先日、東京国立博物館の東洋館(リニューアルしはったの)を拝見してきたんですが、そこで、おおっ!?と思ったことがあったので。
・東京国立博物館 東洋館リニューアルオープン | 弐代目・青い日記帳
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3091
「約3年のリニューアル期間を経て世界のどの美術館も羨むような素晴らしい展示空間へ生まれ変わりました。」
↑この記事を読んでたので、楽しみにしてたです。
入室前にもらったフロアプラン兼解説パンフには、
「テーマは 旅!」
と「!」付きで目立たせて書いてました。
曰く「東洋館は「旅するギャラリー」です」と。アジア各地域の、各時代の歴史をめぐり、それぞれに思いを馳せる旅である、と。
なるほどねー、と思います。
展示室に入ってすぐ、天井が高いっ、とか。
天井が高いから、背丈の高い仏像さんが余計にしゅっとして見えてかっこいい、とか。
あと、ほかにも読んでて気になってた記事↓があって。
・木下史青氏に聞く東洋館リニューアルのポイント | 弐代目・青い日記帳
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3105
「近寄っても自分の顔がほとんど映らないのが実感できると思います。これは低反射ガラスを用いているからです。」
・生まれ変わった東洋館─新しい展示ケース | 東京国立博物館 - 1089ブログ http://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/2012/12/20/
「改修後は展示台を単純にガラスで覆ったケースとすることで余分なものがそぎ落とされました。作品を間近でみると作品がケースに入っていない展示のようにも見えます。」
それで実際見に行ってみると、確かに、ガラスがとてつもなくきれいというか透明で、すっごく見やすい。見やすいって言うか、ガラスなんかもうそこに無いものとしか思えてない。ぼーっと見歩いてると、たまに室内に小さな雲か煙みたいなのが浮かんでるのが目に入って、え、なに?って思うんだけど、よく見たらそれはガラス板を誰かが触って付いちゃったときの手の脂で、それが宙に浮いてる何かに見えてしまうほどに、ガラスの透明度がハンパないっていう。反射・うつりこみが少ないっていう。先に「竹内栖鳳展」で痛い目を見てた(http://egamiday3.seesaa.net/article/382848898.html)だけに、これはなんという驚きの見やすさかと。驚きの透明感かと。たまにテレビで見る、あまりに海の水が透明でボートが宙に浮いてるように見えてしまうっていう、あれ。
しかも、ガラスがでかい。でかいっていうのはつまり、継ぎ目がなくて一枚の面積がすごいでかいガラスとかが壁展示にあって、横にも縦にも幅広に継ぎ目がなくて、なんていうんでしょう、もう壁とかケースとかいうレベルではなく、施設・設備というレベルですらない。ひとつの大きな”世界”をそこに設けているというレベル。そのくらいのガラスのでかさ、ガラスがこの世界を枠組みしちゃってる感。
ごめんなさい、もうこれ白状しちゃって、懺悔告解しちゃっていいですか。
もはや展示品なんかいっこも見てませんでした。何が展示されてたなんかいまはほとんど覚えてない。
ずっとガラスばかり見てました。
すげえななんだこれ、って。
なんか照明器具もいちいち柔軟で使いやすそうで高技術っぽくて、しかもかっこいいし。
なんだこれって。どこのプロデューサーだって。
ていう感じでぶらぶらと見てまわって(注:ガラスを)、ふと、自分がいるフロアを眺めてみると。
フロアが、なんか宙に浮いてる。
入室してすぐのエントランス、天井の高い吹き抜けの展示室の、その上のほうの中空にあたるところに、薄ーいチョコ板みたいな細長のフロアがあって、それがあたかも吹き抜け中に浮いてるような感じになってる。あと、そのひとつ上やひとつ下のフロアも、細長くたがいちがいに浮かんでる感じになってる。
あれ、これスーパーマリオの雲の面とか高い木の面のやつじゃないの、ってとっさに思ってしまうような世代の生まれですよ。
とかなんとかいらんこと考えてて、じゃあまあもういい時間だし帰るか、って、帰ろうとするじゃないですか。
なんか、帰れないんですよ。
4階から下へ行こうと階段をおりる。3階にでる。あっちに階段があるらしいからって行ったら、そこには上り階段しかなくて、また4階に戻る。
・・・あれ?ってなる。
さっき入ってきたはずのあの広いエントランスに戻りたいだけですから、ひとフロアづつ階段を事務的に下りていけばいい。そのくらいにしか思わないじゃないですか、ふつー。でもそれだと帰れないんですよ。
4階からは3階にしか行けないし。
5階からは3階に行けるし。
B1階から上にあがったら2階だし。
なんというトリッキーなことでしょう、これほんとにリニューアル後のアフターか、改善前のビフォーじゃないのか、じゃなきゃいま流行りのリアル脱出系か、っていう理不尽なフロアプラン。事務的な移動なんてぜんぜん通用しなくて、ひとつ上なりひとつ下なりに行こうと思ったら、フロアの反対側だのその裏側だのまですっげえ大まわりで歩かなきゃいけない。じゃなきゃ、意図しないフロアに出る。出たところで、あれ、なんだこんな展示室あったんだとか、この展示品まだ見てないや、ってなって、またしばらく見ちゃってる。帰れないっていうか、帰らなくなってる。
なんだこれ、まるで彷徨える旅人じゃないか。
・・・・・・あ。
「テーマは 旅!」
あ、ほんまやw ((c)明石家さんま)
パンフ解説の続き。
「ここ東洋館は建物の構造がちょっと複雑で、迷ったり、すぐに目的の展示室へ行けなかったりするかもしれません。けれどもそれも旅の醍醐味です。疲れたら一息つけるオアシスもあります。」
いやあ、解説文ってちゃんと読んどくべきですね(笑)。
旅がテーマです、旅するギャラリーです、っていう触れ込み文句があったとしても、たいていはまあ抽象的というかイメージでそういうことゆってるんだろうな、くらいにしか思わないもんですけども、ことここに限って言えば、なるほど確かに「旅するギャラリー」としか言いようがなかったです。存外に、旅が具現化されてました。
場としてのミュージアムとしては、空間とか建築とか施設設備を感じるのがまあ常だと思うんですが。ミュージアムの中に”道”が延びているのを感じたのは、あまりない経験かもです。そして、道を歩くのが旅なら、この東洋館全体はまぎれもなく”世界”だな、って思います。東洋がひとつの”世界”なら、”世界”を描いた空間が、象りがここにあったんだなあ、って。
そしてそれは、見知らぬ展示品との思わぬ出会いを得られるように、設計された道なんだろうなとも思います。
結果として。
ああ、旅に出たい! 俺を旅に出させろ!
という気にさせてくれる博物館でした(そんな意図なかったとは思いますが)。