山中教授に密着取材し、共著も著したサイエンスライターの緑慎也氏も、追試の成否を見るには1年程度は待つ必要があると話す。
「ただ『ネイチャー』のような一流科学誌に載ったから結果に絶対、間違いないかと言うと、残念ながら話はそう単純ではありません。
たとえば'05年に問題となった韓国の黄禹錫教授の事件。ES細胞の研究で『韓国の誇り』と呼ばれた権威ですが、米国『サイエンス』誌に掲載された論文のデータは捏造されたものでした。山中教授も黄教授と面識があり、大変なショックを受け、自分のiPS細胞も疑念を抱かれてはいけないと発表を約半年遅らせて徹底的にデータを取り、公開することにしたのです」
そもそも科学誌側は、独自に再現実験などをすることはなく、あくまで論文を専門家が読んで評価することで、掲載の可否が決まる。
黄教授の事件のように、著者が有名な研究者だったり、小保方さんの論文のように共著者が世界的に名の知られた研究者だったりする場合、チェックする側も「内容も大丈夫だろう」と判断してしまうことがあるという。
一方、沈黙を続けるうちに小保方さんに対する疑惑は拡大。今回の論文と直接関係ない、留学中に発表した論文でも〈画像の使い回しがある〉と指摘され、母校の早稲田大学や留学先のハーバード大学が調査を開始する事態になっている。
急転直下、ピンチに追い込まれた小保方さん。共著者である若山教授を取材した緑氏によると、同教授は、
「『ネイチャー』編集部にも初めは成果を信じてもらえず、何度も論文を書き直した。世間にすぐ受け入れられないことは予期していました。それにこうした実験には文章化できないコツのようなものがある。手順やデータを次第に公開して、世間を説得するしかない」
と冷静に見ているという。かつて若山教授が証明した体細胞クローン技術も再現実験がうまくいかず、なかなか信じてもらえなかった。苦労の人なればこその落ち着きだが、これが最初の大仕事だった小保方さんにとっては、初めての試練だ。
理研もHPのトップに誇らしげに掲げていた小保方さんとSTAP細胞に関する記述を削除するなど、態度を一変させた世間の風の冷たさは容易ならざるものになっている。
いずれにしても、ことここに至っては、疑念を払拭する道は限られている。形勢逆転のためには、ミスの経緯を明かし、必要なデータを公表する、小保方さん自身の言葉や理研の誠実な説明が必要だろう。
「週刊現代」2014年3月8日号より
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