で受け取り、屈んで鞄を拭く)」
聡子「なんで黙ってるの。嫌なことでもあった?」
美香「(まな板の方向を見て)……林檎食べたい」
聡子「え……ああ。はいはい」
聡子、急いで林檎を剥き終え、皿に盛って渡す。
二人、無言のまま食べ始める。暫し沈黙。
美香「……これ、塩水にさらし過ぎじゃない?」
聡子「えっ?」
美香「しょっぱいよ」
聡子「今切ったばっかりでしょ。
第一、お母さんがそんなマメなことする訳な……(何かに気付いて)」
美香「しょっぱいの(静かに泣いている)」
聡子「ど、どうしたの」
美香「なんでもない(林檎を食べ続ける)」
聡子「なんでもないことないでしょう……」
美香「なんでもないったら」
林檎を食べ続ける二人。
***
空になった二つの皿。聡子、コーヒーを入れている。
聡子「はい(マグカップを手渡す)」
美香「ん」
聡子「……言いたくないなら、良いわよ」
美香、コーヒーを啜りながらまな板の方向を見る。
美香「お母さん」
聡子「ん?」
美香「林檎って、赤じゃないよね」
聡子「えっ? 赤に決まってるでしょう」
美香「さっき食べたの、青林檎じゃん」
聡子「ああ、そういうこと……」
美香、黙り込む。聡子もコーヒーを啜る。
美香「……女の子が好きなんだと思ってた」
聡子「えっ? なんの話?」
美香「告白したの、さっき」
聡子「誰に」
美香「同じ部活の先輩。身長百八十センチ」
聡子「へぇ。で、振られたんだ」
美香「振られました。完膚なきまでに」
聡子「美香ちゃん、可愛いのにね」
美香「まあね。性別で駄目だったみたい」
聡子「どういうこと?」
美香「なんか、男の子じゃないと好きになれないんだって」
聡子「(絶句)あぁ、そう……」
コーヒーを飲み続ける二人。
***
美香、携帯を触っている。
聡子、夕食の準備をしている。
聡子「(手を止めて)そういえば」
美香「ん?」
聡子「青林檎は、収穫してしばらくすると、熟して赤くなるのよ」
美香「別の品種じゃないんだ?」
聡子「だから、その男の子もしばらくしたら、美香のことも好きになるかもね」
美香「……だったら、良いのになぁ(机に突っ伏す)」
終わり
言い訳をすると「対立点」を考えすぎて、ちょっと変なことになっています。
(「林檎は赤か?」というのが対立。でもすぐに和解しちゃいます)
「青のコード・赤のコードを切るかで揉める刑事」なんかも考えたのですが
結局自分は刑事じゃないから、想像力が追いつきませんでした。
自分が友達や家族と話す会話を、忠実に再現した感じです。
発想の源は「林檎は赤じゃない」という本からで(内容は作品とあまり関係ないです)
林檎は塩水にさらして変色しないようにする→御題の塩が使える!という流れでした。
書いてるうちに、演じて欲しい役者さんのイメージが膨らみ、
聡子は田中裕子さん・美香は橋本愛さんを思い浮かべていました。
なので美香は超絶美少女です。付き合えると確信していただけに尚更ショック、という感じ。
シーンを追加するのであれば、振られる様子があっても良いのかな?とか。
「林檎が青から赤になる」=「同性愛者が未熟な青りんご」という意図はありません。
◯坂元さんから頂いた感想
「対立はしていないけれど会話になっているというか、
相手の台詞を受け過ぎてなくて、ズレが生じていて面白い」
「好感が持てるシリーズの一つです」「オチが凄く好きです」
「人の良さというか、親子の会話のなかに美香と聡子に対する作者の優しさを感じる」
「みよしさんの書いたものに対する責任の取り方、愛情の持ち方が伝わります」
「どんなに長く書いても伝わらないものは伝わらないけど、どこから伝わって来るのかなぁ」
「告白シーンについては入れなくてもいいけれど、
振られたことが読む人に先に解ったほうが良いとは思う」
「先に「告白したの、さっき」があったほうが引っ張れる」
「でも、みよしさんのリズムだから良いのか。僕から見ると不思議な順番なんですよね」
「泣いてる時にはティッシュは渡さないんですね」
「短くシンプルな話なのに、色んなことを想像してしまう。
寄った絵なんだけど、そのフレームの外に色んなことがありそうな予感をさせて面白い」
「もっとこの二人の会話を読みたくなる」
「僕の趣味だと、ちょっと綺麗にまとまっちゃってる」
長さの問題かもしれないけど、女の子が好きなんだと思ってた〜、から
次の段落までに何があるのでは? 告白の部分と、林檎が青から赤になる話の距離が近い。
みよしさんは多分素直に書いてる(自分の思うままに)
それはみよしさんのリズムで、心の流れだから良いと思います、これで。
(決して綺麗な順番には並んでないけれど)
坂元さん「お母さんはどう思ってるんだろ?」
私「男の子が男の子好きなんてね〜って話をする気はない。美香ちゃん可哀想!という程度」
固定概念は持たない親子だという点の表現ならば、
林檎を剥いているのを見て、美香が「赤と青は絶対別なんだよね」的なことを言って泣くとか
聡子はそれを見て「何なんだろう」と思ってるけど、後々解って「色は変わる」と言うとか。
性別は関係ないんだ、という表現が林檎の話が上手く合うと良い。
「この長さで、雰囲気があって良いと思います」
「部活って何だろう?」→(吹奏楽部と答えましたが、あんまり考えてませんでした)
「なんで振られたんだろう? という疑問がもっと引っぱりになれば良いなとも思うけれど、
それが正しいかどうかは解らない。
流暢な流れを求めるなら、プロットを組むのも書き方として変わるかもしれない」
(3、4の段落に分けて「告白」「泣いてる」「男の子が好きだった」
「慰める」「林檎」などの要素を分けて、どこに入れるか考える など)
「読んでいて、これを書いた人の人柄が(良い人か悪い人かどうこうじゃなく)
書いた人が気になるなぁと思うものと思わないものがある」
「みよしさんのは、みよしさんが書いたなぁという感じが凄くする」
「素直さが作品に出ている。それは一つの力だからね」
◯受講生のシナリオ合評
他の受講生の方の文章は引用の許可を得ていないので、
合評コメントで印象的だった坂元さんの発言のみ記載します。
「全部面白かったです」
「課題は難しいものを出したので、上手く書けなくて当然です。向いてない訳じゃない」
「どんどん質問して下さい。人から聞かれることは思ってもみなかったことばかりです」
「人物の履歴書を書いて、そこから何を捨てて拾うかが個性になる」
この人はどんな人なのか? 大学生なら何歳で、何学部で……。
古本集めが趣味なら、どんなジャンルの本が好きなのか。
細部を徹底的に考え抜く。すると自然に書きたくなっていく。
プロフィールを作れば作るほど書きたくなる。
(この話は『ジョジョの奇妙な冒険』などで知られる、荒木飛呂彦さんの
「キャラクター身上調査書」にも通ずるものが有るなと思いました。
参考リンク:http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/art/archive/chapter015.html )
「地べたを這うでなく空を飛んでいる訳でもなく、
地上から5cm浮いてる人間を書くのが一番良い」(リアル過ぎ・ファンタジー過ぎない)
「自分の表現に自覚する要素がある(ボケたがる等)なら、それを禁ずるのも手」
「自分で読んで、どこが面白いポイントなのかを見つけてフォーカスする」
「人の喋り口調にはノイズが混じっている。それがその人の個性」
「人から好かれるものを書くのは特別な才能が必要」
◯感想
坂元裕二さんはとにかく優しい方で、本当に楽しい授業でした。
シナリオの書き方についても、合評においても、凄く丁寧に教えて下さいました。
どちらの日程も、大幅に時間が延長するほど! とても濃い二日間でした。
坂元さんは書くスピードがもの凄く早くて(勿論プロですから当たり前なんですが)
そんな執筆の様子を間近で見ることが出来たのは、またとない体験だったと思います。
講義内でも「会話の面白さに主軸を置いている」ことが繰り返し語られていますが、
登場人物10人のうち10人全員の正義を考えてあげる、
そして自分がどんどん無くなっていく、溶けあっていくのが一番楽しい。
そう話される様子には、一つの美学を感じて圧倒されました。
冒頭で、一度抽選に漏れて…と書きましたが、受講が決まったのは講座の3日前でした。
普段ドラマを一気に見ることは有りませんが「最高の離婚」11話を一気に見て、
1話ごとに起承転結を持たせ、全11話のなかでも起承転結を作る凄さに改めて気付きました。
坂元さんにその話をすると、11話のうち前半5話後半6話に区切って、
それをまた2話3話と区切ってその繰り返し……、理想を言えば、
会話の1センテンスにもそれがあると良いと言われ、プロの世界の凄さを垣間見た気がします。
一番の収穫は、課題の講評において「素直さ」を褒めて頂けたことでした。
自分で言うのも恥ずかしい話ですが、過去にも友人からそういう言葉を貰うことが有り
「その感じが作品に出ている」と坂元さんに言って頂いたことは、大きな自信になりました。
他の受講生の方も、皆さんとても面白いシナリオを書かれていて
それまで喋ったことが無くても、その人の作品を読むとなんとなく人柄が解る気がして、
書いたものに人が出る、というのは本当なのだなと思いました。
受講生のなかには、坂元さんが「これは!」と唸るシナリオを書いた方が居て、
けれどその方への講評で「僕から言えることはないです」としきりにおっしゃっていました。
プロの和食料理人が素人や主婦に教えることは出来ても、
プロのパティシエにアドバイスできない感じに似てる気がします。
提出し講評されるまで非常に不安でしたが、面白いと言って頂けてホッとしました。
私自身、脚本家になりたいのか、何になりたいのか、良く解らないままもがいていますが、
今回のシナリオ講座が非常に大きな収穫だったことは間違いありません。
このような機会を作って頂いた京都精華大学さんにも、感謝しています。
ひとつ不安なのは、私のメモや記憶が100%事実ではないので
無意識での誇張・取りこぼしが生まれている可能性です。
シナリオ講座を受講した方は、私の他に19名いらっしゃるので
もしこの記事を読まれて、思い当たる箇所があれば、是非教えて下さい。
(レポート許可は坂元先生に頂いています)
授業の最後に、持ち前の素直さ(いや図々しさ!)と勇気を出して
いつも持ち歩いているメモ帳へサインを頂きました。(◯◯さんへと名前入りで)
「ここに書いたら僕のメモ帳みたいになるじゃん」とおっしゃってましたが(笑)
ちゃんとサインして下さるあたり、本当に優しい方だなぁと思います。
坂元先生、本当にありがとうございました!

(※メモ帳に貼っているシールは「スケラッコさん」という作家さんの作品です。
シールは公式サイトから通販もできます。他の作品もとても可愛らしいので是非!)
http://www.sukeracko.com/
まず最初に「脚本(台本)は設計図」と説明がありました。
脚本には「場所、人物、行動、時間帯」が書かれている。
◯小説と脚本の違い
脚本には物語が書かれていない=その人の心は書かれない。
場面・行動・台詞の3つだけがある(書き手が書いて良いのはこの三つだけ)
脚本に書かれるものは「目に見えるもの」「耳に聞こえるもの」以外はない。
どこで何が起こって誰が何を喋ったか。
具体的な情報の積み重ねで、その人が何を思っているかが炙り出される。
坂元さん「解りにくいと思うんで、実際にシナリオを書いてみましょうか。
最近何か面白いことがあった人ありますか?」というハードルの高過ぎる質問!
受講生は夜行バスで来てる人が多いでしょ、とバスに乗る男のシナリオが書かれることに。
教室にはプロジェクターが設置され、書かれたシナリオがリアルタイムで映されました。
シナリオの内容は、ある男が東京駅で女に声を掛けられる。
しかし女の姿は見えず、無視して歩き出すと突然顔に水が掛かる。その女は妖精だった。
ある程度書いたところで、筆が止まる。
坂元さん「すごいつまらないですね。何がつまらないかというと、リアリティがない」
何に一番感動するかというと、この人は実在するのではないか?という部分。
△と□の記号では感動しない。リアリティが大事。
◯会話について
脚本にはモノローグ(独白)とダイアローグ(会話)があるが、
坂元さんが大事にしているのは、ダイアローグ(会話)
A「今日台風だね」これは会話じゃなく確認。調和であり世間話でしかない。
B「そうだね、大変だね」
A「心配だね」
B「ね」
会話の面白さとは、二人の会話にズレが起こること(この人何言ってんだろう、となる)
最初に違和感があり「どうしたの?」から対立が起こる。
「頭ぶつけた?」という説得の後に謎の解明があり、告白がある。
坂元さん「人と人の意見が食い違う時に、面白さやドラマが生まれるんです」
相手の考えが分からないからこそ「自分はこう思う」と言う。
そこにコミュニケーションが生まれる。
モノローグ (独白):自分の言いたいことを言っている
ダイアローグ(会話):互いに自分の言いたいことを言っている
坂元さん「面白いものを書こうと思うなら、対立させること」
正義の反対は悪ではなく、もう一つの正義である。正義×正義こそ、ドラマ・会話の面白さ。
しかし、どちらの正義も同じくらい信じないと駄目。
登場人物10人のうち10人全員が正義で、例えば100人の正義を考えはじめる。
そうすることによって、自分がどんどん無くなっていく。
坂元さん「物語を作っていて一番楽しいのはこの時です」
自分が無くなっていくのが一番楽しい。溶けあっていくのが一番楽しい。
いくつかの正義を並べて、どれも信じてあげる。
◯描写について
続いて、遅刻しそうで焦る女の子のシナリオが書かれる。
坂元さん「この人が焦っている様子をどう表現しますか?
○○は焦っていた、という書き方はできません」
例
・パンをくわえている
・靴が脱げる(しかし、置いていく)残った靴のカット
・人ごみを掻き分けていく(すいません!と声を掛けながら)etc…
こういった描写の積み重ねによって、モノローグでは書けないものを書いていく。
坂元さん「そういうことをひたすら考えていく仕事が脚本家です」
描写によって、その人がどれだけ生きているように見せられるか。
あらすじを考えることではなく、ある人間が生きて何をするか、何を知っていくか。
坂元さん「物語は人間から始まっていくんです」
プチプチを潰している女の人が居て、なぜそうしているのか?
それが嬉しくてなのか、悲しくてなのか、怒ってなのかは見た人が決める。
「少しの誤解と多くの理解」「少しの理解と多くの誤解」が生まれる。
「悲しいの私は!」って言うと、その「悲しさ」しかない。
表現の面白さは、曖昧さ。余分なものの面白さを信じている。
その場面が駅なのか、寿司屋なのか。そこに生きている意味がついてくる。
人の気持ちや会話は、その場所の空気に左右される。
「走っている人物」の周辺を描写するなら…
・団地
・犬がたくさんいる
・雨が降っている
・真夜中である
・ポケットにガムが入っていて、それは父の形見etc…
坂元さん「脚本は糸を繋げて引っ張るようなものです」
凧上げのように、謎を引張ってクライマックスがある。
そのために、色んな描写を積み重ねていく。
◯オリジナリティについて
坂元さん「医療ものとか刑事ものとか、書けないものが沢山あるんです」
刑事に追い詰められた殺人犯は、なぜ人を殺したか?その理由にどれだけの分量を書くか?
崖の上で3分話させる人も居るし、180分、240分かける作家も居るかもしれない。
(坂元さんは、もっと時間をかけて書きたくなるから書けない?)
坂元さん「何かを書く際に、それをどの程度書きたくなるか?
それが、その作家のオリジナリティです」
日記も同じで、どこに主軸を置いて書くかにオリジナリティが出る。
朝起きてお祭りに行った一日が「起きた。お祭りに行った」とスピーディーな人も居れば、
「毛布が足にかかっている。目覚ましの音がする」という描写から始まり
いつまで経っても朝ごはんが終わらない人も居る。
何を積み重ねることを選ぶか? がリアリティに繋がる。
◯リアリティを出すポイント
坂元さん「物語が始まる前に何が起こっているかをしつこく想像します」
テーブルに座ったまま喋らせるなど、板つきで始めないようにしている。
例えば、綺麗な景色が見えるテーブル席と、座りやすいソファ席のどちらを選ぶのか。
それを譲り合う描写で、その人の性格や気持ちが伝わる。
ドラマが始まる前、フレームの前に何があるかを想像する。
画面には写らないものまで書くことで、自然と物語は豊かになる。
◯Q&A(受講生の方からの質問と、それに対する回答)
◯ドラマ「それでも、生きてゆく」
Q.大竹しのぶさんが10分に渡って喋るシーンがあるが、
会話劇のなかで、一人の演者に喋らせることについて何か意図があったのか?
A.10分くらい喋る人って現実の世界でも、たまにいるから
本当にそこで喋っているように聞こえるかなぁと思って書いた。
舞台は長台詞が多く、それをテレビでできたら面白いかなと思った。
ドラマで長台詞を入れるときはカットを割る事が多いけれど、
それだと芝居の力を信じていないってことだから、しなかった。
説明台詞を説明じゃなく聞かせるのには技量が必要で、気持ちを込めるしかない。
A「何で遅刻したの?」
B「私今日病院に行ったの。そこでヤクザに絡まれて、喧嘩して、そのまま入院しちゃった」
ではなく、
A「何で遅刻したの?」
B「坊主」
A「お坊さん? 法事だったの?」
B「いや、絡まれたっていうか…」
A「何でお坊さんに絡まれたの?」
質問への回答をずらして行きながら、会話の面白さを積んでいく。
Q.風間俊介と瑛太がオムライスを食べるシーンはどうやって書かれたのか?
A.フミヤ(風間俊介)を説得して、更正させるつもりで書いた。
しかし「7歳の女の子を殺した男を説得し更正させる」こと、
これがいち脚本家にできたら奇跡だなとも思った。
何回も書いた。何回書いても何回書いてもフミヤは泣かない。
坂元さん「泣かないから、ご飯食べたいってさせた。敗北だった」
基本的に、人と話が通じていると思わない。説得して上手く行く、という考えはない。
解らない人には解らないし、伝わらない人には伝わらないと思っている。
坂元さん「争う人を止めることは絶対にできないが、どちらの気持ちも解ってあげたい」
◯ドラマ「最高の離婚」
Q.なぜ灯里が好きな曲はJUDY AND MARY「クラシック」だったのか?
A.坂元さん「周囲にそういう人がたくさん居たんですよね」
誰かが言ってた「クラシックって曲が好き」が心に残っている。
自分が思いついたことより、人づてに褒められたほうが嬉しいのと同じで、
人を経由すると感情は倍加していく。人が見つけたもの、喜んでいるものを面白がる。
いくつものワードを選択していくことが作品になる。
人に伝わるラインで、かつ面白いところを探る(「広島カープ」のモチーフもそう)
Q.「Mother」「それでも、生きてゆく」以降、作風が変化したのはなぜか?
A. 大きなきっかけは、19・20年目に書いた「わたしたちの教科書」だった。
はじめて書いた22時台のドラマだったから。また21時台を書けばラブコメになる。
(※21時台のドラマ枠は、恋愛ものが多く取り上げられる時間帯)
坂元さん「21時台も22時台も、そこに込められている技術と書く大変さは同じです」
Q.新しい脚本の台本はどの程度詰めて書くのか?
A.TV誌にあるようなドラマの相関図ができる程度(誰と誰が仲が良くて敵対しているか等)
仲の良い人が悪く、仲の悪い人が良くなる等、関係表が変わって行くことが面白い。
1クール(11話分)で三人か四人位しか人物を書けない、あとは歯車になりがち。
Q.坂元さんにとっての想像力の源とは?
A.それぞれの定義を持っていても、実はそんなに違いはないんじゃないかなぁと思う。
(占いと同じで、どれかの結果は自分に合ってると感じるように)
坂元さん「 男を男らしく書くのも、女を女らしく書くのもつまらない」
女を強く書く、男を弱く書くことが「解っている」訳でもない。
想像力はそこに届くけれど、その邪魔をするのは固定観念。その人をただ書くだけ。
Q.影響を受けた作品はありますか?
A.O・ヘンリの短編「魔女のパン」
http://cosmoshouse.com/works/loaves/loaves.htm
坂元さん「互いの気持ちのすれ違いというか、物悲しさが好き」
「バター」「パン」「設計士」などの要素が上手く作用している。
◯Q&A(個人的な質問と、それに対する回答)
以下の質問は周囲の方から、代理でさせて頂いた質問です。
質問・回答内容のどちらも引用許可を頂いています。
◯てれびのスキマさん(ブログ:てれびのスキマ)からの質問
Q坂元さんの作品には感情移入しにくい、不可解な登場人物がよく出てきます。
ともすれば感情移入させることがいいドラマだとされる(僕は反対ですが)
昨今の風潮からは逆行すると思うのですが、そこにこだわりがあるのでしょうか?
A.自分じゃない人を描くのが一番楽しい。自分じゃない人を見て貰いたい。
「私と同じ」と思う楽しさもあるけれど「私と違う」ってことも楽しい。
Q.最近は社会派みたいに言われることが多いかと思いますが、
実際には一貫して会話の面白さや妙技でストーリーを繋げている作風だと思います。
リアリティのある会話を書く時のコツや気をつけていることは?
A.ツーショットを書く、ワンシーンを長く恐れずに書く。
テンポよく書くことを意識していると説明台詞で終わってしまう。
リアリティはダラダラしているものだから、大事な要点は回避しながら外堀を書いていく。
本当のことは見た人が感じ取るものだと思っている。
◯ゆーうちさん(ブログ:静寂を待ちながら)からの質問
Q.これまでのご自身の作品で最も「上手く書けた!」と思う箇所を教えてください。
⑴縦軸のストーリー展開に関わる部分
⑵横軸の人物の会話やエピソード、または描写の部分
Q.今までで最も周囲から褒められた作品や描写部分と、それは一致していますか?
A.人が注文するものに対して応えて書けた、というものはある。
上手く書けることは嬉しいことではない(技術はもう進化しないから)
ラブコメを書いていたころのほうが「上手く書けたなぁ」と思っていた。
今はむしろ「こういう人物について描けたかなぁ」という疑問がある。
坂元さん「説得できなくて負けっぱなしです」
「上手く書けた」よりも、正確だったとか、下手でも真面目に書けたとか、
嘘を書かずに済んだなぁという時が嬉しい。
「それでも、生きてゆく」の定食屋のシーンは自分でも正直に書けたなぁと思った。
◯ヒコさん(ブログ:青春ゾンビ)からの質問
Q.瑛太や満島ひかりの演じる役などに顕著なのですが、坂元作品において、
どこか世界からはみ出してしまった、生きづらそうな人間を中心に描くのは何故か?
A.生き易い人はあんまりドラマに出て来ない気がする。
ドラマは生き辛い人が出てくるものだと思う。
言いたいことが言えない人の会話のほうが面白い。
台詞を書くのが好きだし、面白い会話を書きたい。
面白い会話というのは自然と、すれ違う会話になる。
言葉で通じるようなことは喋らなくていい。
言葉を尽くせば尽くす程零れていくものを、お互いや見ている人が感じ取れば良い。
言いたいことが定まっている人は面白くないと思っている。
Q.坂元さんの脚本に非常に映画的なものを感じるのですが、
映画の脚本を手掛けるつもりはないのか?好きな映画作家は?
テレビドラマをメインの活躍の場に置くのは何故か?
A.映画をやる気はない。 自分の作品はワンシーンが10分位あるし、2時間で収まらない。
11話の連続ドラマの尺でないと足りないし、最近は2クール欲しいなと思う。
Q.手紙や電車などのモチーフを繰り返し多用する意図や意味は?
A.手紙:モノローグを書くのが好きじゃない。
普段書かないから、たまにやると効く必殺技みたいなもの。
電車:電車は撮影が大変だから、意地悪みたいなものです。乗り物はそれだけで絵になる。
ヒコさんは自身のブログでも、多くの坂元裕二ドラマの感想を書かれています。
坂元さんが話された内容とリンクするような記事も多く、ドラマを見返したくなります。
『栞の恋』 『さよならぼくたちのようちえん』 『東京ラブストーリー』
『それでも、生きてゆく』http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20110922/
http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130503/
『最高の離婚』http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130325
http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130307/
『Woman』 http://d.hatena.ne.jp/hiko1985/20130726/
以上が、坂元裕二さんによるシナリオの書き方+質問への回答です。
以下は授業内で出された課題と、その合評記録、受講後の感想など。
◯シナリオ課題
・二人の意見が食い違って、仲直りじゃなくていいから決着がつくまで
・二人がそれぞれ違う人間であるように書きましょう
(自分の言いたいことを延々と書かない。違う考えを持った二人として書く)
・物語にとらわれずに書きましょう
・誰かの話を書きましょう(自分のことじゃなく)
・具体的なものを書きましょう(名前・風景・描写)
・柱(場所)ト書き(描写)名前もつける(名前には趣味が出ます)
・会話があって、オチがある(伏線を張るとオチはつきやすい)
・三題噺(話題・タイトル・場面)
・枚数は自由(ひとつのシーンが終わるくらい)
三題噺の元となるのは、受講生たちの「好きなもの・嫌いなもの」
自分が言ったものは使えないというルールでした。以下がそのリストです。
(「特撮」が好きな人は「虫」が嫌い、という風に対応しています。太字が私です)
好きなもの 嫌いなもの
特撮 虫
熊のぬいぐるみ クラムチャウダー
昼寝 ゴキブリ
食べ物 天才
ネカフェ 甘いクレープ
塩 マラソン
ドカベン 百人一首
セレッソ大阪 美魔女
スープバー いいね!ボタン
川・海 ある曲
コーヒー 単調な仕事
撮影 編集
関西弁 フランス映画
本の匂い 人身事故
映画(フランス映画) うるさい人・ホラー
ビール 雨
お笑い芸人 蓮コラ
ラジオ 貞子
古本屋めぐり 野菜の傷
再放送のドラマ 坂道
◯私の作品と合評
御題は「雨」「塩」「コーヒー」を選びました(無難!)
1狩野家・居間(夕方・雨)
聡子(45)台所に立って、林檎を剥いている。
ドアが開き、美香(16)が入ってくる。
美香「……ただいま」
聡子「(振り向いて)あっ、おかえり。チャイムくらい鳴らしなさいよ」
美香、答えずテーブルから椅子を引き、座る。鞄を床に置く。
聡子、テーブルのティッシュを数枚取る。
聡子「鞄濡れてるでしょ、これで拭きなさい」
美香「(無言で受け取り、屈んで鞄を拭く)」
聡子「なんで黙ってるの。嫌なことでもあった?」
美香「(まな板の方向を見て)……林檎食べたい」
聡子「え……ああ。はいはい」
聡子、急いで林檎を剥き終え、皿に盛って渡す。
二人、無言のまま食べ始める。暫し沈黙。
美香「……これ、塩水にさらし過ぎじゃない?」
聡子「えっ?」
美香「しょっぱいよ」
聡子「今切ったばっかりでしょ。
第一、お母さんがそんなマメなことする訳な……(何かに気付いて)」
美香「しょっぱいの(静かに泣いている)」
聡子「ど、どうしたの」
美香「なんでもない(林檎を食べ続ける)」
聡子「なんでもないことないでしょう……」
美香「なんでもないったら」
林檎を食べ続ける二人。
***
空になった二つの皿。聡子、コーヒーを入れている。
聡子「はい(マグカップを手渡す)」
美香「ん」
聡子「……言いたくないなら、良いわよ」
美香、コーヒーを啜りながらまな板の方向を見る。
美香「お母さん」
聡子「ん?」
美香「林檎って、赤じゃないよね」
聡子「えっ? 赤に決まってるでしょう」
美香「さっき食べたの、青林檎じゃん」
聡子「ああ、そういうこと……」
美香、黙り込む。聡子もコーヒーを啜る。
美香「……女の子が好きなんだと思ってた」
聡子「えっ? なんの話?」
美香「告白したの、さっき」
聡子「誰に」
美香「同じ部活の先輩。身長百八十センチ」
聡子「へぇ。で、振られたんだ」
美香「振られました。完膚なきまでに」
聡子「美香ちゃん、可愛いのにね」
美香「まあね。性別で駄目だったみたい」
聡子「どういうこと?」
美香「なんか、男の子じゃないと好きになれないんだって」
聡子「(絶句)あぁ、そう……」
コーヒーを飲み続ける二人。
***
美香、携帯を触っている。
聡子、夕食の準備をしている。
聡子「(手を止めて)そういえば」
美香「ん?」
聡子「青林檎は、収穫してしばらくすると、熟して赤くなるのよ」
美香「別の品種じゃないんだ?」
聡子「だから、その男の子もしばらくしたら、美香のことも好きになるかもね」
美香「……だったら、良いのになぁ(机に突っ伏す)」
終わり
言い訳をすると「対立点」を考えすぎて、ちょっと変なことになっています。
(「林檎は赤か?」というのが対立。でもすぐに和解しちゃいます)
「青のコード・赤のコードを切るかで揉める刑事」なんかも考えたのですが
結局自分は刑事じゃないから、想像力が追いつきませんでした。
自分が友達や家族と話す会話を、忠実に再現した感じです。
発想の源は「林檎は赤じゃない」という本からで(内容は作品とあまり関係ないです)
林檎は塩水にさらして変色しないようにする→御題の塩が使える!という流れでした。
書いてるうちに、演じて欲しい役者さんのイメージが膨らみ、
聡子は田中裕子さん・美香は橋本愛さんを思い浮かべていました。
なので美香は超絶美少女です。付き合えると確信していただけに尚更ショック、という感じ。
シーンを追加するのであれば、振られる様子があっても良いのかな?とか。
「林檎が青から赤になる」=「同性愛者が未熟な青りんご」という意図はありません。
◯坂元さんから頂いた感想
「対立はしていないけれど会話になっているというか、
相手の台詞を受け過ぎてなくて、ズレが生じていて面白い」
「好感が持てるシリーズの一つです」「オチが凄く好きです」
「人の良さというか、親子の会話のなかに美香と聡子に対する作者の優しさを感じる」
「みよしさんの書いたものに対する責任の取り方、愛情の持ち方が伝わります」
「どんなに長く書いても伝わらないものは伝わらないけど、どこから伝わって来るのかなぁ」
「告白シーンについては入れなくてもいいけれど、
振られたことが読む人に先に解ったほうが良いとは思う」
「先に「告白したの、さっき」があったほうが引っ張れる」
「でも、みよしさんのリズムだから良いのか。僕から見ると不思議な順番なんですよね」
「泣いてる時にはティッシュは渡さないんですね」
「短くシンプルな話なのに、色んなことを想像してしまう。
寄った絵なんだけど、そのフレームの外に色んなことがありそうな予感をさせて面白い」
「もっとこの二人の会話を読みたくなる」
「僕の趣味だと、ちょっと綺麗にまとまっちゃってる」
長さの問題かもしれないけど、女の子が好きなんだと思ってた〜、から
次の段落までに何があるのでは? 告白の部分と、林檎が青から赤になる話の距離が近い。
みよしさんは多分素直に書いてる(自分の思うままに)
それはみよしさんのリズムで、心の流れだから良いと思います、これで。
(決して綺麗な順番には並んでないけれど)
坂元さん「お母さんはどう思ってるんだろ?」
私「男の子が男の子好きなんてね〜って話をする気はない。美香ちゃん可哀想!という程度」
固定概念は持たない親子だという点の表現ならば、
林檎を剥いているのを見て、美香が「赤と青は絶対別なんだよね」的なことを言って泣くとか
聡子はそれを見て「何なんだろう」と思ってるけど、後々解って「色は変わる」と言うとか。
性別は関係ないんだ、という表現が林檎の話が上手く合うと良い。
「この長さで、雰囲気があって良いと思います」
「部活って何だろう?」→(吹奏楽部と答えましたが、あんまり考えてませんでした)
「なんで振られたんだろう? という疑問がもっと引っぱりになれば良いなとも思うけれど、
それが正しいかどうかは解らない。
流暢な流れを求めるなら、プロットを組むのも書き方として変わるかもしれない」
(3、4の段落に分けて「告白」「泣いてる」「男の子が好きだった」
「慰める」「林檎」などの要素を分けて、どこに入れるか考える など)
「読んでいて、これを書いた人の人柄が(良い人か悪い人かどうこうじゃなく)
書いた人が気になるなぁと思うものと思わないものがある」
「みよしさんのは、みよしさんが書いたなぁという感じが凄くする」
「素直さが作品に出ている。それは一つの力だからね」
◯受講生のシナリオ合評
他の受講生の方の文章は引用の許可を得ていないので、
合評コメントで印象的だった坂元さんの発言のみ記載します。
「全部面白かったです」
「課題は難しいものを出したので、上手く書けなくて当然です。向いてない訳じゃない」
「どんどん質問して下さい。人から聞かれることは思ってもみなかったことばかりです」
「人物の履歴書を書いて、そこから何を捨てて拾うかが個性になる」
この人はどんな人なのか? 大学生なら何歳で、何学部で……。
古本集めが趣味なら、どんなジャンルの本が好きなのか。
細部を徹底的に考え抜く。すると自然に書きたくなっていく。
プロフィールを作れば作るほど書きたくなる。
(この話は『ジョジョの奇妙な冒険』などで知られる、荒木飛呂彦さんの
「キャラクター身上調査書」にも通ずるものが有るなと思いました。
参考リンク:http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/art/archive/chapter015.html )
「地べたを這うでなく空を飛んでいる訳でもなく、
地上から5cm浮いてる人間を書くのが一番良い」(リアル過ぎ・ファンタジー過ぎない)
「自分の表現に自覚する要素がある(ボケたがる等)なら、それを禁ずるのも手」
「自分で読んで、どこが面白いポイントなのかを見つけてフォーカスする」
「人の喋り口調にはノイズが混じっている。それがその人の個性」
「人から好かれるものを書くのは特別な才能が必要」
◯感想
坂元裕二さんはとにかく優しい方で、本当に楽しい授業でした。
シナリオの書き方についても、合評においても、凄く丁寧に教えて下さいました。
どちらの日程も、大幅に時間が延長するほど! とても濃い二日間でした。
坂元さんは書くスピードがもの凄く早くて(勿論プロですから当たり前なんですが)
そんな執筆の様子を間近で見ることが出来たのは、またとない体験だったと思います。
講義内でも「会話の面白さに主軸を置いている」ことが繰り返し語られていますが、
登場人物10人のうち10人全員の正義を考えてあげる、
そして自分がどんどん無くなっていく、溶けあっていくのが一番楽しい。
そう話される様子には、一つの美学を感じて圧倒されました。
冒頭で、一度抽選に漏れて…と書きましたが、受講が決まったのは講座の3日前でした。
普段ドラマを一気に見ることは有りませんが「最高の離婚」11話を一気に見て、
1話ごとに起承転結を持たせ、全11話のなかでも起承転結を作る凄さに改めて気付きました。
坂元さんにその話をすると、11話のうち前半5話後半6話に区切って、
それをまた2話3話と区切ってその繰り返し……、理想を言えば、
会話の1センテンスにもそれがあると良いと言われ、プロの世界の凄さを垣間見た気がします。
一番の収穫は、課題の講評において「素直さ」を褒めて頂けたことでした。
自分で言うのも恥ずかしい話ですが、過去にも友人からそういう言葉を貰うことが有り
「その感じが作品に出ている」と坂元さんに言って頂いたことは、大きな自信になりました。
他の受講生の方も、皆さんとても面白いシナリオを書かれていて
それまで喋ったことが無くても、その人の作品を読むとなんとなく人柄が解る気がして、
書いたものに人が出る、というのは本当なのだなと思いました。
受講生のなかには、坂元さんが「これは!」と唸るシナリオを書いた方が居て、
けれどその方への講評で「僕から言えることはないです」としきりにおっしゃっていました。
プロの和食料理人が素人や主婦に教えることは出来ても、
プロのパティシエにアドバイスできない感じに似てる気がします。
提出し講評されるまで非常に不安でしたが、面白いと言って頂けてホッとしました。
私自身、脚本家になりたいのか、何になりたいのか、良く解らないままもがいていますが、
今回のシナリオ講座が非常に大きな収穫だったことは間違いありません。
このような機会を作って頂いた京都精華大学さんにも、感謝しています。
ひとつ不安なのは、私のメモや記憶が100%事実ではないので
無意識での誇張・取りこぼしが生まれている可能性です。
シナリオ講座を受講した方は、私の他に19名いらっしゃるので
もしこの記事を読まれて、思い当たる箇所があれば、是非教えて下さい。
(レポート許可は坂元先生に頂いています)
授業の最後に、持ち前の素直さ(いや図々しさ!)と勇気を出して
いつも持ち歩いているメモ帳へサインを頂きました。(◯◯さんへと名前入りで)
「ここに書いたら僕のメモ帳みたいになるじゃん」とおっしゃってましたが(笑)
ちゃんとサインして下さるあたり、本当に優しい方だなぁと思います。
坂元先生、本当にありがとうございました!
(※メモ帳に貼っているシールは「スケラッコさん」という作家さんの作品です。
シールは公式サイトから通販もできます。他の作品もとても可愛らしいので是非!)
http://www.sukeracko.com/
コメント
コメント一覧
お久しぶりです。
ちょうど、公募ガイド社への投稿シナリオを書いているときなので、
ここにやって来ました。
(600字ですよ、みよしさんもいかが?)
ざっとしか見てませんが、とても面白そうです。
生で聴くと、とても良かったでしょうね。
行きたかったな。
26日は出張だから、はなから無理ですが。
京都精華大学へはちょうど僕もこの間、21日に原田マハさんの講演会で行って来ましたよ。
ときどき、いいのをやってくれますよね。
僕もこれからシナリオ教室、チェックしておきます。
もう一度言わせて下さい。
このページ永遠ブックマークです!
みよしさん、
もう一度 追体験させていただき
ありがとうございます!
最高に贅沢な
お久しぶりです!お返事が遅くなってしまい、すみません。
公募ガイド社は最近知ったのですが、
見ていると自分も何か出してみようかとワクワクしますね。
来年はチェックしてみたいと思います!
坂元さんのシナリオ講座、とても面白かったです。
技術だけじゃなく、書くことの根幹に関わる話をして下さいました。
原田マハさんの講演会も気になっていたので、
アトランさんの日記でちらりと内容を知れて良かったです。
来年は誰が招聘されるか解りませんが、楽しみですね。
こんにちは、お返事が遅くなってごめんなさい!
永遠にブックマークだなんて……、本当に嬉しいです。
追体験できた、と言って貰える忠実さで書けて、良かったと思います。
こちらこそ、ありがとうございました!◎