【キエフ=石川陽平】ロシアのプーチン大統領は1日、親欧米派による政変が起きた旧ソ連・ウクライナの南端にあり、ロシア系住民が大半を占めるクリミア半島に軍事介入することを決めた。ウクライナの主権と領土の一体性を侵害するとして、欧米の猛反発を招くのは必至。欧州の安全保障体制を揺るがし、地域経済にも大きな影響を与えそうだ。
ロシア大統領府によると、プーチン大統領は1日、憲法の規定に基づき、上院に対し「ウクライナの社会、政治情勢が正常化するまで同国領内でロシア軍を利用する」ことへの承認を求めた。ウクライナの「異常な情勢」を考慮し、クリミア半島のクリミア自治共和国のロシア人住民やロシアが半島に持つ黒海艦隊の安全を確保するためだと説明した。
これに先立ち、自治共和国のアクショーノフ首相は1日、「領内の平和と平穏を守るため、ロシアのプーチン大統領に支援を求めている」と表明した。ロシア下院は1日「クリミアの住民を守るため、すべての可能性を利用する」よう大統領に求めた。マトビエンコ上院議長も軍事介入を容認する考えを示した。
ロシア軍はすでに自治共和国内で大規模な展開を終えたもようだ。ウクライナのテニュフ国防相代行は1日の政府閣議で、ロシア軍が約6000人をクリミアに増派したと批判。ウクライナ軍も高度警戒態勢に入った。ヤツェニュク首相もロシア軍兵士が黒海艦隊の基地を越えて展開しているとして「基地に戻るよう要求する」と表明した。
ロシアは2008年夏にも親欧米路線を強めた旧ソ連・グルジアの民族紛争に軍事介入し、南オセチアなど2地域の分離・独立を一方的に承認した。今回もクリミアのロシア系住民が中央政府に従わない姿勢を示したのを利用し、介入に乗り出した。
今回の軍事介入でロシアと、ウクライナや欧米諸国の関係が悪化するのは必至だ。ロシアと米国の核軍縮交渉や、米ミサイル防衛(MD)の東欧配備問題で対立が深まる可能性がある。欧米諸国はロシアの軍事介入を受け、ロシアが6月に主催する主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)への欠席を検討する考えだ。
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