あの夏、いちばんうるさいミマタ。
俺はもう困り果ててしまいました。
だって、ミマタさんときたら、
いきなり子供の頃の夢だったタイガー・ジェット・シン戦を実現させるだなんてワケのわからないことを言い出したと思ったら、
「アル君も誰か呼んで闘わないと“男”じゃないでしょ!」
なんて断言するんだもん。
なんでよ!
何でそんなことで“男”かどうか決められなきゃならないのよ!
俺、別に子供の頃に戦いたかった人なんていねーもん。
とりあえずそう心の中で一旦突っ込んでから、
「はい、じゃー僕は子供の頃にリッキー・スティンボートが
好きだったので、いつか日本に呼んで闘いたいと思います」
と
心にもないことを答えたところ、
「あっごめん、メールが入ったわ」
そう言うと携帯のメール見ながらニヤニヤしだすミマタさんなのです。
自分が言いたいことだけ言ったら、
人の言うことなんてまるで聞いてない。
それがミマタさんなんです。
でも、いったい誰からのメールなんだろ・・・。
なかなかインタビューを再開しません。
頼むよ、あと30分で終電なくなっちゃうから、
早いとこ切り上げたいんだけどな・・・・
・・・・・・。
待つこと20分。
「アル君、僕の恋のレディーからのメールなんだけど、
返事どう返したらいい? ムフフフフ」
そう言って携帯を僕にチラッと見せると、
また一人ニヤニヤしだしました。
そんなこと、知るかっての!
ミマタさん、もう今日はこの辺で切り上げて
僕は帰ってよろしいでしょうか?
そんな思いで腰を上げようとしたら、
「アル君、クロマニヨンズの曲って聴きました?」
おっと、いきなり何言うのかと思ったら、
今一番ホットなバンドの名前だしてきたぞ。
ザ・クロマニヨンズの話なら、
僕だってまだ帰らずに付き合いますよ、ミマタさん!
ちなみに、ザ・クロマニヨンズとはハイロウズを解散した
ヒロトとマーシーがこの夏に始動した
最高にいかしたバンドなのです。
これがほんと最高なんです!
「クロマニヨンズの新曲で『弾丸ロック』ってあるだろ」
「はい、最高じゃないですか!」
「あの曲のオープニングでサイレンが鳴ってるわけ」
「はい!空襲警報みたいなサイレンが鳴ってから、
曲のイントロが始まりますよね」
「そうです。
で、僕、今度日テレの番組でレスリングするわけ。
芸人同士がレスリングで闘う番組に出るわけ」
「それとクロマニヨンズの『弾丸ロック』となんの関係が
あるんですか?」
「ムフッ。そこでですよ!」
「何がそこでなんですか?」
「試合の前の入場シーンで鳴らしますよ!
『弾丸ロック』を入場曲に使います!
サイレンが鳴り響いて曲がかかる中、ミマタが入場します。
ゴールデン番組で初めてクロマニヨンズが流れることになります!
ヒロトも喜んでくれますよ」
・・・・・・。
なんだ、そんなことか・・・。
きっと、ヒロトさんはそんなことどうでもいいと思うだろうし、
イマイチ盛り上がりのない話だったな・・・
ほんと、早く切り上げて帰ろうっと。
「ミマタさん、時間も時間なんでそろそろいいですか?」
「おう、そうか、もうこんな時間か。
お疲れさん!」
あれれれれれ・・・!?
なんか、あっさりと帰れそうじゃん。
いつものミマタさんらしくないな。
いつもなら必ず、
「いいよ~、もう少しいろよぉ~!
ファミスタ、もう2試合やってから帰れよ」
なんて引き止めるのに。
今日はやけにあっさりだな。
と、思ったら、
「アル君、この原稿出来たら湘南に送ってください」
だって。
何言ってんだろ、この人・・・。
「へっ? 湘南ですか?」
「はい。湘南です。
僕、明日から湘南の別荘で残り少ない夏を優雅に満喫してますから」
「別荘?」
「はい。明日から僕、ユリオカ超特Qと湘南の別荘で
一泊二日のバカンスですから」
「ユリオカさんとですか?」
「ユリオカって大竹まことさんの弟子じゃない」
うん。
意外と知られてませんが、そうなんですよね。
「大竹まことさんが湘南に別荘持ってるんですよ。
それでいつでも使っていいぞってユリオカが言われてて、
だから明日から僕が使わせてもらうんです」
何が、“だから”なのよ!
なんで弟子でもないミマタさんが使うのよ!
ちょっぴり心配なので聞いてみることにしました。
「でも、それってダイジョブなんですか?」
「ええ。ユリオカも最初渋ってたわけ。ですから僕、言いました。
だからお前はダメなんだ、師匠の別荘を黙って使うぐらいの
度胸がないとこの世界じゃやってけないぞ!って」
そんな度胸、なくても十分やってけると思います。
「いいえ、アル君、違います。
大竹さんに黙って別荘の鍵を取ってくるぐらいの
男じゃないと、売れませんって!
芸能界ってのはそういう世界なんです」
めちゃくちゃな論理だな・・・。
ミマタさん、そんな図々しい弟子なら、逆に売れない気がします!
そんな俺の意見などどこ吹く風。
ミマタさんの心はすでに湘南へと行っているようです。
「いやあ、明日から湘南の別荘か~。
天気悪かったらイヤだな~」
天気も何もありませんよ!
人の別荘じゃないですか!
それも芸能界の大先輩の別荘じゃないですか!
「ムフフ。別荘で優雅に読書でもするかな」
絶対しないと思います。
「あっ、いい機会だから、
読みかけだった吉川英治の『宮本武蔵』を4巻ばかし持って行って、
一気に読んじゃおうかな」
誓ってもいいです。
ミマタさん絶対読みません!
っていうか、東京にいたって一冊完読するのに一週間かかる人が、
なんで1泊二日で4巻も一気に読めるのよ。
持っていくだけ無駄ですって。
荷物になるだけですって。
「あっ、そうだ。アル君、知ってるかな?
ウフフ。アル君はきっとまだ読んでないんじゃないかな?」
そう言って嬉しそうに出してきた本が、
リリー・フランキーの『東京タワー』でした・・・
知ってるも何も大ベストセラーだし、
もちろん、かなり前に読んでますし、
今じゃドラマが放送されるって言われてる本ですよ。
多分、ミマタさん以外みんな知ってますって。
「これも持って行って読じゃおうかな。ムフフフフ」
いったい、どうやって
一泊二日で宮本武蔵4冊と東京タワーを読むのよ!
いつからそんな速読家になったのよ!
「海入って、体焼いて本読んで、いい夏だね」
ちなみに明日の天気予報は雨になってます。
「アル君も別荘とか行ってリフレッシュしないとダメよ。
たまには、ハッピーな時間つくらないとパンクするよ、ホント。
アー・ユー・ハッピー?ムフフフフ・・・」
なにがアー・ユー・ハッピーよ!
何度も書くけど、
人の別荘を借りるだけじゃないですか!
それも、ユリオカさんに無理強いさせて。
バカバカしくなってきたから早く帰ろっと。
「それじゃミマタさん、楽しんで来てください」
「OK、それじゃ原稿は湘南に送ってください」
「はい」
でも、湘南に送るって、
ミマタさんパソコン持ってないじゃん。
プリントアウトしてファックスで送るにしても、
番号も知らないし・・・。
ミマタさん、俺がどうやって、どの手段で原稿を送ると思ってるんだろう・・・。
(インタビュー&構成:アル北郷 編集長:どっこいサブ)