(2014年2月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
人民元の対ドル相場は2月に入り急落した〔AFPBB News〕
中国政府は2月最終週、人民元を2005年以来最大の下落に誘導する際、諺にある通り、「1本の矢で2羽の鷲を射抜く」戦略を用いていた。
1羽目の鷲とは、中国当局者の警告にもかかわらず、米ドルに対する人民元の上昇を一方向だけの賭けと見なしてきた外国の投機筋のこと。2羽目の鷲とは、夢から現実に呼び戻されるのを拒んでいる国内の影の金融業者のことだ。
中国政府が獲物として狙う鷲は、どちらも死んでもいなければ致命傷を負ったわけでもないが、予想外の人民元の下落は多くの羽を逆立てたことだろう。さらに重要なことに、当局の対策は、非常に変動の激しい金融システム上のリスクを減らす戦いで、中国が新たな戦線を展開していることを知らせる警告でもある。
シャドーバンキングの抑制策が裏目に
人民元の安値誘導が、中国が金融リスクを管理する上でどのような助けになるのかを明らかにするためには、多少探偵のような推理が必要だ。というのも、ここには、公式、非公式を問わず、ほとんどデータがない金融取引の巨大な未知の領域が関わってくるからだ。
とはいえ、中国政府の政策をますます方向づけているのは、この領域での取引(国内の影の金融や国境をまたぐ非正規の資本移動を含む)だ。
この話は、中国人民銀行が影の金融を服従させることに何度も失敗してきたというところから始まる。2012年12月の文書463の公表以来、当局は、高金利の信託ローンが地方政府の借り手の間でデフォルト(債務不履行)を引き起さないようにすることを主な目的として、影の金融に対する圧力を強めてきた。
だが、公式統計は、そうした努力がまだ実を結んでいないことを示している。信託ローンは1月に3965億元(647億ドル)に達し、前年同月の水準からほぼ2倍に増えた。
だが、こうした失敗よりもっと深刻なのは、人民銀行の政策が裏目に出ている証拠だ。本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の調査サービス、チャイナ・コンフィデンシャルの調査によると、影の金融資産(魅力的なリターンを提供する商品)を一掃しようとする中央銀行の圧力をすり抜けて、市中銀行は、代わりに低利回りの事業債(国有企業が発行する債券)を売却し、企業と地方政府の資金調達コストを引き上げている。