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最終更新:2014年2月26日(水) 21時27分

ヒトラーの「わが闘争」、再出版めぐり独で論争

 アドルフ・ヒトラーが記した「わが闘争」の再出版を巡り、ドイツで波紋を広げています。研究所が学術的な観点から再出版を目指していますが、著作権を持つ州政府がネオナチに利用されるとして、これに慎重な立場を示し論争になっています。

 「こちらが90年近く前に初版が発行されたヒトラーの『わが闘争』です。2015年の末に著作権が切れます」(記者)

 1925年に初版が出版された「わが闘争」。ナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーの著書で、この本に示された「政治的な方針」がホロコースト=ユダヤ人らの大量虐殺へとつながりました。「わが闘争」では、ユダヤ人を「害虫」と呼ぶなど、徹底的な反ユダヤ主義が貫かれています。

 戦後、バイエルン州に著作権が移り「禁書」となりましたが、ヒトラーの死から70年がたつ2015年の末に、著作権が消滅するためその再出版をめぐり論争が起きたのです。

 「『わが闘争』は重要な研究文献で、ナチズムを研究する全ての学者に読めるようにするべきです」(ミュンヘン現代史研究所 ライム研究員)

 この研究所では、批判的な「注釈」を付けるなどして、学術的な観点から「わが闘争」の新刊を出版する予定です。

 一方で、過激なネオナチなどの極右勢力に出版が利用されるとの懸念も出ています。かつて20年間、ネオナチに所属していた女性は、「わが闘争」が多くのメンバーに読まれ、考え方の土台になC$F$$$?$H>Z8@$7!"=PHG$KH?BP$7$F$$$^$9!#

 「お年寄りにも若者にも(『わが闘争』は)引き継がれていました。要するに教会に入ったら聖書を渡されるのと同じ、“ナチスの聖書”なのです」(元ネオナチの女性)

 現在、著作権を保有するバイエルン州政府も、イスラエルなどの批判を受け、出版に慎重な姿勢を崩していません。

 「質の高い新版を出すにしても、『扇動罪』に問われないか調べるよう、研究所に要請しています」(バイエルン州政府 文化担当者)

 ドイツでは、ナチスを賛美するような書物を出版した場合、刑法の「民衆扇動罪」が適用され刑事訴追の対象となります。

 再び、論争を巻き起こしているヒトラーの「わが闘争」。それは、ホロコーストでおよそ600万人の犠牲者を出した歴史との向き合い方を問うものでもあります。(26日16:38)

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