(※この記事は2013年9月号の記事です)
「Bitcoin」は、「P2Pネットワーク」で運営される「仮想通貨」です。
他の「電子マネー」とは異なり、「取引」を管理する「サーバ」がないため、「決済」に費用がかかりません。
ここでは、この異端なサービスである「Bitcoin」の仕組みを、説明していきます。
■ 大澤文孝
「Bitcoin」(ビットコイン)とは
インターネットでは、「クレジット・カード」や「銀行振り込み」が代表的な決済方法です。最近では、「WebMoney」(ウェブマネー)や「BitCash」(ビットキャッシュ)のような「電子マネー」も使われ始めています。
これらの決済方式は、「中央集権型」です。
お金の流れを「誰かが管理」していて、「何らかの決済サーバ」が存在します。
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それに対して、「Bitcoin」は、「P2Pネットワーク」で運営される「仮想通貨」です。「取引」を管理する「サーバ」はなく、電子署名技術が使われているため、完全に匿名で「決済」できます。
「決済」には、費用は一切かかりません。
さらには、「パソコンを使って莫大な計算に成功すると、Bitcoinを入手できる」という、「お金儲けの仕組み」も備わっています。
発明したのは日本人?
「Bitcoin」は、あまり有名ではなく、利用できる「取引」(ショップ)も多くありません。しかし、実験的なものではなく、実際に、「決済」に利用できるサービスです。
http://bitcoin.co.jp/
「決済」には、同サイトで配布されている専用ソフトを使います※。
※ただし、このソフトは「P2P接続」を必要とするため、「ファイアウォールの構成」が必要で、万人に使いやすいソフトとは言えない。
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「Bitcoin」は、2009年に「中本 哲史氏」が発表した論文が元になっています(参考文献[1])。この日本人が実在するか定かではありません。 噂の1つとして、コンピュータ学者のテッド・ネルソン氏の発言から、「中本氏は、京大教授の望月新一氏ではないか」という話があります。
ちなみに、望月新一氏は、「ABC予想を証明する論文」を発表した数学者です。
■ 「電子コイン」は「デジタル署名」で構成される
中本氏の論文によると、「Bitcoin」における「電子コイン」は、「デジタル署名のチェーン(連なり)」で示されます。「電子コイン」の所有者は、「決済」に使うときに、「直前の取引のハッシュ」と「次の所有者(=支払先)の公開鍵」を、「自分の秘密鍵」で「デジタル署名」したものを最後に加えます(図1)。
図1 支払うときに「デジタル署名」する
(参考文献[1]より抜粋)
「ハッシュ」というのは、「長いデータを、何バイトかに凝縮した計算値」のことです。
①少しでも「元のデータ」を変更すると、「ハッシュした値」は大きく違ってくる
②「ハッシュ」から「元のデータ」を計算するには、膨大な時間がかかる(逆算しにくい)
という性質を備えています。
このような性質から、「ハッシュの値が変更されないなら、元のデータも変更されていないに違いない」という、「偽造発見」の手段に用いられます(図2)。
図2 「ハッシュ」の例
(ここで用いた「ハッシュ」は、「SHA256」という形式)
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「Bitcoin」では、図1に示したように、支払時に「デジタル署名」するため、「たしかに、その人が支払った」ということが分かります。そして、過去の「取引履歴」は、「ハッシュ計算」で連なっているため、「これまでの取引履歴が偽装されていない」ということも分かります。
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なお、ここで、「その人が支払った」とか「支払い履歴が分かる」と言いましたが、あくまでも、「どんな公開鍵で署名されたのか」ということまでしか分かりません。「公開鍵」は「匿名」で作れるので、「個人が特定される」ことはありません。
逆に言うと、「公開鍵」と「秘密鍵」のペアを忘れてしまったら、たとえ、「電子コイン」のデータが手元にあったとしても、「あなたの所有であること」を示せなくなり、使えなくなってしまいます。
「銀行」や「クレジット・カード」のように、「本人確認できれば復活できる」ということはなく、利用は完全な自己責任です。
RT @kanaya: 読むべし. http://t.co/niQzSjCS5F