文科省:研究機関の責任明確化へ「不正許したら経費削減」

毎日新聞 2014年03月02日 08時51分(最終更新 03月02日 10時47分)

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑など研究不正の続発を受け、文部科学省は、研究機関の組織としての管理責任を初めて明確にする方針を固めた。研究機関に不正行為に対応する責任者を置くよう求め、研究者への倫理教育を徹底させる責任者の設置も義務付ける。対応が不十分な場合、人件費などの研究経費を最大15%削減するペナルティーも科す。文科省は研究不正への対応指針を改正し4月から運用する。

 研究不正防止の取り組みは、これまで研究者個人の責任に委ねられてきた。現行の指針では、不正行為をした研究者個人への研究資金の打ち切りなどのペナルティーがあるだけだ。しかし昨年来、バルサルタン臨床試験でのデータ操作や、東京大分子細胞生物学研究所での膨大な論文不正など、社会に大きな影響を与える不正行為が相次いで発覚。このため文科省は、個人だけでなく研究機関の責任を明確にし、不正防止への取り組みを強化させる方針に転じた。

 今後は、国が研究機関の倫理教育を行う責任者の設置状況などを調査し、対応が不十分と判断した場合、研究経費を削減する。削減割合は5%から毎年5%ずつ引き上げ、最大15%まで引き上げる。管理体制が不十分なまま研究不正が起これば、研究機関全体の研究経費も一定割合削減する。研究経費は研究費とは別に組織の管理に必要な経費。

 バルサルタン疑惑や東大分生研の不正では、大学による調査の遅れも問題になった。このため、研究機関には告発を受け付けた日から1年以内に最終報告書を出すよう求める。理由なく調査が遅れれば、研究経費を次年度以降最大で10%削減する。

 研究成果について第三者が検証できるよう、研究機関に一定期間、データを保存、公開することも義務づける。国から研究費を受けていない研究機関も対象とする。【斎藤有香】

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