「女子はスポーツに向かない」という偏見
今やオリンピックだけではなく、多くの国際競技大会では、女子のアスリートの競技が注目されている。
私たちは女子スポーツを当たり前のように観戦しているが、実は「女子はスポーツに向かない」という偏見は、世界の中で長く続いていたのだ。
紀元前9世紀から紀元後4世紀にかけて行われた古代五輪では「女子禁制」であったし、近代五輪の父と呼ばれるクーベルタン男爵も女性の参加には反対していたと言われ、1896年にアテネで開催された第1回大会も女性選手は1人もいなかったのだ。
はじめて女子選手が参加したのは1900年の第2回パリ五輪からであったが、女子選手の数はきわめて少なかった。
たとえば、日本のお家芸と言われる「柔道」。これは1932年の第10回ロス五輪で公開競技として登場し、1964年の第18回東京五輪で正式競技となり、日本に多くのメダルをもたらしてきた。
ところが「女子柔道」は、1988年の第24回ソウル五輪で公開競技、さらに1992年の第25回バルセロナ五輪で、男子競技に遅れることなんと30年もたって、やっと正式競技になったのだ。
日本柔道界ではいまでも「女子柔道強化選手による暴力告発問題」やセクハラ問題が起こり、根強い女子差別を感じさせる。
そして、こちらも日本のお家芸と言われるレスリング。
1896年の第1回アテネ五輪から実施されていて、オリンピックを象徴する競技なのだが、「女子レスリング」は2004年の第28回アテネ五輪から実施され男子から遅れること110年!でやっと正式競技になったのだ。
つまり吉田沙保里選手は、最初の女子レスリング金メダリストのひとりであり、55kg級では3連続で金メダルを取っているため、彼女以外女子55kg級の金メダリストはまだいないのである。
近代五輪の歩みに重なる「働く女性」の姿
ここまでは格闘系の競技だから仕方ないのかなと思うのかもしれない。
しかし日本の得意とする「マラソン」。これも「女子がマラソンを走ることは生理的に困難」と信じられてきた。
こちらも1896年の第1回アテネ五輪から実施されるオリンピックを象徴する競技なのだが、「女子マラソン」は、1984年の第23回ロス五輪から実施され男子から遅れること90年でやっと正式競技になったのだ。
今では一般の市民ランナーも楽しむマラソンなのに、オリンピック競技になったのはわずか30年前なのである。