ソビエト連邦末期、当時のジョージ・H・W・ブッシュ米大統領はウクライナの首都キエフで講演し、ウクライナのナショナリストにモスクワ政府を挑発するなと訴えた。米国の保守主義者はこれを「チキンキエフ・スピーチ」(※)とからかった。
衆目の認める融和主義者であるバラク・オバマ大統領も今、“チキンキエフ”をどう料理するか、決断を迫られている。虎視眈々(たんたん)とニワトリを狙うキツネのように悪賢いプーチン大統領に立ち向かうことができるのか。
オバマ大統領にそうした意思や能力、ましてや手段があるか定かではない。しかしオバマ政権の前途はこの問題にかかっている。プーチン大統領がかつてのロシア帝国の国境を回復させたいともくろんでいることに疑いの余地はない。オバマ大統領はなんとかそれを阻む方法を見つけなければならない。
それには世界に対して腰の引けたイメージを与えてきたこれまでとはまったく違う、強いオバマ大統領が必要だ。オバマ氏は大統領就任前から、ロシアの失地回復主義者に甘いという批判を受けてきた。2008年大統領選の対立候補であった共和党のジョン・マケイン氏は同年8月にロシアがグルジアに介入したグルジア紛争を例に挙げ、こうした拡大主義は許容できる一線を越えている、と訴えた。
だがマケイン氏のようなタカ派の姿勢を取ろうとしないオバマ氏の消極性のほうが、はるかに米国民の気分に近いものだった。イラクやアフガニスタンでの戦争にうんざりしていた米国民に、オバマ大統領はその終結を約束し、実行した。
■オバマ外交の命運かかる事態
今日の米国民は、他国の問題に関わることに対して当時よりもさらに慎重になっている。しかしロシアがウクライナ南部のクリミア半島を占領すれば、状況は劇的に変わってくる。米国内での国づくり、イランとの核合意、中東諸国の平和、アジアへのシフトなど、オバマ大統領が目指していることの成否は、すべてプーチン大統領にどう対応するかにかかっている。
オバマ氏は大統領に就任した当初、米ロ関係の「リセット」を提案した。いまやこのもくろみは見る影もない。大方の人がそうであるようにオバマ氏も、現状を壊すことをいとわないプーチン氏の姿勢を常に見くびってきた。
※=「チキンキエフ」はウクライナの名物料理。チキンは英語で臆病者を指す
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