IT(情報技術)業界の巨人、米IBMがもがいている。売上高は7四半期連続で前年実績を下回り、2013年通期は11年ぶりの減益。利益水準はなお高いが、増収による力強い成長には遠い。バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO)は技術力の象徴でもある人工知能「ワトソン」事業をテコに勢いを取り戻そうと動き始めた。成長回帰という経営の難問への答えを得られるのか――。
■自然な文章を理解し最適解
1月9日朝、ニューヨーク。世界貿易センタービル跡地にできた高層ビルでIBMが開いたイベントにロメッティ氏の姿があった。
「IBMが新しい事業部門を作ることはめったにない。作るときは大きな変化が起きているときだ」。2011年に発表したワトソンの本格的な商用化に向け、2000人規模の事業部門新設と10億ドル(約1020億円)の投資を打ち出した。
ワトソンは話し言葉による自然な文章を理解し、膨大なデータから質問に最適な答えを導き出す。米国の人気クイズ番組で人間チャンピオン2人に勝ち有名になった。
IBMの技術力を見せつけたデビューから3年。病院や保険会社、金融機関が業務支援ツールとして導入する動きがあるが、稼ぎ手としては半人前だ。米メディアによると、社内では10年以内に100億ドルという売り上げ目標を掲げているが、まだ1億ドルに満たない。
新設の「IBMワトソングループ」には研究所の開発メンバーに加え、ソフト、ITサービス、ハード部門のコンサルタントや営業担当者が集結。顧客の事業にかかわる専門知識の学習速度の向上や、クラウドコンピューティング対応などで市場の開拓を急ぐ。
「ロメッティ色がようやく出てきた」。投資家からは最近、そんな声も聞こえてくる。100年を超すIBMの歴史で初の女性CEOとしてロメッティ氏は12年1月に就任したが、昨年までは前任のサミュエル・パルミサーノ氏が敷いた路線を忠実に守ってきた。
その中核が15年までの成長戦略を定めた「ロードマップ」。1株利益(特別項目を除いた営業ベース)を15年に20ドル以上という目標に向け、新興国やクラウドなど大きく4分野を強化する内容で、10年に発表された。
■市場の変化、想定上回る
ロメッティ氏がCEOに就任したころは、新興国、ソフト・サービス事業が成長し業績は堅調。IT嫌いで有名だったウォーレン・バフェット氏さえ「いまのIBMなら」と100億ドル以上投資した。路線変更の理由は見あたらなかった。
バージニア・ロメッティ、ワトソン、IBM
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