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東日本大震災で地震学は何の役にも立たなかった!

「ハザードマップ」「地震学」は住まい選びの役に立たない -命が助かる家・土地、4つの鉄則【1】- プレジデントオンライン(2014年3月3日10時45分)

地震の専門家から震災後に飛び交った「想定外」という言葉。震災前の安全神話はもろくも崩れ去った。大災害にも負けない住まい選びに必要な知識を徹底的に検証する!

「あっ地震だ、と思って、とっさに家具を必死で押さえたんです。おかげで(家具は)倒れずにすみました」

東日本大震災の際に東京都内の自宅で家具を守ったことを、とあるご婦人は、私に自慢げに語った。

しかし、よく考えていただきたい。地震で揺れているのは家具だけでなく、自分自身も同じく揺れている。家具が倒れない程度の地震であったから倒れなかっただけで、家具が倒れるほどの揺れならば自分もろとも倒れてしまう。

大切な家具を守ろうとすることは非常に危険で、地震発生時にまずしなければならないのは、自分の身の安全を確保することである。怪我をしては避難もできなくなってしまう。防災の知識は、間違って身につけるとかえって危険なのだ。とりわけ個人にとってハザードマップは見方を間違えれば被害を拡大させる可能性がある。

東京都では1975年からおおむね5年ごとに「地震に関する地域危険度測定調査」を実施している。直近では2008年に第6回が公表されているが、内容は都内の各町丁目ごとに「建物倒壊危険度」「火災危険度」を5段階で相対評価し、これらを合わせて「総合危険度」を判定するものだ。「建物倒壊危険度」は、建物の棟数の多寡・構造の耐震性・建築年代、そして地盤の特性・液状化の可能性を考慮して判定されている。

■危険度4122位で死者が発生の理由

危険度が一番高いのは、墨田区京島2丁目で1ヘクタール当たりの倒壊数が35.15棟と30棟を超えている。次いで、2位・台東区竜泉3丁目、3位・墨田区墨田3丁目、4位・墨田区東駒形2丁目、5位・台東区浅草5丁目と続く。

しかし、この判定は特定の震源地を想定せずに一律に30カインという地震動の強さを与えた場合(地盤条件が悪い所で震度6強)の結果であり、震源の位置や揺れの強さによってほかの地域でも大きな被害が出る可能性を忘れてはならない。

現に、東日本大震災では東京都内でも九段会館大ホールにて天井の一部が落下し2名の死者が出ている。九段会館のある千代田区九段南1丁目の「建物倒壊危険度」は、全5099町丁目中、4122位だった。東京都以外の自治体でも同様のことが起きている。

読者の皆さんは自治体が発行するハザードマップをご覧になったことがあるだろうか。国土地理院では、日本の自治体が発行するハザードマップをポータルサイトで公表している(http://disapotal.gsi.go.jp/)。このサイトによると、洪水ハザードマップが1173の自治体、内水が147、高潮が101、津波が357、土砂災害が702、火山が78と全国の自治体で発行されている。

東京都板橋区でも荒川や中小河川が氾濫した際の「洪水ハザードマップ」を05年に発行しており、地図上に一目でどこまで浸水するかがわかるように色分けされ、視覚的に訴えられている。しかし、このマップでは集中豪雨による内水氾濫まで想定されておらず、2010年の「ゲリラ豪雨」による被害には役立たなかったのだ。

東日本大震災により津波被害を受けた自治体でも「津波ハザードマップ」が公表されている。これらのマップは、土地の高低や河川への遡及を考慮して、地図上にどこまで津波がくるかを線引きしたものであり、津波到達予想地域の住民には大きなインパクトを与えるものである。しかし「洪水ハザードマップ」で津波がこないとされた地域の住民は、避難する意識が薄らいでしまった可能性がある。

防災科学技術研究所客員研究員の水谷武司氏は語る。

「ハザードマップは地域の危険性を示すものではありません。ここで津波が止まる、洪水がここまでくるというものではないのです。これは仮定に基づいた情報であり、計算の条件が変われば結果はまったく違うわけです。ハザードマップでは安全と示されている『甘い想定』を信じて、ああここまで逃げればいいんだ、と10メートルの所に行って安心したら命取りです。

東日本大震災では『想定外』のことがたくさん起きました。ハザードマップや『地震学』といったものが、防災にとってまったく役に立たないばかりか、それを信じることがかえって危険だということが改めて示されたのです」

そもそもハザードマップは、行政が防災計画の予算を配分する指標にするものにすぎない。都内各自治体が作成している「地域防災計画」も、東京都が想定している「震源が東京湾北部、マグニチュード7.3。震源の深さ約30から50キロ。冬の午後6時、風速15メートル」(平成18年の都被害想定報告書)などから仮定して対策が立てられている。しかし、それがあくまでも一定の条件下での目安にすぎないことを、私たちは自覚しなければならない。

今後、より安全な住まいを探す際には、もう一度防災についての知識を問い直す必要がある。

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水谷武司
1938年、名古屋市生まれ。60年京都大学経済学部卒業。66年東京都立大学理学部地理学科卒業。国立防災科学技術センター災害研究室長、千葉大学理学部教授を経て、現在、防災科学技術研究所客員研究員。著書に『自然災害と防災の科学』など。

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(地域防災ジャーナリスト 高沢一基 撮影=奥谷 仁 写真=AFLO)

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