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「ディズニーはデブに冷たい」訴えた米女子高生、世界3万人が賛同した理由

産経新聞 3月1日(土)11時26分配信

 2月16日の本コラムで、ステレオタイプな既成概念にとらわれず、さまざまな身体的特徴を誇示し、自己主張するリアルなマネキン人形が欧米で脚光をあびているというお話をご紹介しましたが、今回も、こうした動きに関連した欧米での興味深いエンターテインメント絡みのお話をご紹介いたします。

 米ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオといえば「白雪姫」(1937年)や「シンデレラ」(1950年)といった、すらりとした美しいお姫さまが主人公のアニメ映画を数多く世に送り出したことで知られていますが、そんな同スタジオに対し、米国在住のぽっちゃり体形の女子高生が「私のようなぽっちゃり体形のお姫さまをディズニー・アニメに登場させてください」と訴える請願活動をネット上で展開したところ、何と全世界から3万人以上の賛同者が集まったというのです。

 ■ヒスパニック系、ガン、不妊…「バービー人形」まで飛び火

 2月6日付英紙ガーディアンや2月4日付米誌タイム(いずれも電子版)などが報じていますが、この女子高生は米バージニア州ファームビルに住むジュエル・ムーアさん(17)です。1月末から米請願サイト「チェンジ・ドット・オルグ」で「すべてのボディーは美しい」と題した活動を始めています。

 自身を「ぽっちゃり体形の女の子」と評するムーアさんはこのサイトで「私と同じような(ぽっちゃり体形の)女性たちの多くは、自信を持とうと苦闘する一方、メディアが自分たちを良きキャラクターとして報じてくれることを望んでいます」と説明。

 「ディズニーがこれまでのお姫さまのように快活で素晴らしく、忘れ難いぽっちゃり体形の主人公を作ってくれれば、自分は醜いと感じている多くのぽっちゃり体形の女の子のためになると思います」と明言しました。

 さらに「子供の自信はメディアの報じ方と大きな相関関係を持っているが、メディアが良きキャラとして報じるぽっちゃり型女性は皆無です。大きな影響力を持つディズニー映画がこれを実行すれば、世界中に素晴らしいプラス効果がもたらされます」と訴え、ぽっちゃり型女性のお姫さまの採用を促しました。

 1月31日付米ヤフーニュースによると、ムーアさんは当初、ディズニー側に直接、こうした内容を訴える手紙を出そうと思いましたが、この問題をディズニー側に真面目に考えてもらう必要があると考え、雪の日の高校からの帰り道、署名活動に踏み切ることを決意したといいます。

 ■「金髪」「青い瞳」「スリム」…ステレオタイプ

 この呼びかけに米国だけでなく英国やカナダ、豪州、ニュージーランド、アイルランド、メキシコ、ロシア、チェコ、ルクセンブルクなど全世界の多くの女性たちが賛同。

「太っている方が健康的よ」「すべてのサイズの女性が美しいことを示しすとともに、ぽっちゃり体形の女性が自信を持てるようなより多くの役柄が必要だと思う」「デブを優しく言い換えただけの『ぽっちゃり』という言葉が嫌いだ」「ディズニーには(女性の)サイズや民族性を含め、その役柄を観客にポジティブに見せる責任がある」

「若い女の子たちは、すべての女性が(ディズニー・アニメに登場する)すらっと背が高くて、スリムで、ブロンドヘアでブルーの瞳じゃないことを悟り、自分自身を愛すべきだわ」といった真剣な書き込みであふれています。

 そもそも今回の一件、発端は、米で昨年11月に公開されたディズニー・アニメ「アナと雪の女王(原題フローズン)」(日本公開は3月14日)でした。

 昨年12月18日付英紙デーリー・メール(電子版)によると、本作のヒロインである王家の姉妹の妹アナに関し、米メリーランド州カレッジパーク大学の社会学者フィリップ・N・コーエン氏が社会学系サイトで興味深い問題提起を行ったのです。

 その内容は、ディズニーは一般的にほっそりした女性主人公をアニメ化する傾向があるが、彼女たちが物語の中で恋愛対象となる場合はさらに細く描かれると説明。「大きな目と小さな手はディズニーランド的女性らしさの象徴」であり、体が華奢(きゃしゃ)過ぎるこの主人公を「手首より目が大きいなど、体のスタイルが非現実的である」などと批判したのです。

 この批判を多くの欧米メディアが取り上げ、ムーアさんの請願活動につながったわけですが、一方で彼女の主張への反対意見も出ています。

 2月6日の米FOXニュースに登場した反肥満団体の創設者で知られる活動家、メレディス・ロスさんは、全米で子供の肥満が激増している現状などを踏まえ「危険かつ不健康(な主張)で、われわれは肥満を称賛したくはない。(米国では)多くの人が太り過ぎなのは知っていますが、ディズニーのお姫さまがそうなることは(肥満防止啓発のための)真に素晴らしいメッセージにはなりませんよ」と明言。

 ■“糖尿病お姫さま”“ガンお姫さま”は?

 さらに「肥満のお姫さまの物語をつくるなら、糖尿病やガンや不妊のお姫さまの物語を作る必要が出てくるし、ぽっちゃり体形のお姫さまを求めることは(裏を返せば)拒食症のお姫さまを求めることと同じじゃないの!」と訴えました。

 また「バービー人形」の製造発売元である米マテル社のデザイン担当副社長キム・カルモネ氏は、女性の美の究極のステレオタイプと揶揄(やゆ)されることも多い「バービー人形」について2月5日付英紙ガーディアンに「極端と非難されるバービー人形のスタイルは、着せ替えしやすくするのが目的で、バービー人形を本物の女性のようにデザインしたことは一度もない」と反論・憤慨しました。

 女性の社会進出の進展に伴う価値観の多様化や、ヒスパニック(中南米)系の激増に代表される人種の多様化を受け、ディズニーのアニメ映画には既にこれまでから、日本でも大ヒットした中東が舞台の「アラジン」(92年)や、米先住民族(ネイティヴ・アメリカン)のポウハタン族の娘が主人公で、異人種間の恋愛を描いた「ポカホンタス」(95年)や古代中国が舞台の「ムーラン」(98年)、黒人女性が主人公の「プリンセスと魔法のキス」(2009年)といった、ステレオタイプのお姫さまとは異なる主人公が登場し始めています。

 しかしその一方で、最近はこうした動きに逆行する出来事も起きました。昨年10月26日付米CNNテレビ(電子版)によると、ディズニーが製作発表した時点では、初めてヒスパニック(中南米)系のお姫さまが登場するテレビアニメのシリーズということで欧米主要メディアが大きく報じ、大変な話題となった「ソフィア・ザ・ファースト」も結局、昨年11月から当地で放送が始まりましたが、その直前に発表された主人公のお姫様、ソフィアのイラストを見ると、白い肌と青い瞳という従来のディズニー・スタイルのお姫様に変更されていました。

 このアニメを担当する「ディズニー・ジュニア・ワールドワイド」の原案編成部門上級副社長兼ゼネラル・マネジャーのナンシー・カーター氏はこのアニメ作品のフェイスブック公式ページに「最近のニュースで、ソフィアがヒスパニック系のお姫さまかそうでないかというニュースをご覧になられた方がおられると思いますが、われわれが知るべき重要なことは、ソフィアがおとぎの国に住むおとぎ話の女の子であるということです」と、何だかよく分からない言い訳を投稿しています。

 さて、ネット署名活動を展開するジュエルさんですが、彼女は、すらりとしたお姫さまを登場させるなと主張しているわけでは決してありません。

 彼女はディズニー側に、背が低かったりぽっちゃりだったり、洋ナシのような下半身デブだったり、いろいろな体形のお姫さまがいてもいいのではないですかと問うているのです。

 さらに、男の子にもすらりとしたお姫さま以外は受け入れられないという考えを捨ててもらうため、小さな男の子にもこうしたぽっちゃり体形のお姫さまが主人公のアニメを観てもらいたいと訴えています。

 ディズニーのアニメ映画にぽっちゃり体形のお姫さまは果たして、登場するでしょうか!?。(岡田敏一)

最終更新:3月1日(土)11時34分

産経新聞

 

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