(2014年2月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
マーガレット・サッチャー氏は正しかった。元保守党党首のサッチャー氏は、英国を欧州連合(EU)内にとどめておくためのキャンペーンを繰り広げ、欧州は、さもなくば帝国の終焉とともに閉ざされる世界への窓を開けてくれると宣言した。世界中で英国の国益を守り、促進するために、英国は権威の錨(いかり)と欧州大陸に対する影響力を必要としていた。これは40年前の話だ。
最近では、英国の関与を正当化する役目は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相の肩にかかっている。
EU加盟に関する1975年の国民投票の前に英国議会庶民院(下院)で行われたサッチャー氏の主張は、今日の保守党では頻繁に聞かれない。デビッド・キャメロン首相率いる英国政府から政策の主導権を奪い取った強硬なEU懐疑派は、地政学的な現実に向かって拳を振り上げている。EUの束縛を解かれたら、この「勇気ある島国」は世界的な大国としての正当な地位を取り戻せると彼らは想像している。
このような幻想のインパクトは既に感じられる。ウクライナのデモ隊がビクトル・ヤヌコビッチ氏の政権を倒すためにキエフの独立広場に集まった時、その片鱗が垣間見えた。
内向きになる英国の悩み
英国首相官邸前で握手するデビッド・キャメロン英首相(左)とアンゲラ・メルケル独首相〔AFPBB News〕
今から20年ほど前は、ジョン・メージャー首相率いる政府の大きな功績のおかげで、英国は安全保障と民主主義を東方に広める取り組みを推進する強力な存在だった。
だが、ウクライナでの仲裁努力は、ドイツ、フランス、ポーランドに委ねられた。英国は傍観した。戦略的な焦点が驚くほど狭まったため、キャメロン首相は欧州の将来に対するウクライナの権利を支持するより、旧ソ連圏からの出稼ぎ労働者を閉め出すことに熱心なように見える。
メルケル首相は2月最終週に敬意をもって英国に迎えられ、首相官邸で昼食を取り、バッキンガム宮殿で女王とお茶をともにし、その間に英国議会両院を前に演説する珍しい機会を得た。
フランスのフランソワ・オランド大統領が数週間前に英国を訪問した際の控えめな歓迎との対比は、偶然ではなかった。