はだしのゲン:中沢さんの詩反核の歌に 加藤登紀子さんら

毎日新聞 2014年03月02日 13時14分(最終更新 03月02日 13時18分)

「はだしのゲン」を加藤登紀子さん(左)に贈る中沢ミサヨさん=東京都千代田区で昨年10月、西本勝撮影
「はだしのゲン」を加藤登紀子さん(左)に贈る中沢ミサヨさん=東京都千代田区で昨年10月、西本勝撮影

 ◇「広島 愛の川」 世界平和への思い込め

 広島原爆を描いた漫画「はだしのゲン」で知られる漫画家、故中沢啓治さん(2012年に73歳で死去)の詩「広島 愛の川」に、作詞作曲家の山本加津彦さん(34)が曲を書き、歌手の加藤登紀子さん(70)が歌うことになった。シャンソンが好きだった中沢さんのために妻ミサヨさん(71)が望み、登紀子さんも「中沢さんが残した唯一の詩。大事にしたい」と引き受けた。原爆への怒りと世界平和への思いを込めて、今夏からステージで歌い継がれる。

 きっかけは、AKB48やJUJU、東方神起らに楽曲を提供してきた山本さんが毎日新聞の記事(2013年6月)で「広島 愛の川」の一部を目にしたことだった。

 愛する我が子に頬(ほお)ずりし

 姿川面に写す日々

 誓おうよ川に向(むか)って

 怒り、悲しみ、優しさを

 メロディーが浮かび、曲を作りたいと思った。だが、ためらいもあった。「大阪出身だし、親戚に被爆者がいるわけでもない。作っていいのか……」

 小学校で読んだ「ゲン」を読み返し、内容の深さに改めて感動した。ミサヨさんに手紙を出し、詩の全文を見せてもらった。詩は晩年に幼なじみから「広島の歌を作って」と頼まれて書いたものだった。ミサヨさんは「歌にするには短くて、言葉が足りないのでは」と心配した。だが山本さんは「怒り、悲しみの次に『優しさを』とあり、そこがテーマ。苦しみを味わった中沢さんだからこそ書けた詩」と手を加えずに作ることを提案した。

 ミサヨさんは「原爆に高い声は合わない。低い声で一言一言、かみしめるように歌ってもらいたい」と、中沢さんが好きだった登紀子さんに歌ってほしいとの希望を伝えた。

 山本さんは、中沢さんの生家や避難先のあった広島の街を歩き、構想を練った。8月6日も広島で過ごし、曲を完成させた。曲を聴いた登紀子さんは「いい歌。歌は生まれるべくして生まれる」と歌うことを快諾した。

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