東日本大震災3年:原発賠償格差に憤り

毎日新聞 2014年03月03日 07時10分

賠償継続を求める福島県田村市都路地区の住民の訴えに弁護士たちが耳を傾けた=田村市内の仮設住宅で2014年2月23日、五十嵐和大撮影
賠償継続を求める福島県田村市都路地区の住民の訴えに弁護士たちが耳を傾けた=田村市内の仮設住宅で2014年2月23日、五十嵐和大撮影
福島第1原発事故の避難区域ごとの損害賠償の主な差
福島第1原発事故の避難区域ごとの損害賠償の主な差

 東京電力福島第1原発事故による損害賠償の基準を巡り、福島県の被災者たちに不公平感が広がっている。文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が決める賠償の指針で、避難区域ごとに慰謝料などに差が付けられているためだ。問題を解決するための原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)は、原賠審指針に対し柔軟性が乏しく、住民の信頼を失いつつある。賠償が打ち切られた地域では、追加賠償を求めて訴訟に踏み切る動きが相次いでいるが、訴訟自体が被災者の負担になりかねない状況だ。専門家は「賠償問題を円滑に解決する仕組み作りが必要だ」と指摘する。【前谷宏、五十嵐和大】

 ◇「故郷失う苦痛同じ」

 「賠償にできるだけ差が付かないよう国に要望してほしい」。2月12日、福島県いわき市内で開かれた富岡町の町政懇談会で、賠償の「不公平さ」に対する不満が住民から壇上の町幹部に次々と投げつけられた。

 原賠審は昨年12月、帰還困難区域(年間積算放射線量50ミリシーベルト超)▽居住制限区域(同20ミリシーベルト超〜50ミリシーベルト以下)▽避難指示解除準備区域(同20ミリシーベルト以下)−−の避難区域に、精神的苦痛への慰謝料や移転時の土地購入額に差を設定する新たな指針を決めた。大部分が帰還困難区域で占める大熊、双葉両町については例外的に一律金額の賠償が認められた。しかし、富岡町のように3区域が混在する自治体では、賠償格差に対する不公平感が住民に広まる。

 「町民のほとんどは町への帰還をあきらめている。賠償に差があるのは納得できない」。富岡町の懇談会で不満をぶつけた無職、渡辺長一さん(67)は憤りを隠さない。居住制限区域にある自宅は雨漏りで屋根裏が腐り、畳はカビだらけで「住めない状態」だという。

 町民から賠償について相談を受けてきた同町の渡辺和則司法書士(40)は「どの町民も一緒に避難し、同じような苦労を重ねてきた。古里を失う苦痛はみんな同じで、賠償も一律であるべきだ」と話す。

 富岡町は、人口の71%を占める居住制限と避難指示解除準備の2区域について、最短の帰還目標を「2017年4月」とする。だが昨年8月の意向調査で「戻りたい」と答えた町民は12%だけだった。帰還の前提は避難区域指定の解除だが、解除1年後には賠償が打ち切られる。町に帰らなければ、賠償のない状態で避難を続けることになる。

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