3月2日、ロシアのプーチン大統領がウクライナのロシア系住民の保護を理由に同国に軍事介入する方針を表明したことを受け、ウクライナは戦闘準備態勢に入った。写真はロシア軍車両。クリミア半島のバラクラバの検問所付近1日で撮影(2014年 ロイター/Baz Ratner)
[キエフ/バラクラバ(ウクライナ) 2日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領がウクライナのロシア系住民の保護を理由に同国に軍事介入する方針を表明し、ウクライナは2日、戦闘準備態勢に入った。
米国政府はロシアの行動を非難、経済制裁を検討すると警告した。
プーチン大統領は、ウクライナのロシア系住民を保護するための軍事介入について上院に承認を求め、上院は1日にこれを承認した。プーチン大統領はオバマ米大統領との電話協議でロシアの国益と民族を保護する権利を主張、ウクライナへの軍事介入に反対する欧米諸国の要求をはねつけた。
ウクライナのヤツェニュク首相は「これは脅しではない。わが国への宣戦布告だ」と英語で語った。
ロシア軍はすでに、戦闘はしていないものの海軍基地のあるウクライナ南端のクリミア半島に部隊を展開し、事実上支配下に置いている。ロシア軍は2日、半島内にあるウクライナ軍の複数の前哨基地を包囲し、部隊に武装解除を要求。ウクライナ軍の一部が抵抗し、にらみ合いとなったが、武力行使には至らなかった。
ロシア系住民が大半を占めるクリミア半島をロシア軍が支配する一方、ロシア語を母国語とするウクライナ系住民が多く暮らすウクライナ東部では2日も親ロシア派の活動家によるデモが続き、ロシアに保護を要求するなど、今後の展開が注目されている。
ロシアはウクライナとの国境沿いで15万人規模の軍事演習を実施したが、今のところ演習をした部隊は国境を越えていない。
ウクライナ政府は、親ロシア派のデモを実行するためロシアから住民数百人が自国内に送り込まれたと主張している。
ウクライナの安全保障会議は、即座に警戒態勢に入るよう全軍に指示したが、ウクライナ軍は規模や装備の面でロシアに大きく劣るとみられている。
ウクライナ国防省は予備役の召集を実施する予定で、基本的に40歳までの男性全員が徴兵される見通し。ただ、新たに招集される兵士向けの銃や制服の確保は難しいとみられる。
米国のケリー国務長官は、ロシアの動きを「信じがたい侵略行為」だと強く非難し、経済制裁を検討すると警告した。長官はCBSの番組で「理由をでっち上げて他国を侵略する19世紀のような行為を21世紀にすべきでない」と述べた。
ケリー長官はまた、ロシア政府はまだ危機解消に向けた「正しい選択」をすることができると指摘。そうしない場合、主要8カ国(G8)やその他の国がロシアに経済制裁を科す用意があると述べた。長官は「これらの国はロシアを経済的に孤立させる用意がある。ルーブルはすでに下落している。ロシアは大きな経済的問題を抱えている」と述べ、貿易面での制裁のほか、査証(ビザ)発給禁止、資産凍結などの措置に言及した。
アナリストは、ロシアと貿易面でより深い関係を持ち、ロシア産のガスに依存する欧州の主要国による厳しい制裁を伴わなければ、米国による経済制裁がロシアに与える影響は小さいとみている。
ロシア政府の報道官は、ケリー米国務長官の発言に対するコメントを差し控えた。
ウクライナの国連大使は、ロシアがウクライナで軍事行動を拡大した場合、国際社会に支援を要請する方針を明らかにした。
ウクライナの首都キエフの独立広場では数千人が集結し、ロシアの軍事行動に抗議した。
ウクライナ暫定政府は2日、クリミア半島のセバストポリにある海軍本部をロシア側に明け渡したウクライナ海軍のベレゾフスキー総司令官を罷免し、同総司令官を国家反逆罪に問うための捜査に着手した。総司令官は1日に暫定政権が任命したばかり。
ウクライナ政府はすでに、北大西洋条約機構(NATO)、英国と米国に支援を要請している。
NATO大使は2日にブリュッセルで緊急会合を開き、ロシアに対し、軍隊を基地に帰還させ、ウクライナに軍事介入しないよう求めた。ただ、NATOはウクライナの状況に「重大な懸念」を示す一方で、ロシアに圧力をかけるための有効な措置について合意するには至らなかった。
NATOは「われわれは双方に対し、国際社会が仲介する二国間対話と、国連安保理あるいは欧州安全保障協力機構(OSCE)による国際監視団の派遣を通じ、平和的解決を模索するよう求める」とする声明を発表した。
米政府は1日、国連かOSCEによる監視部隊をウクライナに派遣することを提案していた。
*内容を追加します。
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