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2014.03.02

ドワンゴの就職受験料徴収が厚労省から行政指導の件で(補遺あり)

 思ったより酷い話に拡大していきそうなので、一応。

ドワンゴ就職受験料、厚労省が中止求め行政指導
http://www.yomiuri.co.jp/net/news0/national/20140302-OYT1T00197.htm

 いわゆる「記念入社試験」みたいな学生が安易にエントリーして、企業側の採用活動が負担になっているという問題を軽減するべく、人気企業であるドワンゴが就職受験料を取り、その費用についてはどこぞに寄付とする、というのは「わたし個人としては」理解できるし、なるほどそういうものであったかと思うわけです。

 ところが、法律上は職安法39条において明確に違法であり、一部、中の人の間でも議論になったものの、まずは行政指導として対応するという内容になったとのことです。

[引用]
(報酬受領の禁止)
第39条 労働者の募集を行う者及び第36条第1項又は第3項の規定により労働者の募集に従事する者(以下「募集受託者」という。)は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも、報酬を受けてはならない。

 もともと、職安法自体は働き口が少なかった時代に不適切な仲介斡旋で暴利を稼ぐ人足屋対応を行うことが法の趣旨でありましたので、その働き口自体が受験料として料金を徴収することはあまり念頭に置かれていません。ただ、最近でも芸能界デビューできると称して劇団員希望者に受験料を徴収したり、正社員の試験を受験するために自社製品の購入が行われていることを明示することを条件とする場合など、悪質なものもかなりあり、決して死んだ法律でもなければ運用されない代物でもないというのが実情です。

 最近では、ICT業界も含めて派遣法上の問題や、偽装インターンでただ働き上等としているベンチャー企業の実態などもそろそろ真面目に取り組んで是正するべきだとも感じますが、これらはモラル(倫理観)だけでなく企業側のガバナンスの問題として捉え直される機会が増えてきたようにも感じます。

 何がガバナンス上の問題になっているかというと、ある意味でこの仕組みが問題であることはちょっとした労務関係の実務を知っている人であれば誰しもが問題点を指摘し、やり方を改めるようなガバナンスを働かせるのが常識であると考えられるのに、当面の人材採用コストが高いからという理由で金を雇用者側が取ったことです。その使途や、資金の扱いは問題になりません。取った時点(取るという経営判断を行って実施した時点)で問題と考えられます。

 やりたいことの趣旨は明確に分かるけど、それと同じぐらい明確に違法であるのに、それを止められなかった会社ってガバナンス的にどうなのよ、という話でもあるわけですね。川上量生がいくら才能のある天皇だとしても、違法行為に鈴をつける仕組みが組織になければ暴走のひとつもするだろう、という話で。

ドワンゴ 入社試験料について
http://info.dwango.co.jp/recruit/graduate/guideline01/
「広く問題提起」──ドワンゴ「入社試験に受験料」発案の川上会長に聞く、その真意と“就活”観 (1/5)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1312/06/news064.html

 広く問題提起をするつもりであるならば、他にやり方はいくらでもあったであろうし、このような問題を作り上げた原因は採用システムだけではなく、採用「業界」全体の問題だという話になりはしないでしょうか。

 そう考えるとドワンゴのやり方はとても惜しいわけです。いわゆる、大学と就職時期と就職・採用戦線を担う「業界」と各企業の関係が、もう少し合理的なものになるように、柔軟な対策が取れると良いのですがね。

(追記 21:58)

 一部情報があり、ドワンゴ社内からの実行上の相談として、事前に2,525円の手数料請求を入社受験者に課すことの適否が局に照会されていたとの話です。ということは、ドワンゴ社内の法務はインハウスでも充分に機能していたことになりますので、一連の事案での教訓は次の2点に集約されます。

・ 川上が暴走したらちゃんとインハウスで止めるガバナンスを強化すること
・ 手数料は積算根拠を明確にし、一都三県以外は免除のようなクソ悪平等は駄目だということは徹底すること

 こちらからは以上です。

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    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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