進化する若者達
―草食系男子はなぜ生まれた!?
I06513
柳澤 桃子
< 目次 >
0. はじめに
1. 進化を遂げた若者のかたち
1-1 草食系男子
1-1―1 恋愛に消極的
1-1―2 美容やファッションへの関心が高い
1-1―3 消費に堅実
1-1―4 家族志向
1-1―5 地元志向
1-1―6 安定志向
1-2 女性の二極化
1-2-1 干物女(草食系女子)
1-2-2 肉食系女子
2. 若者はどのように進化を遂げたのか
2-1 情報化と個性化がもたらしたもの
2-1-1 愛したいより愛されたい
2-1-2 見た目でかりそめの自信回復
2-1-3 恋愛より結婚がわかりやすい
2-1-4 仲良し家族
2-1-5 地元が楽
2-2 景気変動がもたらしたもの
2-2-1 消費市場の変化
2-2-2 就職観の変化
2-2-3 結婚観の変化
3. 終わりに
0. はじめに
私が「草食(系)男子」という言葉を初めて耳にしたのは、2008年の夏頃だったように思う。その後マスコミで盛んに取り上げられ、2009年ユーキャン新語・流行語大賞のトップテンにまで選ばれるほど瞬く間に「草食(系)男子」は社会に認知されるようになった。はじめはその言い回しの面白さゆえに一過性の流行語と扱われがちだったが、ここまで社会に浸透したのは世の多くの人々が確かに草食系男子の存在を実感しているからではないだろうか。
しかし、一般的に草食系男子が多いと言われる世代である私は、物心ついた頃から周りの男性のほとんどがいわゆる草食系であったため、それが特別取り上げられるようなことには感じなかった。雑誌やテレビ番組等で、草食系男子とバブル期の肉食系男子とが比較されるようになって初めて、「ああいう肉食系男子はドラマやマンガの中だけの存在では無かったんだ!」と反対に驚いたほどである。
他にも、草食系男子に続いて「肉食系女子」や「干物女」、「低温世代」といった今の若者を象徴する様々な言葉が登場し話題になっている。「今の若者と昔の若者との違い」を知るにつれ、「なぜ、若者はこのように変化を遂げたのか」について非常に興味を持ち、今回のテーマを設定するに至った。
この論文では、「草食系男子」を筆頭として「干物女」「肉食系女子」といった現代の若者達の特徴を明らかにしたうえで、どのような社会的背景から彼・彼女らが生まれたかについて考察していきたい。
1. 進化を遂げた若者のかたち
1-1 草食系男子
「草食(系)男子」という言葉が初めて使われたのは、2006年10月。ウェブサイト「日経ビジネスオンライン」に掲載された、編集者でコラムニストの深澤真紀氏によるコラム「U35男子マーケティング図鑑」 の中である。その後、2008年7月に哲学者で大阪府立大学・人間社会学部の森岡正博教授が『草食系男子の恋愛学』 (メディアファクトリー)を、11月にはマーケティングライターの牛窪恵氏が『草食系男子<お嬢マン>が日本を変える』 を出版し、「草食(系)男子」はマスコミ等でも盛んに取り上げられるようになった。
3人の「草食(系)男子」の定義に大きな違いはなく、いずれも「消費や恋愛に決してガツガツせず、女性と肩を並べてやさしく草を食む男性 」のことだとされている。
違いがあるのは、深澤氏と牛窪氏は草食系男子を「バブル経済を体感していない、20代男性に多いタイプ 」としているのに対して、森岡教授は自身が草食系であったことから「どの年代にも草食系はいる 」としている点である。
後者の森岡教授の意見は一理あるが、前者の意見と同じく私もバブル経済が草食系男子誕生の大きなポイントになると考える。
しかし、1991年前後をバブル崩壊とすると、現在の20代だけでなく30代の大半がバブル崩壊後に大学卒業後の就職活動を行ったことになる。つまり、バブル期にお金を自由に使える社会人では無かったであろう30代もバブル経済を充分に体感していないことになる。
そのため、本論文では「バブル経済を体感していない20代~30代男性、特に20代に多いタイプ」として草食系男子を扱おうと思う。
次からは、草食系男子の特徴を具体的に紹介していきたい。
1-1―1 恋愛に消極的
草食男子の1番の特徴として挙げられるのが、「恋愛に対して積極的でない」ということである。実際、複数調査から若い世代に恋愛をしていない人が増えていることが読み取れる。
2009年に実施された「20~30代未婚男性の結婚意識調査」 によると、全体の70.0%が「現在交際相手がいない」と回答し、1996年の調査開始から最高値を記録した。とくに20代は前回2006年調査より16.8ポイントも上昇して69.6%となり、30代と変わらなくなった。また、2010年に新成人になる男女を対象にした「第15回新成人意識調査」 (図1)では、男性の新成人(20歳)で恋人がいるのは23.8%で、8割近くの男性に恋人がいないと判明した。5割に恋人がいた90年代半ばの新成人と比較して3割近く減少している。
また、国内の18歳~50代を対象とした「恋愛“高速”度調査」 (2007年実施)によると、男性の6割弱が「好きになっても告白しない」と回答し、その中で最も多く「伝えない」と答えたのは20代の64%であった。
「伝える」派であっても、そのセリフは消極的なものが多いようである。雑誌『ViVi』の「みんなのリアル告白大調査!」 という記事において、「カレに言われた告白ゼリフ・ランキング」が発表された。図2がそのランキングである。1位こそは「好きなんだけど」というストレートなセリフだが、他のセリフは全て相手任せで告白とは思えないあいまいなものである。
草食系男子は恋愛で傷つけるのも傷つくのも恐れる傾向が強い。
カレに言われた告白ゼリフ・ランキング (図1)
1位 好きなんだけど
2位 好きかも
3位 Hしない?
4位 ていうか俺のこと好きでしょ?
5位 彼女と別れたいんだ
6位 とりあえず付き合っとく?
7位 なんかうちら、付き合ってることになってるらしいけど、そうなの?
1-1―2 美容やファッションへの関心が高い
2006年時点で、「美容院」へ髪を切りに行く男性は20代の50%。理容室(床屋)と美容院を使い分ける人を含めると、理容室の46%を超える 。美容院へ行くぐらいであれば、大抵の女性は歓迎するであろう。しかし、女性顔負けにおしゃれに熱を注ぐのが草食系男子なのである。
お肌のお手入れはもちろん、ネイルサロンへ行き爪のお手入れをする男性も珍しくない。また、結婚前の「ブライダルエステ」に興味がある男性も、20代で23.5%、「少し興味がある」と合わせると70.6%という結果になった 。
2008年に発売された「メンズプレミアムブラ 」という男性用のブラジャー(右画像参照)には注文が殺到し、数ヶ月で5千枚を売り上げたそうである。現在はチェック柄やレースのものなど更にバージョンも増えている。草食系男子の中でも男性用ブラジャーを着用するのは少数派であると思われるが、レディース服をおしゃれに着こなす草食系男子は多数存在する。美容やファッションにおいて男性用と女性用の垣根が低くなっているのは確かだといえる。
このように、「女性にモテるため」だけでなく、「自分が満足するため、同性からカッコイイと思われるため」におしゃれをするのも草食系男子の特徴である。
1-1―3 消費に堅実
40代男性が若い頃にはデートの必須アイテムであった車が、草食系男子達に売れなくなっている。30~44歳の既婚者が20代独身であった頃は「デートにはクルマが必要だ」と、女性は約4割、男性では53%の人が回答していたのに対して、20代独身では男女ともに約3割である 。草食系男子は大して乗りもしない車に大金を出してまで、女性を口説きたいとは思わないのである。
また、バブル期は「アッシーくん」「メッシーくん」と、男性が女性へ奢ることは常識であったが、今の時代はワリカン多い。20代の男性の65%がデート代はワリカンと答える 。そして2009年に20~30代女性200人に行ったアンケート調査「モテるおカネのつかい方」 によると、20~30代の独身女性の3割、20代前半の女性では4割以上が「ラブホテル代もワリカン」と答えたという。
会社の上司と飲みに行っても一杯目からジュースやカクテルを頼み、2次会には参加しない。あまり好きではないビールをとりあえず飲むことや、2次会に参加して終電を逃しタクシーで帰るという行為は草食系男子にとって「ムダ」なことなのである。
しかし、高い物や贅沢品を全く買わないわけではなく、時には何万円もするブランド物のTシャツを買うこともある。けれども全身をブランドで揃えるようなことはせず、流行物はユニクロで揃えるなどあくまで“1点豪華主義”。
見栄を張るために何百万という消費はしないが、自分が充実するためのものへはある程度の投資は惜しまない。そして「ポイントカードは10枚持ちが常識 」で、節約も常に意識している。まさに主婦のように、堅実な消費をするのが草食系男子なのである。
1-1―4 地元志向
草食系男子はあまり都会への期待や憧れがなく、地元に残る傾向がある。その表れとして、最近は地元で就職を希望する若者も増えている。
図3は、岐阜県内で働く18~35歳の若者に対して「現在の会社に就職する際に重視した(魅力に感じた)点」を聞き、その回答をグラフにしたものである 。1位は「職種・仕事内容」(47.6%)であるものの、「自宅から通えること」も45.6%を占め2位と、地元での就職を重視する傾向が伺える。
また、地元の友人とも特に仲が良いという特徴がある。
1-1―5 家族志向
草食系男子は家族(特に母親)と友達のように仲が良く、旅行や買い物へも一緒に行く。カウネットが2009年に行った調査 によると、母の日にプレゼントを贈る20代男性は6割を超える結果だ。
また、4割以上の男性が「母親とうまくやれない女性とは結婚できない」 とも答えている。
1-1―6 安定志向
草食系男子は非常に安定志向が強い。高望みはせず、そこそこの幸せで十分と考えるのである。
その傾向は就職観に大きく反映されているようだ。毎日新聞が2009年入社の新入社員に行った調査によると、「定年まで同じ会社で働きたい」は64%で前回より9%上昇し、「向かなければ転職したい」は36%と過去最低の数字となった 。
また、恋愛に消極的な草食系男子であるが、「早く結婚して落ち着きたい」と、結婚願望も強まっているようである 。
1-2 女性の二極化
草食化が進んでいるのは男性だけではない。女性にも男性と同じように草食化の傾向が見られる。
しかし、それとは反対に「肉食系女子」が増えたとも盛んに言われている。つまり、女性は「草食系」と「肉食系」へ二極化しているようなのだ。次に、その各々の特徴を紹介していきたい。
1-2―1 干物女(草食系女子)
「干物女」とはもともと、マンガ『ホタルノヒカリ』の主人公の生活ぶり(会社から帰ると毎日マンガを読んで一人手酌で酒を飲み、休日は布団の中で過ごすのが幸せという女性)を指した言葉である。ドラマ化で注目を浴びたことにより、転じて「恋愛や女であることを放棄した、20~30代の女性」「草食系男子の女性版」と扱われるようになった。
2010年「第15回新成人意識調査」 によると、20歳(新成人)女性で恋人がいるのは30.5%。90年代半ばに比べて2割近く少なくなり、過去15年間で最低の数値となっている。
1-2―2 肉食系女子
草食系とは対照的に、恋愛に積極的な女性のことである。肉食系女子が多く見られるのは、30代を目前にした20代と、40代前後のいわゆる「アラフォー」 と呼ばれる世代。
草食系男子と全てが対照的というわけではなく、草食系同様に強い「安定志向」も見られる。安定したいが故に、支えとなってくれるパートナーを追い求めているのである。
恋愛に積極的とされているが、彼女達の実際の目的は恋愛よりも「結婚」であることが多い。彼女達は「婚活」 を行い、条件に見合った相手を探すのである。
また、草食系と同様、高望みはしない。結婚相手に求める条件も、バブル期のように「3高(高学歴、高収入、高身長)」ではなく「3低(低依存、低姿勢、低リスク)」。つまり、家事を分担してくれ、女性に上から目線でなく、リストラ等の無い職種や手に職を持つ安定した男性が理想なのである。
2. 若者はどのようにして進化を遂げたのか
草食系男子、干物女、肉食系女子…彼らの誕生は社会的背景と密接に関係していると思われる。その要因を大きく二つに分け、若者がなぜ進化を遂げたのか分析していきたい。
2-1 情報化と個性化がもたらしたもの
インターネットや携帯電話といったインフラはここ15年程で急速に普及し、私達の生活を変えた。多くの20代~30代の若者にとってもはや無くてはならない便利なツールであり、人格形成にも大きな影響を与えているといえる。
また、80年代頃から個性尊重が叫ばれるようになり、1992年には週5日制や総合学習といった大幅なカリキュラムの変更によって個性化教育が始まった。20代~30代はその影響を受けている世代でもある。
では、情報化と個性化が若者にどのような影響を与えたのだろうか。
まず、ITインフラの普及により、現代人は様々な情報を簡単に得ることができるようになった反面、その情報を処理しきれないという状態に陥っている。情報が多すぎて何を選択すれば良いかわからない、自分の選択に自信が持てない。そして、自分に自信が無いのでマニュアルに頼り、マニュアルが無いと失敗しそうで行動できない若者が増えていると考えられる。
また、個性化教育も同様の影響を与えていると思われる。個性尊重によって、子どもの頃から勉強ができなくても、何をしても怒られない。何をしても良いと言われると何をして良いかわからず、親や周りからの助けを求めたり、マニュアルに頼るようになる。そして自分の行動に自信が無くなっていく。
2007年の流行語大賞に「KY(空気が読めない)」という言葉が選ばれたが、これは多くの若者が自分の行動に対して自信が持てず、「空気を読めなければ、みんなから浮いてしまう」と恐れていることの表れだろう。「あいつはKYだ」と皆で言うことで「自分はKYかもしれない」という不安を払拭しようとしているようにも思う。
「電通ウェルネス一万人調査」 で、21のコンプレックスに関する項目を挙げ当てはまるものを聞いたところ、20代男性においてもっとも割合が高かったのが「初対面の人と抵抗なく会話できること」であった 。
情報化と個性化による自信喪失や、携帯電話やメールでの間接的な人間関係が増えたことにより、生身のコミュニケーションへ苦手意識を持つ20代男性が多いのではないかと予想できる。
次に、それらが草食系男子や肉食系女子の特徴とどのように繋がっているかを考えたい。
2-1-1 愛したいより愛されたい
前述したように、草食系男子や干物女は「恋愛に消極的」というのが大きな特徴である。
「電通ウェルネス一万人調査」で恋愛について性年齢別の意識調査をおこなったにところ、男性で「恋愛は疲れる」「面倒くさい」という回答がもっとも多かったのは20代 。また「恋愛はストレスになると思う」という回答がもっとも多かったのも男女ともに20代であった。
それに対し、40代男性は「恋愛は楽しい」という回答が最も高く、「恋愛はストレスの解消になると思う」という回答が「恋愛はストレスになると思う」を唯一5%以上、上回る結果となっている 。
40代が感じず20代が感じている恋愛のストレスの原因とは何であろうか。それはインターネットや携帯電話といったインフラの普及にあると考える。
「昔は彼女の家に緊張して電話をかけたもんだよ」や、「待ち合わせ時間になっても相手が来なかったら、駅の掲示板に伝言を書いてたのよ。今は便利になったわよねえ」というのは、自身の若い頃に携帯電話が無かった世代の人からよく聞くエピソードだ。
今は四六時中、どんな場所からでもメールで連絡を取り合うことができ、手間が減ったように思える。
しかし、同世代の友人から近頃よく聞くのは、「彼氏からしょっちゅうメールが来てうっとうしい」、「彼氏に1日連絡しなかっただけで怒られるから嫌だ」、「たまにメールの返信遅いと嫌われてるのかなって心配になる」といった言葉である。
電話と違い、いつでも送れるメールは「今何してるの?」という余計な連絡までしてしまう。そして、返事が遅いと不安になる。返事が来たら来たで今度は「早く返さなければ」とか「絵文字を入れないと冷たいと思われるかも」と気を使う。
また、電話が直接相手に繋がるようになったおかげで、「さっきなんで電話に出なかったの?」という新たな揉め事が起こることもある。昔のように、ようやく連絡がとれたときの嬉しさも無い。
メールや携帯電話の便利さが逆に若者のストレスに繋がっているのである。相手が好きな人であればその不安やストレスが更に増すことは予想できる。
こうした新たなストレスが、草食系男子や干物女達にとって恋愛を「面倒くさい」ものにしているのではないだろうか。
しかし、恋愛は「面倒くさい」と思う反面、20代の男女の多くが「愛されたい」と感じているようである。先の「電通ウェルネス一万人調査」でストレス解消のためにしてほしいこと、したいことを聞いたところ、20代の男女共に「愛されたい」「人とつながりたい」「慰められたい」という項目が高いスコアを示した 。
ここで注目したいのは、「~したい」ではなく「~されたい」という受け身であるという点である。彼らはコミュニケーションに苦手意識を持つために、自分から主体的に行動する自信がなく、相手から受けとめてくれることを待っているのではないだろうか。つまり、男女共に「相手からアプローチしてほしい」と望んでいるのである。
2-1-2 見た目でかりそめの自信回復
<男性の場合>
「自分からではなく、相手からアプローチしてほしい」と草食系男子が望んでいるとなると、彼らが見た目を気にする理由もうなずける。
先ほどの「電通ウェルネス一万人調査」によるコンプレックスに関するアンケートでは、「初対面の人と抵抗なく会話できること」の他に「異性に対する自分の魅力」や「顔」に対してのコンプレックスも20代男性は他世代に比べ強い結果となっている 。
自分から声をかけない分できるだけ女性からモテようと、多くの男性が身だしなみに気を使うようになったのではないだろうか。
また、彼らには「見た目を変えることで自分に自信を持ちたい」という願望もあると思われる。そのため、男性が意識するのは女性の目だけではない。
昨年、テレビ朝日系列の人気バラエティ番組『アメトーーク!』が、日本国内のテレビ番組作りの最高の栄誉である「ギャラクシー賞」をバラエティ番組ではじめて受賞した 。2008年12月に放送された「中学の時イケてないグループに属していた芸人」の企画 が評価されての受賞ということで、多くの人から共感を得たことが伺える。
つまり、草食系男子は自分が「イケてるグループ」に属しているか「イケてないグループ」に属しているかに敏感なのである。
以前から、女子は「私はあの子よりは可愛いけど、あの子には負ける」と冷静に自分を評価し、自分と同じようなレベルの友達と仲良くなる傾向がある。それに対して男子側は、かつてはあくまでも気が合えば友人の見た目など気にしなかった。
しかし、多くの男子がおしゃれを意識するようになってからは、イケてる男子はイケてる男子同士でつるみ、自身のグループの評価を下げないように、「KY」にならないよう男性からもウケの良いおしゃれを目指すようになったのである。
<女性の場合>
女性の場合は、異性からモテるためだけでなく、同性や自分が楽しむためのおしゃれをするようになって久しい。
ところが近年、男性の草食化にしたがって男性が恋愛に消極的になってきた。
すると、「最近モテなくなったから、男性を意識したモテファッションにしなきゃ」と異性を意識したおしゃれに一部の女性達は必死になった。それが、『CanCam』や『JJ』を代表する赤文字系(タイトルが赤い文字の雑誌のこと)の女性誌を中心に2007年前後に起こった「モテブーム」であると思われる。
また、モテファッションに身を包む女性とは対照的に、もう一方の女性達は「もう恋愛とか、男性の気を引こうとおしゃれするのは面倒くさい。」と干物女化していったのではないか。
しかし、いくら女性がモテるように気を使っても、男性は受け身のまま声をかけてはくれない。
30歳前後の女性は「負け犬 になりたくない」という焦りがあり、40歳前後の女性は出産のリミットを意識するようになる。「受け身のままではいけない」と、危機感を持った女性達が、自ら男性へ積極的に声をかけるようになり、それが肉食系女子と呼ばれるようになったのではないかと考えられる。
また、2008年に『下流社会』(光文社)の著者で知られる消費社会研究家の三浦展氏が、団塊ジュニアより下のZ世代(15~22歳)を対象に行ったアンケートで「なりたい職業、してみたい仕事」を選んでもらったところ、「キャバクラ嬢・ホステス」が9位という結果が出た 。
この背景には、雑誌『小悪魔ageha』 のキャバクラ嬢モデルの人気があるだろう。しかし、多くの若い女性が、お金を得るための手段として男性好みに着飾ったりお酌をしたりすることに抵抗が無くなってきているのは確かである。
「男性にモテたくておしゃれをする」のではなく「男性好みにおしゃれしてあげている」という、女性優位の風潮が強まりつつあるように思う。
2-1-3 恋愛より結婚がわかりやすい
草食系男子、干物女、肉食系女子、全てにおいて共通した特徴がある。それは、「安定志向」である。その安定志向の一つとして結婚願望を持つ人の増加が目立つ。
2008年の読売新聞の調査では、「結婚はしたほうがよいと思うか?」の問いに5割以上の20代が「はい」と答えた。2003年の調査からわずか5年で2割以上「結婚したほうがよい」が増えたのである 。
自身の周りにも結婚願望を強く持つ人が多い。ある友人の一人は「早く結婚したい。でも恋愛は大変そうだし興味ない。できるだけ恋愛の期間を経ずに結婚したいから、お見合いで相手と出会いたい。」と語る。
恋愛に対して消極的になっているのにも関わらず、結婚願望が高まっているのはどういうことであろうか。
原因の1つに、若者が何事にもわかりやすさやルールを求めるようになったことが影響していると考えられる。生まれたときから自動販売機やコンビニがあり、インターネットショッピング等で欲しいものが簡単にわかりやすく得られるようになった現代人。「これが欲しいなら、ああしろ」という指示やルールに従ってボタンを操作すれば、欲しい物が得られるようになったのである。
これが「ルール・ガバーン(ルールによってコントロールされた社会) 」を進行させ、ルールに当てはまらないものには対応できない現代人の増加に繋がった。
また、情報化や個性化教育によって自分に自信が無く、何かとマニュアル本やハウツー本に頼りがちな世代でもある。
しかし、恋愛に関してはいくらマニュアル本を読んでも、ルール通りには進まない。“モテ本”通りに行動しても、相手によってその反応は異なり、いくら努力しても報われないこともある。
そうしたイレギュラーで面倒な「恋愛」に比べて、「結婚」はわかりやすい。「結婚は、もともと男女の性を家庭内で管理すると同時に、子孫を残していくための“システム”だった。籍を入れれば『結婚した』という約束事が成立し、家庭という枠組みができる。相手のことも所有できる(と考える)。」
早くパートナーを得て「安定」が欲しい若者にとって、「恋愛」よりも「結婚」なのである。
とはいえ、この不況下では男性にとって「結婚して妻子を養う」ことは「安定」よりも「不安」のほうが大きいように思う。女性だけでなく男性までも結婚で「安定」を得られると考えるのはなぜだろうか。
それには結婚観の変化があると思われる。それについては、「2-2-3 結婚観の変化」で検証してみたい。
2-1-4 仲良し家族
最近の若い世代は男性でも本当に親と仲の良い人が多い。同世代の男性からも、「親と一緒に温泉旅行に行った」とか「母親と一緒にスポーツ大会に参加する」といったことはよく耳にすることである。
しかし、私の父親世代(50代~60代前半)はそれに対して「信じられない。若い頃は母親と出かけるなんて恥ずかしくてできないものだろう。」と声を揃える。
また、中学生を対象にした親との関係についての調査(図3参照。2004年実施。現在の19歳~21歳に当たる。)では、母親との関係がうまくいっている者は、「とてもうまくいっている」と「かなりうまくいっている」を合わせると52.7%。「ややうまくいっている」を加えると87.4%となった 。
全体的に親との関係はうまくいっており、第2次反抗期らしい状況は見られない。
こういった現象はなぜおこったのだろうか。
まず1つに、物質的な豊かさが考えられる。今は不況といえども、ゲームやテレビ、など家に大体なんでも揃っており、外に出なくともパソコンで欲しい情報が手に入る。そして金銭的にも豊かな家が多く、親も「早く自立して家計を助けてほしい」とは望んでいないため、外に出ろとは言わない。
家は大変居心地の良い場所なのである。
また、
そして少子化により過保護な親が多く、「個性をのばす教育」が叫ばれていたため親に叱られてこなかった世代であるとも考えられる。
また、大学の学費の増額等で金銭面を親に依存する子どもが増えたことも大きく関わっているように思う。
近年、入学式へ同伴する保護者 や、合同就職説明会へ子どもと一緒に参加する保護者 の増加が新聞等で取り上げられているのをよく目にするようになった。
親は子どもにお金をかけている分、子どもの将来について気になり「子離れ」できない。子どもは親にお金を出してもらっている分、「まだ一人では生きていけない」と、精神的にも自立できずにいるのではなだろうか。
「第13回新成人意識調査」 (2008年)では「今、抱えている不安を相談する相手は?」に対しての質問に、“母親”と答えた人が男女とも“同性の友達・同僚”に次いで2番目に多かった。男性でもその割合は35.8%である。
それに対して彼女に相談するという男性は9.5%という低い結果となった。
今の子どもにとって、親は協力してくれたり相談にのってくれる大切な友達のような存在なのである。
そのため、親がいる家へ彼女を呼ぶのも気にならない。電通消費者研究センターの「20代、30代男女の最新デート事情!」 (2006年)という調査によると、男女ともに20~30代の6割以上が、ふだんのデートを家(自分・相手の家)ですると回答している。
家といっても一人暮らしではないかと思われるかもしれないが、2005年時点で18~34歳の独身男性の同居比率は約7割、女性も10代を除いて8割前後が同居している ことを考えると、親がいる家でデートをするカップルも多いことが推測できる。
2-1-5 地元が楽
家族と仲が良く家が好きであるからか、20代男子の8割以上が2~3ヶ月に1回以上の割合でホームパーティーを開く。そして、その相手は“昔からの友人”が6割と、“仕事の仲間”や“趣味の仲間”(いずれも2割強)を大きく上回っているという 。
なぜ、それほど地元の友達が好きなのだろうか。
それは「楽だから」ではないだろうか。というのも、草食系男子は友達を大事にし男同士でつるむ傾向が強いが、実際のところは“ひとり”が好きな人が多いようなのである。
サントリー次世代研究所「若者メディアライフスタイル調査」 によると、1974~85年生まれ(現24歳~35歳)の6割以上が友達といるより“ひとり”が好きだと回答したという。
また、ここ数年の新成人意識調査からもその傾向が見られる。図4は、「自分はどのようなタイプか」についての新成人の回答結果である 。「人からペースを乱されたくない」が1位、「人に気を遣うタイプ」が2位と、自分のペースを乱されたくないと思いながらも人に気を遣っている若者が多いことが伺える。
最近の若者は「KY(空気が読めない)」になることを恐れてその場その場でキャラクターを演じる傾向があるため、友人といても疲れることが多いと考えられる。
しかし、ひとりが楽だといっても、ひとりだとどう動いてよいかわからない。誰かとつながっていないと、取り残されるかもしれないという不安も強い。
その点、家族や地元の友達とは古くからの付き合いで、お互いに理解しあっているので素の自分でいられる。楽に付き合える相手なのである。
また、地元に遊ぶ場所が増えたというのも地元志向の若者が増えた原因の1つであろう。
1980~1999年までの間に、大都市のショッピングセンターは74店舗しか増えていないのに対し、中都市と小都市ではそれぞれ130店舗前後が開業している 。
買い物をしたりお茶をするのにわざわざ気合いを入れて遠出をしなくても、普段着で気を使わない地元の友達と遊ぶことができるようになったのである。
2-2 景気変動がもたらしたもの
これまで挙げたいくつかのデータから考えると、やはり草食系男子の多くが20代~30代に存在することがわかる。そして、その20~30代とその前の世代との最も大きな違いは「バブル経済を体感したかどうか」であると思われる。
次からは、バブル以降の景気の変動がいかに若者へ影響を及ぼしたのかについて、見ていきたい。
2-2-1 消費市場の変化
<バブル崩壊が生んだメンズビューティー市場>
バブル期、「DCブランドブーム」が起こり「ジョルジオ・アルマーニ」や「ラルフ・ローレン」「ドルチェ&ガッバーナ」といった高級ブランドの洋服が女性に飛ぶように売れた。
しかし、バブル崩壊と共にブランドやアパレル業界は大打撃を受ける。
第二次ベビーブームより後の世代の人口も減ってきており、このまま女性だけをターゲットにしていては生き残れないと考えたアパレルメーカーは、本格的にメンズラインへ展開を始めたのだ。
その代表的な例が、90年代後半に誕生した、「バーバリー・ブラックレーベル」や「コムサ・コレクション」である。
また、バブルと共に「高い物は良い」という高級神話も崩壊すると、今度は希少価値の高い「レアもの」の人気が高まった。
95年に大ブームとなったスニーカーの「ナイキ・エアマックス」や、腕時計の「カシオGショック」がその例である。いずれも限定販売により入手困難であったが、比較的手頃な値段設定により男子高校生の間にも広まった。
97年には「裏原(裏原宿)ブーム」 も起こり、男性も女性のようにおしゃれを楽しむようになってきたのである。
メンズコスメも同様である。当時、資生堂がジェレイド(現ウーノに統合)から出した眉毛コームが男子高校生に大人気となり、男性も眉毛を手入れすることが一般的となった。今では資生堂の「ウーノ」、マンダムの「ギャッツビー」、DHCの「DHC for MEN」、ロート製薬の「オキシー」といった多くのメンズラインが存在し、毛穴ケア製品や美容液など種類も豊富になってきている。
自分のおしゃればかりに気を使う草食系男子を、「男らしくない」と非難する大人の声をよく聞くが、そのきっかけを作ったのは不況に喘ぐ大人達だと言っても過言ではない。
また、男女平等意識の高まりもメンズビューティー市場の拡大を助けたとも考えられる。
『草食系男子の恋愛学』の著者である森岡正博教授(2010年で52歳)が若い頃から草食系という自覚があったように、昔も「女性と同じようにおしゃれをしてみたい」という男性は少なからず存在したと思われる。
しかし、「男は男らしく」という風潮が強かった時代は、それを口に出せなかった。近年になり、男女平等が根付いてきたことで「俺も美容院に行きたい」と堂々と言えるようになったのだ。
最近では女性がボクサーパンツを履くのも普通になってきている。「アンダーキング」という東京都内の男性用パンツ専門店では購買者の7~8割が女性 。また、下着専門店の「ウンナナクール」が売り出した女性用ふんどし、「ななふん」は月平均で約1400枚も売り上げるヒット商品である 。
男女平等意識と、不況によるアパレルメーカーの苦肉の策によって、ファッションや美容市場における男女の垣根はどんどんと失われつつあるようだ。
<堅実消費>
若者の消費が堅実になった大きな理由の1つは、単に不況によって収入が減ったからということもあるだろう。
しかし、収入の減少以外にも様々な社会的背景が若者の消費活動へ影響を与えているように思う。それは何であろうか。
1つ目は、「ポイントカード制の増加」である。1989年、「ヨドバシカメラ」がポイントカード制を始めてから、続々とポイント制を採用する企業が増えた。今や家電量販店を始め、ドラッグストア、コンビニ、ビデオレンタル、ショッピングセンターと、買い物をしてポイントが付かない方が珍しい。飛行機に乗ってもマイレージが溜まるのだ。
野村総合研究所が2009年に発表した国内9業界のポイント・マイレージ市場推計・予測によると、2007年度の発行総額は少なくとも7993億円規模に達したことが分かった。2006年度から1339億円(20.1%)増と、急激な成長を見せている 。
この急成長の裏には、景気の低迷により企業側が消費者の「お得感」をあおり購買意欲を回復しようとしたことが考えられる。「ポイント還元」は消費者にお得感を与えることができるのに加え、結局は使われないポイントが多く、企業側にとっても実際に値引きするよりメリットが高いのだ。
ポイントカード制度が幼い頃から身近であった20代~30代は、「買い物をしたらポイントを溜める」というのはもはや常識である。
2つ目は、「クーポン券の増加」だ。マクドナルドやツタヤにメールアドレスを登録していれば週に1度は携帯クーポンが届く。
また、『Hot pepper』等のフリーペーパーやグルメ情報サイト「ぐるなび」等では、お店を探すのと同時にクーポン券も得ることができる。最近では学生同士で居酒屋に入る前には誰かが「クーポン無いかな~」と必ず携帯サイトをチェックする。
そして3つ目は、洋服も家電製品も「少し待てば値下がりする」ということである。
家電製品は次々と新製品が出るため古い型はすぐに安くなり、「ユニクロ」の服はただでさえ安いうえに、毎週末がセールである。インターネットで商品を最安値で買える店も簡単にわかる。通常価格で買うのが馬鹿らしくなるのも仕方ない。
その他にも、100円ショップやアウトレットモールで、安くてもそれなりに品質の良い商品が買えるようになったことや、「Youtube」等のフリー動画サイトの普及で、多少の画質音質の悪さを気にしなければ大抵の動画や音楽も無料で手に入るようになったことも要因として挙げられるだろう。
こういった様々な要因から、若者達は必要に迫られたわけではなく、いたって自然に節約生活を送るようになったと考えられる。
また、「若者の生活意識調査」 (2008年)によると、20代の約8割が毎月貯金をしているという結果が出た。そして、貯金の目的に関しては「いざという時のため」が65%と圧倒的に多くなっている。
高い物を買うためではなく将来のために貯金するという傾向は、不安定な社会で生き残ろうとする意識の表れであろう。
しかし、堅実な彼らもスイーツやインテリア雑貨、カフェにはお金を使う人が多い。
おそらく、自分の行動に自信を持てない彼らは、右肩上がりを知っているバブル期の人々のように思い切ってローンで何十万何百万という贅沢品を買う勇気が無いのではないだろうか。多額のローンを組んでもこの不安定な世の中、返せるという保証はない。失敗したくないので、自分の手に届く範囲内で「プチ贅沢」を楽しむのである。
2-2-2 就職観の変化
バブル期は就職活動生にとって超売り手市場であった。最高値の1991年卒の大卒求人倍率は2.86倍 と、多くの企業が学生を他の企業に取られないよう手を尽くした。
一度は上向きを経験し、企業から求められた経験のあるこの世代は、「頑張ればどうにかなる」という前向きな傾向が強い。
しかし、バブルが崩壊し就職氷河期に当たった世代(30代)からは大きく変わった。彼らの世代は第2次ベビーブームにも当たるため、激しい受験戦争を経験した。バブルで浮かれている上の世代を見て「頑張れば、将来幸せになれる」と受験を乗り越えたものの、社会に出る頃にバブルが崩壊。厳しい就職活動にフリーターや派遣労働者になる者も多かった。
この世代を精神科医の香山リカ氏は「貧乏クジ世代」と呼び、「内向き、悲観的、無気力……“自分探し”にこだわりながら、ありのままの自分を好きになれない。 」とその特徴を語る。
「貧乏クジ世代」の特徴はまさに草食系男子の特徴と共通するものがあり、この世代から草食系男子が派生したのは間違いないだろう。
「電通ウェルネスプロジェクト消費者調査2008」 で20代~60代の男女1000名にいまの時代が「生きづらい」と感じるかどうか聞いたところ、男女ともにもっとも「生きづらい」という回答が多かったのが30代であった。
同じく低成長時代に就職を迎えた現代の20代も、30代と同じく生きづらさを感じているかというと、そうではない。20代は男女ともに30代に比べて生きづらさを感じる人が10ポイントほど減少している。
これは、20代の多くがバブル期を知らない(覚えていない)からではないかと推測できる。上の世代がバブルを謳歌していたのを知っている30代は不公平感が強いが、20代は物心ついた時から低成長時代であったので最初から高望みもしていないため理想と現実のギャップが少ないのだ。
また、不本意な就職をした30代が転職や起業をしていく姿を冷静に見ていたのが20代である。転職をしてもキャリアアップをする人は少ないという現実を目の当たりにし、2006年にはライブドアの元社長・堀江貴文が逮捕され、気軽にベンチャーに手を出したら恐いという教訓も得た。
「危ない橋は渡らず、1つの会社で働き続けよう」という安定志向の高まりである。複数の調査からもその傾向が伺える。
図5は毎日コミュニケーションズの「2010年卒大学生の就職意識調査」 で「会社選択のポイント」として新卒者が挙げる項目を年毎にグラフ化したものである。「自分のやりたい仕事ができる会社」や「働きがいのある会社」が近年ポイントを落とし、代わりに「安定している会社」や「一生続けられる会社」がポイントを上げている。
キリン食生活文化研究所の「新社会人の飲食意識と仕事感」 に関する意識調査では、「入社が決まっている会社でずっと働きたい」が2005年の調査からわずか3年の間に18ポイント増えて52.7%に。「仮に転職しても自分のやりたい仕事をしたい」が16ポイント減って33%となっている。
同じ草食系男子世代でも、若い世代のほうがより自分たちより前の世代を冷静に分析し、低成長時代の社会に順応しようとしているようである。
2-2-3 結婚観の変化
2008年に放送されたテレビ東京系の番組『新ニッポン人現る2』 の「1秒でも早く結婚したい女たち」という企画で、次のデータが紹介されていた。
現在20代前半で「20代で結婚したい」と言う女性は8割以上。それに対して現在30代後半の女性に「20代の頃、20代で結婚したいと考えていたか?」と聞いたところ、「はい」は6割弱であったというものである。
なぜこのような差が生まれたのであろうか。
推測するに、キャリアウーマンの「アラフォー」女性達は男女雇用機会均等法の施行を機に時には恋愛も疎かにして必死に働き、「いつか良い人が見つかって結婚できるだろう」と考えていたと思われる。先の結婚まで見据えていなかったのである。
それに対して、何事にも失敗を恐れる世代であり、「アラフォー」女性達が結婚に焦る姿を冷静に見ていた20代前半の女性はキャリアプランが非常に現実的である。
現在21、2歳である私の周りにいる友人達のほとんども、現実的に先を見据えている。
たとえば、就職活動の自己分析で用いた「キャリアシート」では、皆一様に「5年はバリバリ働いて、30歳までに結婚して、33歳までには子どもを産んで仕事復帰したい。」と書いていた。そして皆の間で囁かれるのは「今は男性も安定志向が強いから、良い人はみんな社会人になってすぐ大学時代の恋人と結婚しちゃうらしい。」という噂。就職活動が終わると同時に「さあ今度は婚活しなきゃ良い人とられちゃう!」という友人を何人見たことだろうか。
特に、2010年新卒者は「リーマンショック」の影響で希望の職に就けなかった人が多いためか、「結婚では失敗したくない」と、1つ上の先輩達よりも婚活に熱心であるように思われる。
そして「1-2―2 肉食系女子」でも前記したとおり、現代の女性が男性に求める条件はバブル期の「3高(高学歴、高収入、高身長)」ではなく、「3低(低依存、低姿勢、低リスク)」である。
もちろん、相手の収入が多いに越したことは無いが、この不況期に高収入の相手を見つけるのは難しく、贅沢を言っていては婚期を逃す。それに一流企業でも倒産する時代であり、今後もその収入が見込めるとは限らない。幸い女性も男性と同様に働くことができるようになったので、共働きであれば相手に高収入を求める必要もない。その分、家事や育児を女性に任せっきりにしない協力的な男性、威圧的に振る舞わない男性、不安定な世の中を生き残っていける職業や生活力のある男性が求められるのだ。
このように、景気の悪化が女性の結婚観を変えているのは明らかだといえよう。
また、男性にも女性と同様に結婚観の変化が見られる。
バブル期より以前は、女性は専業主婦が当たり前、男性は結婚したら妻子を養わなければならないという決まりのようなものがあった。しかし、男女平等のもとで成長し、男性と同じように働く女性が周りに多くいる20~30代の男性には「妻子を養わなければ」という気負いはあまり無いようである。
2009年のオーネット「20~30代未婚男性の結婚意識調査」 によると、結婚後の配偶者の仕事に対する希望では「専業主婦」「派遣・アルバイト」を抑え、「フルタイムで働いてほしい」が40.4%を占めた。10年前の1999年より13.1ポイントも上昇しており、女性にも経済面を担ってもらいたいという意識が表れている。
夫婦共働きであれば、収入が少なくても、片方の会社が倒産してもリスクを2人で分担できる。景気悪化によって、男性にとっても結婚は経済的に「安定」を得るためのものになりつつあるようだ。
男性は出産のリミットが無いからか、女性ほど婚活に熱心にはならないようである。しかし、女性に経済面での分担を望む男性と、家事を分担してくれれば共働きでも良いとする女性は、互いの利害関係が一致しているといえる。男性がもう少し積極性を回復すれば、婚姻率は上がるのではないだろうか。
3. 終わりに
人間は日々変化していると、今回の研究を通して強く感じた。そして、若い世代ほど変化が大きい。若者は社会の動きに敏感で、それに必死に適応しようとしているのである。草食系男子も、肉食系女子も対照的であるように見えて、今の社会で生き残ろうとするがゆえの進化形であるという点では同じだ。
いつの時代も大人達は「まったく、最近の若者は…」と口にするが、大人達の作ってきた社会を反映して今の若者が在る。どうか見放さず、温かい目で見て頂きたい。
今後も、若者は時代に合わせてどんどんと進化を遂げていくであろう。本稿では今の10代について触れることができなかったが、どうやら平成生まれは草食系でもなく肉食系でもなく、「雑食系」であるという 。
私もいつの日か「最近の若者は…」と感じる時があるだろう。その時には、自分達の世代がどういった社会を作ってきたのか、今一度振り返ってみたい。