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韓国は日本の潮目を見誤るな

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権が2月25日で丸一年を迎えました。国内では保守層に支えられ底堅い支持を得ているようです。ただ、対日関係では領土や歴史問題などで強硬姿勢を強め、首脳会談にも応じようとしません。「原則外交」を貫けば日本が折れ、譲歩を引き出せると思い定めているかのようにも感じます。我が国の政治家やメディア、有識者の中には、歴史や領土問題で韓国の主張に理解を示す声が一定数あったのも事実です。そうした声が、韓国側が自身の主張に自信を深める一因にもなってきたと思います。

 しかし、日本のメディアの論調には変化の兆しが見え始めています。2月24日付の毎日新聞朝刊の山田孝男氏のコラム「風知草」は、従軍慰安婦問題に関する「河野談話」の作成に関わった元政府高官(石原信雄・元官房副長官)を取り上げ、当時の日本政府は韓国側の言い分を尊重して謝罪したにもかかわらず、未来志向にはならなかったと石原氏の思いを代弁。
「河野談話の後、民間の『アジア女性基金』による補償が行われた。その後は韓国が慰安婦への補償要求をエスカレートさせている」
「新たな善意に基づく不用意な譲歩で混乱を広げるべきではない」
と論評しています。

 毎日新聞はこれまで従軍慰安婦を含め日韓の歴史問題について、韓国に融和的な立場を取ってきました。しかし、山田氏のコラムでは、日本が韓国の主張に理解を示しても、「情けも時にアダとなる。善意が曲解される」と書いています。国内世論の潮目は変わってきています。

 日韓両国には折り合えない問題はありますが、信頼関係を構築していかなければなりません。しかし、昨年11月に超党派の日韓議員連盟と韓国の韓日議員連盟が東京・永田町で合同総会を開いた際には、韓国排斥を呼びかけるデモ隊が押しかけました。政治家たるもの批判に右顧左眄せず、信念に基づいて行動すべきなのは当然です。一方で、朴政権の「原則外交」は、日本国内で韓国とのパイプを維持していこうとする人たちを厳しい立場に追いやり、対外強硬派を勢づかせる結果となっています。

 戦前、近衛文麿政権が「国民政府(蒋介石政権)を相手とせず」と表明して対話を拒否したように、隣国との門戸を閉ざすことを求める声が増しているように感じます。韓国側には、司法が慰安婦への補償問題を蒸し返し、政府に妥協を許さない空気が強いという国内事情はあると思います。そうだとしても、朴政権が現在の対日路線を継続すれば、韓国側にとっても好ましくない状況に陥りかねないことに気づかなければなりません。

山下雄平
参・自民/元時事通信・日経記者

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