企業には、働く人の命や安全を守る義務がある。

 東日本大震災から3年。その責任の重みを改めて考えさせるのが、宮城県の七十七銀行女川支店での痛ましい出来事だ。

 銀行の指示で屋上に逃げた行員ら12人が、津波の犠牲になった。近くの別の金融機関の人たちは高台に逃げて助かった。

 遺族らが銀行に賠償を求める裁判を起こしたが、仙台地裁は先月、屋上を超えるほどの巨大津波の予見は難しかったとして訴えを退けた。

 この場合の司法は、あくまで震災前の基準に照らした法的責任を判断するに過ぎない。あらゆる被害想定の甘さが露呈した今、企業が防災体制を整える責任はいっそう重くなった。

 従業員の命を守るための方策を、企業は不断に検討し、更新し続ける必要がある。

 企業は安全配慮の義務に沿って、従業員に避難や帰宅、残留を指示する立場にある。判断やそのタイミングを誤れば、命も左右しかねない。

 特に留意すべきなのは、避難を指示する側とされる側の上下関係だ。業務命令であれば従業員は背くことはむずかしい。

 在庫、システム、顧客情報など、企業には守りたいものが当然ある。だが、人命に優先されることがあってはならない。

 いざというときに従業員が最善の避難方法をとれるように、あらかじめデータのバックアップ、代替拠点などの計画づくりを急ぐべきだ。

 企業が緊急事態のときも操業や活動を続けるための備えは、国際的に事業継続計画(BCP)と呼ばれている。

 災害やテロ、疫病など様々なリスクを徹底評価し、周到な準備をしておくことは、経営も従業員も救うことにつながる。

 だが内閣府の調査では、震災後の11年度にBCPをもっているか、その予定とした企業は大企業で7割、中小企業は3社に1社ほどだった。まだまだ十分とは言えない。

 さらに、とりわけ大企業は、従業員を守るだけでは責任を果たしているとはいえまい。

 大災害時は、政府や自治体だけでは対応できない。企業にも地域への貢献が求められる。災害対策基本法も昨年改正され、企業に災害対策への協力を求める規定が加わった。

 一時避難者の受け入れ、備蓄の食べ物や毛布の提供、重機の貸し出しなど、企業だからこそ果たせる役割も大きいはずだ。

 災害に強い国・町づくりのために地域の財界も先頭に立つ。その心構えをもってほしい。