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紺色のひと

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2014/03/03 (Mon)

[]米を煮て食うだけの日々

仕事が繁忙期を迎え、家に帰る時間が遅くなる日が続く。土日を費やしてもやることはまるで減らず、娘マチ子の顔は朝起きて保育園に連れていくまでの間にしか見られなくて、妻から聞く話で言葉の上達に驚いたりする。マチ子の寝かしつけのまま妻が寝落ちてしまうこともしょっちゅうで、僕が24時近くに家に着いても部屋が暗い。

もちろんそれについて何かを言うつもりはないし、妻には迷惑をかけてばかりだと思っているのだけれど、ともかく僕がここで書きたいのはそういうことではなくて、これまで妻が用意してくれることの多かった晩ご飯を、たまに自分の分だけ用意することが出てきた、ということだ。そういうとき、僕はたいてい、「夜遅くだから食べすぎないように」「消化のいいものを」などと誰もいない台所でつぶやきながら、鉄のフライパンに油をひき、米を炒め始める。


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米を炒めて、そして煮る。いわゆるひとつのリゾットだ。しかし僕がつくるリゾットは何かのレシピに由来しているわけではない。10年くらい前からの、いわゆるひとつの「学生時代の貧乏飯」のひとつなのだった。

田舎で大学生活を送っていたせいか、お金がなかったわりに食べるものに不自由した記憶はまるでなくて、むしろ「月一万円の食費でいかに毎日腹いっぱい食うか」みたいなことに情熱を燃やしていたのだけれど、寮で生活するようになってからは晩ご飯が出るようになったので、あまり積極的に自炊をすることもなくなっていった。朝は食べず、昼は学食で170円のうどんに30円のかきあげを乗せ、夕方寮に戻ってから少し早めの寮食を食べ、小腹が空いたあたりでいつもの連中と少し飲み、部屋に戻って眠る、という繰り返しの食生活だった。週に4回の部活動もやっていたし、4年生になってからは寮のトレーニング部屋でサンドバッグを叩いたりもしていたから、実に健康的な暮らしだったと思う。


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大学寮で暮らしているのだから大学生なわけで、4年生になった僕の大学での主な居場所は研究室になった。同期が7人くらい出入りして、部屋の隅に蛇口とひと口だけのコンロがあった。講義が終わった夕方から晩ご飯の時間くらいまではみんなそこにいるのだけれど、夜になるとひとが減った。僕も夕方になるとさっさと寮に帰る組で、それはただお腹が空いていたからなのだけれど、ゼミの前夜だとか、それから夏が終わり、秋が深まって卒論シーズンになると、晩ご飯を寮で食べてから、また大学に戻って机に向かうようになった。


ここでやっとリゾットの話になる。



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今ほど徹夜が苦ではなかったあの頃、僕は夜中にお腹が空くと、コンロに鉄のフライパンを乗せ、油をひいて、友人の実家から送られてきた大きな袋から米を掬った。ちょうど一合、すりきりだ。いつか誰かに、「リゾットは米を炒めてから煮るんだよ」と聞いたような気がする。炊いた米を煮て味付けをするものではないのだ、と認識した僕は、そのまま正直に米を炒め、少し水を足して煮、そしてまた水を足して煮、最後に塩少しで味をつけた。足した水にコンソメでも入れればまだもう少しまともな味になったのだろうけれど、僕は頑なにそれを拒んで、ただ米を炒め、煮て食うだけの夜を幾度も過ごしたのだった。一度だけ後輩に食わせてみたことがあったけれど、アウトドア生活に長けた彼は正直に「薄い鍋で炊いて失敗した米みたいっすね」と言った。その通りの味だったのだ。

当時は生活の写真をハーフカメラで撮っていて、デジカメはもっぱら川に持ち出していたので、データとしては見返すほど残っていないのだけれど、机の上に飾っていた太極拳のおじいさんの陶器の置物のこととか、試薬びんで飼っていたトウヨシノボリの顔とか、いろいろなことを思い出せる。


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話は現在に戻り、僕はまたあのときのリゾットめいたものを作り始めている。米を炒め、水を足して、煮て、また水を加え、煮て、やわらかくなったところで火を止める。さすがに毎日塩と水だけでは仕方ないので、オリーブオイルとコンソメにしてみたり、ごま油と中華スープのもとにしてみたりはするのだけれど、結局僕がやっているのはあの頃の繰り返しなだけで、当時の生活の残り火を必死で扇ぎたてるように、断絶を前提にした記憶を必死で掬い上げて、体を動かしているのだ。

扉の向こうで眠る妻と娘のことをたまに思い出しながら、僕は今夜も米を煮ている。

春にはまだもう少し届かない。



D

のんびり行くのはかったるいしさ

飛ばしてくのはなんだかんだで

疲れちまうって

それでも自分のペース

わかんないで知らないで

人が気になってスカしてるから

ちょっと味気ない部屋

チューニングの狂ったギター

すましてるだけで腹の虫は置きだしてくるものさ

スネオヘアー「のびたテープ」

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