2011年08月04日 (木)

【解説】福島第一原発 廃炉・解体をどう進めるか(科文・大崎記者)


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東京電力福島第一原子力発電所の事故で、あくまで事故収束後の話ですが、原子炉の廃炉・解体をどう進めるかの検討が、きのう始まりました。
参考になると考えられるのが、32年前に起きたアメリカのスリーマイル島原発事故です。
しかし専門家が指摘したのは、スリーマイルよりもはるかに厳しい現実でした。
科文・大崎要一郎記者の解説です。

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【はじまった"廃炉"の検討】

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国の原子力委員会に設置された専門家の会合で、きのう福島第一原発の廃炉に向けた工程表の検討が始まりました。 工程表は遅くとも来年1月までにとりまとめられ、それをもとに実際の作業が進められる見込みです。

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【参考にしたのは32年前の"悪夢"】

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部会で参考にされたのが、32年前に起きたアメリカ・スリーマイル島の原発事故です。
スリーマイル島原発事故では、商業用の原発としては世界で初めて燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きました。

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原子炉の冷却水が失われ、核燃料が露出。およそ70%が溶けて、一部が原子炉の底に落下しました。
福島第一原発でも同じくメルトダウンが起きていて、その復旧作業には共通する部分が数多くあると考えられているため、参考とされているのです。

 

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そのスリーマイル島原発事故の復旧作業は、どのように行われたか。
スリーマイル島原発で原子炉の中に初めてカメラが入ったのは事故の3年後
ようやく溶けた燃料の様子が明らかになっました。

しかし、建物内の放射性物質を取り除く作業に時間がかかり、燃料の取り出しに着手したのは6年後

さらに最終的に全ての燃料を取り出せたのは、事故から実に11年もたっていました。


【福島ではどう進むのか】

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では福島第一原発ではどう進められるのか。
国や東京電力、メーカーなどが検討していた福島第一原発の廃炉に向けた素案はこうです。

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2014年度から使用済み燃料プールに保管されている核燃料の取り出しを開始。

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そして、炉心から燃料を取り出す作業が始まるのは、10年後の2021年度

燃料の取り出しを終え、原子炉建屋を解体、撤去するまでには

数十年に及ぶと想定されています。

その中で最も難しい工程と考えられているのが、10年後に始めるとしている

炉心からの燃料の取り出し」です。

 

【"手探り"でおこなわれた燃料の取り出し】

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スリーマイル島事故ではメルトダウンを起こした原子炉がどうなっているのか把握することから始まりました。

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原子炉の中にカメラを入れて、燃料の状態がわかるまでに3年
炉心は原型をとどめないほど破壊されていました。

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そして、容器の底には溶け落ちた燃料が塊に。

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その後、燃料を取り出すための専用の機械の開発などで時間を費やし、すべてが取り出された時には事故から11年がたっていました。

スリーマイル島事故でも難航した「燃料の取り出し」、しかし福島第一原発での困難さは、その比ではないと専門家の間では指摘されています。

 

【厳しい福島第一原発の状況】

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福島第一原発では、メルトダウンを起こした燃料は原子炉の圧力容器とその外側の格納容器に穴をあけ、高濃度の汚染水とともに外部に漏れ出ているとみられますが詳しい状況はわかっていません。

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さらに原子炉に穴があいて、外側の格納容器に燃料が漏れている可能性が高くなっています。そして、その格納容器も損傷しているとみられています。
燃料の取り出しは通常、水の中で行いますが、格納容器の穴をふさぐことができるかは、まったくの未知数です。作業を始めれば、なお多くの課題が出てくることも予想されます。

そのうえ福島第一原発ではメルトダウンを起こしている原子炉は、3基もあります。

つまりスリーマイルでは燃料は圧力容器の中にあるのがわかっていましたが、福島はどこにあるのかがわからない、圧力容器にぜんぶあるのかどうかはっきりとわからない、そこが一番大きな違いだとされています。

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さらにもうひとつの課題は、「汚染の深刻さ」です。福島第一原発では、汚染マップそのものがまだありません。
現在、およそ10万トンもの高濃度の汚染水が貯まっています。

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その上、施設内で高い放射線を放つ場所が今も相次いで見つかっています。

数々の困難が予想される廃炉に向けた作業。いったい最終的に原発が解体されるには何年かかるのかと心配になりますが、残念ながら数十年単位で考えなければなりません。

事故の収束とともに、その後の長期にわたる「廃炉への道筋」を1日でも1年でも早くつけて住民の不安の解消と国民の安心につなげることが必要です。

投稿者:かぶん |  投稿時間:14:47  | カテゴリ:ニュース解説
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「1号機では7月29日に格納容器内の気体の放射線量は1立方センチあたり約37ベクレルと、想定の千分の1程度」だったことが報道されると、ネットの世界では、溶融した核燃料は、ほとんど、原子炉建屋の基底を貫通して、地中にもぐりこんだとの見方をする人が多い。いずれにしても、未来永劫、閉じ込めることになる?今急ぐべきことは、地下水拡散による海洋汚染防止対策ではないか?

投稿日時:2011年08月05日 21:26 | 前田 徹

いつも詳しい記事をUPして頂き、ありがとうございます。
未知数のところが多く、どれほどの深刻さなのかわかっていないんですね。
引き続き、新しい情報が入りましたらお願いします。
NHKがやっぱりたよりです。
昔のチェルノブイリの放送も再放送してほしいです。

先日の土曜日にNHKスペシャルをみました。
広島に原爆を落とされても、普通の爆弾といっていた上層部の話をきくと、今回の原発事故の場合とにていると思いました。
日本は何も変わっていないと思いました。

投稿日時:2011年08月09日 23:45 | gonnbe

私を含めて、そろそろ事態の深刻さを忘れかけてきている人も多いと思いますので、こうしたまとめ記事はたいへん有益だと思います。ありがとうございます。
それにしても。
当初、「せいぜいスリーマイル並み」と断言しておられた専門家の皆様、こうした記事をお読みになって、何かご発言を訂正されるなり、アクションをとられているのでしょうか。それとも読んでないのかな。
「コストが安い原発」も聞き飽きましたが、これからいくらかかるかもわからない、というか「何をする必要があるのかすら判らない」笑ってしまうような現実を前にして、まだそういうこと言うかと思ってしまいます。
いずれにせよ、私を含め国民も目を反らしてないでこの現実を見ていくべきだと思いますので、今後もガンガンこうした内容で頑張ってくださいNHKのみなさん。

投稿日時:2011年08月11日 22:19 | 立花

恐れていたことが現実になりました。リアクターの中に閉じ込めて問題は先送りできるコントロールできるとしていた人たちの思惑は残念ながら外れてしまいました。費用を含めて忘れやすい国民にきちんとフォロー情報の提供を続けてもらいたいものです。

投稿日時:2011年08月14日 16:19 | 中川修治

私も「コストが安い原発」は聞き飽きました。メンテナンス、リサイクル、廃炉までのコストが入っておらず一番コストの高い電気じゃないでしょうか。政府、マスコミは一キロ当たり一番安いと言っているが。
すべてのコストを合算して発表してほしいいですね。多少コスト高でも未来に向けて安全なエネルギーを選択すべきじゃないでしょうか。

投稿日時:2011年10月27日 09:21 | 島田

深刻な状況ですが、起きてしまった事実は変えられないので、現実を直視するしかないと思います。
ポイントは現実を直視するという意味ですが、ドライに言うと費用の負担をする、という意味でしょう。
孫子の世代に影響しない為にも、私たちの世代で代償を払っていくべきだと思います。
政治家と電力会社に騙されたとは言っても、原発の恩恵を受けたのは私たちの世代ですから。
代償を払う為にも、、高齢者は年金のカット、消費者は消費税のアップ、納税者は所得税のアップを実践する必要があります。
私たちの世代が、お金を払う事が現実を直視する事であって、政治家、電力会社の隠蔽を云々騒ぐ事が現実の直視じゃないんでしょう。

投稿日時:2011年11月09日 16:27 | 山本

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