豚流行性下痢:九州南部で広がり被害2万頭超 終息見えず
毎日新聞 2014年03月02日 11時07分(最終更新 03月02日 20時16分)
沖縄県で昨年10月、国内では7年ぶりに感染が確認された豚流行性下痢(PED)は、九州南部で感染が広がり、今年2月には愛知県、青森県の農場でも確認され、農林水産省のまとめでは計7県で2万6387頭の豚が死んだ。感染ルートは不明で、農水省や自治体は消毒の徹底を呼びかけているが、終息の見通しは立っていない。養豚農家からは行政の感染拡大防止策への批判や、経営支援を求める声も出ている。
「もっと早い時期に消毒ポイントを設置して官民一体で地域を挙げた防疫を急ぐべきだった。口蹄疫(こうていえき)の教訓が生かされなかった」。宮崎県都城市の養豚会社の男性従業員(58)は、4年前の悪夢を振り返って口惜しそうに話した。
宮崎県でPEDが確認されたのは昨年12月13日。38農場で感染が確認された都城市(2月27日現在)は被害拡大防止のため、主要道の消毒ポイントを2月3日に、県は同12日に設置したが、男性は設置が遅かったと感じている。
2010年に猛威を振るった家畜伝染病、口蹄疫で約29万頭の牛や豚が殺処分された宮崎県では、県の情報収集や国への連絡など対応の遅れが問題視された経緯がある。
今回の消毒ポイント設置について宮崎県は「PEDは行政が強制力を持って移動制限や殺処分をする口蹄疫などの法定伝染病ではない。消毒ポイント設置に法的裏付けがあるわけではないが、感染拡大防止のために実施した」としている。
被害拡大防止のため、自主的に公道3カ所に消毒ポイントを作った民間団体もある。口蹄疫で多くの豚を失い、新たに無菌の豚を飼った児湯郡や西都市の養豚農家らでつくる「新生養豚プロジェクト協議会」もその一員。会長の長友克裕さん(39)は「口蹄疫は苦い思い出。PEDは法定伝染病ではなく行政も動きにくいので自分たちで設置した。協議会の農家は農場内外の消毒を徹底して自分たちを守っている」と話した。
7県中最も多い1万9480頭が死んだ鹿児島県では、養豚農家が多い大隅半島を中心に感染が広がった。
約900頭を飼育する鹿屋市の養豚農家の男性(54)は、肥育舎と分娩舎の出入り口や周辺を「ビショビショになるくらい消毒薬をまいた」という。それでも「損失は700万円ほどになった」といい「発症はようやく落ち着いたが、更に感染が広がれば廃業に追い込まれるかもしれない。行政の支援が必要だ」と続けた。