ウクライナ:オバマ政権最大の外交的試練 露クリミア介入
毎日新聞 2014年03月03日 19時48分(最終更新 03月03日 22時31分)
【ワシントン白戸圭一】ロシアによるウクライナ南部クリミア半島への軍事介入は、オバマ米政権にとり2009年1月の政権発足以来最大の外交的試練だ。ロシア包囲網構築に失敗すれば指導力と威信の低下は決定的。「米国は頼れない」との認識が広まれば世界の安保環境は不安定化し、米露間の「新冷戦」とでも呼ぶべき状況が長期化しそうだ。
「弱い声明が侵略を招くことは歴史が証明している」。米有力シンクタンク・ヘリテージ財団のジム・デミント所長は1日、対露制裁網構築の主導をオバマ大統領に求める異例の声明を出した。各国への影響力が減衰したことへの強い危機感の反映だ。
オバマ大統領はシリア内戦対応で化学兵器使用を「レッドライン(越えてはならない一線)」と繰り返したが、使用確認後は軍事介入の是非で迷走。最後はロシアのアサド政権への影響力に頼った。
仲介する中東和平交渉は停滞し、イスラエルやサウジアラビアではオバマ政権のイラン接近への不満が激化。アジア太平洋重視戦略も英軍事専門誌「ジェーンズ・デフェンス・ウィークリー」は「意味不明」と批判する。
プーチン露大統領は今回、オバマ大統領が「軍事介入には代償が伴う」と警告した翌日に対ウクライナ武力行使容認をロシア上院に求めており、オバマ大統領のメンツは丸つぶれだ。
一方、米国のロバート・ゲーツ元国防長官は2日、ロイター通信に「プーチン氏はシリア化学兵器問題でもイラン核問題でも必要」と述べ、重要外交分野での米国の「ロシア頼み」の側面を指摘した。ウクライナ対応でロシアに振り回されているとの印象の拡大は、中国などの挑発的外交姿勢につながりかねない。