武士の子孫、今も日本社会で優位―米大学研究

Criterion Collection viaBloomberg News
黒澤明監督の『七人の侍』(1954年)

140年ほど前、日本の武士は刀を手放した。だが、その子孫は今でも日本社会で優位性を保っている――。

日本のかつての封建制度で支配的階級にあった名字を持つ人は今日でも社会的地位が高い傾向にあることが、最新の研究で分かった。

カリフォルニア大学デービス校のグレゴリー・クラーク教授と大学院生の石井達也氏が行ったこの研究の結果に、日本に百万人以上いる佐藤さんや鈴木さんはやや失望するかもしれない。ありふれた名字を持つ人は、「新見」や「杉枝」といったあまり一般的でない名字を持つ人より、高い社会的階級につく可能性が低いことを示唆しているからだ。

新見と杉枝の名字は、江戸幕府が編修し1812年に完成した系譜集「寛政重修諸家譜」に記されている。江戸幕府は徳川家康が開いた武家政権で、1603年から1867年まで続いた。この時代には階級間に厳然とした垣根があり、武士の支配的地位は原則として子息に限り代々受け継がれていた。

クラーク教授の著作「The Son Also Rises」は世界中の名字を利用し、世代間の階級の変化を調べたものだ。クラーク教授は、人々の運命の一部は数百年も前の先祖が何をしていたかによって決まることを発見し、驚いたと話す。

日本の武士やその他の特権階級はずいぶん昔にその特権を失ったほか、第2次世界大戦後の憲法の下ですべての国民が法的に平等となった。それにもかかわらず世代間の社会移動が緩慢であるという意味では、「日本は他の社会とまったく同じだ」と石井氏は指摘する。石井氏はクラーク教授の研究で日本の部分を手伝った。

日本の部分の研究は、1812年の江戸幕府の記録から名字を抽出し、世界中の名字を探せるインターネット上のデータベース「World Names Profiler」で人口100万人当たり10人以下の名字を検索する方法で行われた。石井氏らは、珍しい武士の名字を持つ人は武士の子孫である可能性が高いと推測した。

これらの名字を医師や弁護士、企業経営者、大学教授などのリストや、学術的な発行物などと比較したところ、どの名字もこうしたリストの中で大きな割合を占めていることが分かった。

一般通念からすれば、日本の封建的な階級システムを終わらせた1868年の明治維新や、第2次世界大戦での敗戦といった劇的な社会変動は、社会的な流動性を急速に高めるはずだ。だが、クラーク教授の研究はそうではないことを示している。事実、同教授の研究によると、中国の共産主義革命でさえ社会的流動性に顕著な影響は与えていない。

日本では、社会的階級の研究者が「社会階層と社会移動全国調査」を1955年以降10年おきに行っている。だが、この調査に携わる東北大学大学院教育学研究科の三輪哲・准教授は、名字に焦点を当てた階級研究は聞いたことがないという。

三輪氏はクラーク教授の研究結果には説得力があると話す。「武士の子孫が学歴や、社会的、階層的地位が比較的高めになっていることが50年前くらい前に報告されたことがあった。ただ現代においてもそういった傾向が見られることは軽い驚きではある」

クラーク教授と石井氏が利用したインターネットのデータベースによると、日本で最も一般的な名字は「佐藤」と「鈴木」で、佐藤さんは100万人当たり1万4392人、鈴木さんは同1万2906人となっている。日本の総人口1億2700万人で考えると、佐藤さんは約180万人、鈴木さんは約160万人いる計算になる。

これとは対照的に、新見さんは日本中で17人前後、杉枝さんは169人前後しかいない。

では、石井氏の名字はどうか。本人は「ご想像通り『石井』はかなり一般的な名字で、特に語れるようなことは何もないと思う」と話した。

原文(英語): Samurai Spirit: Progeny of Japan’s Warrior Elite Retain Edge Today http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/03/04/samurai-spirit-progeny-of-japans-warrior-elite-retain-edge-today/




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