March 3, 2014
スロットマシンをやっていて目が揃うことはまずない。だが、私たちの脳はその様子を思い描くのが好きなようだ。イングランドのエクセター大学とウェールズのスウォンジー大学の研究者からなるチームが行った脳波活動の研究の結果、ギャンブル好きの人の脳が、あと1歩というところで負けてしまったときに、実際に大当たりしたときとほとんど変わらない強い反応を示すことが明らかになった。
「今回の研究結果は、ギャンブルであと一歩というところで負けてしまったときに、ヒトの脳の報酬に関する領域で過剰な反応が見られることを示す初めてのものだ」と、エクセター大学の心理学者で今回の論文の執筆者の1人であるナタリア・ローレンス(Natalia Lawrence)氏は話す。「あと一歩という経験をした後は、脳が強い影響を受け、ギャンブ
ルを続けたいという欲求が強まるのではないかと考えられる」。
今回の発見は、ギャンブルにのめりこみやすい人を見極めるのに役立つだけでなく、ギャンブル依存症治療の有効性を評価する方法としても使えるのではないかと期待される。
「今回の研究結果は、ギャンブルであと一歩というところで負けてしまったときに、ヒトの脳の報酬に関する領域で過剰な反応が見られることを示す初めてのものだ」と、エクセター大学の心理学者で今回の論文の執筆者の1人であるナタリア・ローレンス(Natalia Lawrence)氏は話す。「あと一歩という経験をした後は、脳が強い影響を受け、ギャンブ
ルを続けたいという欲求が強まるのではないかと考えられる」。
今回の発見は、ギャンブルにのめりこみやすい人を見極めるのに役立つだけでなく、ギャンブル依存症治療の有効性を評価する方法としても使えるのではないかと期待される。
調査では、ギャンブル好きの男性(問題を抱えている人と抱えていない人の両方)を集め、スロットマシンで勝ったとき、負けたとき、あと一歩というところで負けたときの脳の電気活動を測定した。その結果、スロットマシンであと一歩で目が揃わなかったとき、ギャンブル依存症の人の脳では、ギャンブルでの勝ち負けとの関連が最も深いシータ波と呼ばれる脳波の電気活動が、大当たりしたときとほぼ同じくらい高い値を示すことが分か
った。ナショナル ジオグラフィックでは、今回の調査についてローレンス氏に話を聞いた。
◆調査対象を男性に限定したのはなぜですか?
女性よりも男性のほうが病的なギャンブル依存に陥りやすい傾向にあります。男性の被験者のみを集めたのはそのためです。また、複数の脳画像の研究により、男性と女性では報酬の処理に一部違いがあることが分かっています。例えば、男性は金銭的報酬により敏感に反応するのに対し、女性は社会的報酬や食物報酬に敏感に反応する傾向があるようです。
◆勝ったときとあと1歩というところで負けたときの脳波には顕著な違いが見られましたか?
今回調べた全ての脳領域で、脳波の値の平均値は、勝ったときが最も高く、あと1歩というところで負けたときがその次、負けたときが最も低くなっています。これは、ギャンブルをする人自身が感じる“勝利との距離”と一致しています。言うまでもなく、彼らは勝ちを最も勝利までの距離が短いと感じ、以下、あと1歩というところで負け、負けと続きます。つまり、あと1歩というところで負けた場合、たとえ負けてしまったとしても、その結果を“より勝利に近い”負けと判断するのです。脳のシータ波の動きはそのパターンを反映したものとなっています。
◆シータ波とは具体的にどのようなものですか? また、なぜそれがギャンブルと関わっていることが分かるのですか?
シータ波とは、動物の脳の海馬において記憶形成や行動決定に関わっていると考えられるニューロンの振動活動であり、これらの目的を達成するためにほかの高周波の脳波とやり取りすることが分かっています。しかし、ヒトの脳での重要性についてはあまり解明されていません。ヒトの神経生理学的プロセスにおけるシータ波の役目についての完全な理論は、今のところ存在しません。しかし、ギャンブルの勝ち負けの評価に関する半自動的
な処理がシータ波に少なくとも部分的に反映されるという説を、私たちは提唱しています。
PHOTOGRAPH BY MARK WELSH, DAILY HERALD/AP