東日本大震災3年:原発賠償格差に憤り
毎日新聞 2014年03月03日 07時10分
原発ADRの和解案に強制力がないため、東電が回答を留保して手続きを長期化させたり、受け入れを拒否したりするケースもある。
原発20キロ圏外にあり、避難区域指定が遅れた同県飯舘村長泥(ながどろ)地区の約180人が追加賠償を求めた事例では原発ADRが昨年5月、被ばくの不安への慰謝料を1人50万円(妊婦、18歳以下は100万円)とする和解案を示したが、東電は拒否。今年2月になって最終的に受け入れたが、12年7月の住民申し立てから和解成立まで1年半もかかった。被災した東電社員への賠償支払いを求めるADRの和解案を同社が拒否したことも判明している。
「制度的な問題点を指摘して賠償の枠組みを変えるには、訴訟に踏み切るしかない」と、都路地区住民の代理人を務める小海範亮(こかい・のりあき)弁護士は訴訟が増える理由を説明する。
しかし、訴訟には時間や費用が余計にかかるため、原発事故に苦しむ被災者の負担増加が懸念される。原発ADRへの仲介手続き申し立てを支援する「ふくしま原発損害賠償弁護団」事務局長の渡辺真也弁護士は「提訴の動きは加速する可能性がある」としたうえで、「訴訟で被災者の負担を増やさないようにするには、指針で触れられていない事例でも賠償の合理性があるものについてはADRが柔軟に対応し、指針に反映させていく仕組みを作る必要がある」と指摘している。
◇福島第1原発事故の賠償◇
文部科学省が設置した原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が賠償範囲を示す指針を策定し、東京電力が被害者に賠償金を支払う。賠償内容に納得できない場合は、原賠審の下部組織である原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)に和解の仲介を申し立てるか、裁判所に提訴することになる。ADRは英語の「AlternativeDisputeResolution」の略で「裁判外紛争解決手続き」の意味。