【第17章】 女子高生の恐怖

 

「本当に申し訳ありませんでした」

 看護婦さんは正也に平謝りだった。気付かなかったとはいえ、正也は死ぬような目にあったのだ。おまけにオシッコで溺れた虫と間違われ、トイレに流されかけたというおまけつきだった。正也は女子高生のオシッコまみれの体を水道の水で綺麗に洗われた。看護婦さんの手のひらに乗せられ、体と服をドライヤーで乾かしてもらった。

 ようやく一息ついた彼は、レントゲンの検査の結果が出るまで待合室で待つことになった。ただ、病院の待合室は人通りも多く、こびとの彼にとってはとても危険場所であった。彼は病院の看護婦さんに頼んで、待合室の隅の本棚の上に置いてもらっていた。

「今日はさんざんな目にあったな…。ここに長居してもいいことはなさそうだ。明日香ちゃん、早く迎えに来てくれないかな…。しかし、どうして僕の体は少し大きくなったんだろう?このままどんどん大きくなって元の大きさにならないかな…」

 彼は自分の順番が来るまで、なぜ自分のサイズが少し大きくなったかを頭の中で色々と考えていたが、思い当たることはなかった。おたふくかぜの発熱とオシッコ騒動のため疲れていたのか、やがて強い眠気が彼を襲っていた。そして目を閉じかけたその時だった。急に上空から何かが被さり、真っ暗になったのだ。

「えっ!どうなってるんだ…」

彼は突然のことに驚いた。狭い空間に閉じこめられていたのだった。

「こ、これは…指?」

彼はそこが巨大な手に中であることにすぐに気付いた。

「明日香ちゃん?明日香ちゃんなの?」

彼は最初この手の主が明日香だと思った。しかし、何か変だ。明日香だったらもっと優しく僕を運んでくれるはず…。それに明日香が到着するまではまだまだ時間がかかるはずだ。しかも呼びかけても何も返事がない…。

「お〜い、僕を手の中に閉じこめたのは誰〜?」

正也は大声で叫んでいた。しかし、相変わらず返事がない。そうこうしているうちに彼はその巨大な指で締め付けられ身動きがとれなくなっていた。その手が彼を握りしめているのだ。拳の中で巨大な指を押しのけようとしたがびくともしない。まもなくその拳が激しく揺れ始めた。彼を握ったまま移動しているようだ。一難去ってまた一難だった。

「これは大変なことになったぞ…。誰かが僕を捕まえたんだ。誰なんだ、僕をつかんでいるのは…」

ギー…バタン!

ドアを開け閉めする音がした。どこかの部屋に入ったようだ。彼を閉じこめていた手がゆっくりと開かれていった。彼の目の前に見たことのない女の子の巨大な顔があった。まだあどけなさが残る顔だった。彼女の入った部屋は病院のトイレの中であった。

「君は誰?」

「こんにちは、こびとさん。私、佐藤沙也香っていうの。ごめんね、驚いた?こびとってTVとかでは見たことあるけど、生で見るの初めてよ。ここまで小さいなんて驚きね」

「ちょっと、どういうつもり?僕は『こびと』じゃない。縮小病で小さくなった君と同じ人間なんだ」

「あはは、私と同じ人間?何言ってるの〜?そんなにちっちゃいくせして」

彼女はまだ高校生であるが故に、縮小病についてあまり知識がなかった。TVなどで縮小病のお笑い芸人がアイドルにオモチャのように扱われ、いいなりになっているシーンを何度も見るうちに、「縮小病患者イコール女の子の言うことは何でも従う小さくて哀れな生き物」という認識しかなかったのである。この傾向は沙也香だけでなく、TV世代である女子高生共通の認識だった。視聴率第一主義のTV番組の弊害であった。

「……と、とにかく僕を元の所に戻してくれ!」

「だ〜め!もうあなたは沙也香のものだもん」

「ちょ、ちょっと、冗談はよしてくれよ。何をするんだ!僕は“もの”じゃない!」

正也は久しぶりに怒りがこみ上げて、彼女の指を蹴ってしまった。しかし、この冷静さを欠いた彼の行動が、彼女をエスカレートさせることとなった。

「ちょっと〜、チビのくせして何するのよ!」

沙也香は蹴られた指に痛みなど感じることはなかったが、彼の行為にむかついたのか、少し力を入れて彼の小さな体を指で挟んだ。

「うっ、イテテ……や、やめて…くれ…」

正也は息が出来ないほど巨大な指でお腹を押されていた。

「ねぇ、あなた何か勘違いしてるんじゃない?そんなにチビのくせして、私と同じ人間なわけないでしょう?あなたは沙也香が捕まえた小さな虫なのよ」

「む、虫だって?」

「そうよ。虫よ」

 実際、沙也香にとっては、草むらの葉っぱにとまっていた小さな虫を捕った程度の感覚でしかなく、罪悪感など微塵もなかったのだ。

「あなた、今さっき私のオシッコの検査のコップの中にいたでしょう?」

「えっ…?」

 正也は驚いた。そう言えば、この声は聞き覚えがある。看護婦さんと会話していた女子高生の声だ。彼を捕まえたのは、彼を紙コップの中に入れたままオシッコをした女子高生だったのだ。

「私ね、今、看護婦さんから聞いたのよ。私がオシッコが入った紙コップの中に縮小病の男性がいて、死ぬような目にあったって」

「そ、それは心配しなくていいんだよ。僕は気にしていないから…」

「心配ですって?あなた何言ってるのよ!被害者は私なのよ!」

「……」

沙也香の怒りの表情に、彼は言葉も出なかった。

「あなた、私がコップを拾ったときからずっと中にいたのよね?」

「あ、あぁ…」

「ということは、私のアソコも見たってことでしょう!」

「そ、それは…」

「ふ〜ん…やっぱり見たのね」

「そ、そんなぁ…。僕はただ看護婦さんに気づいてもらいたくて…」

「言い訳なんか聞きたくないわ!女の子の大事なところを至近距離から見ただなんて、最低の変態チビね」

「違う!…む、無実だ!」

「もう何を言ったって無駄よ。私の大事なアソコを見たチビをこのまま帰すなんて絶対にできない。あなたには罪を償ってもらう必要があるわ。私をこんなに恥ずかしい思いをさせたんだから、最高刑が必要ね」

「罪を償うって言ったって…」

「そうねぇ…。ふふふ…あなたのような変態チビにお似合いの刑を思いついたわ。ねぇ、こびとを入れて使う下着が女子高生の中で流行ってるって知ってる?と言っても縮小病の人って殆どいないし、普通はみんな中に小さな人形を入れてるんだけどね。もちろん私も使ってるわ。お気に入りの人形を入れてね。でもいつかは本物のこびとを入れてみたいって思っていたのよ。あなたをその人形の代わりに使うっていう刑はどうかしら?」

「ま、待ってくれ、だから言ってるだろう、僕は君のアソコを見ようとコップの中に入ったんじゃないって」

正也は大声で叫んだ。

「もう、まだわからないの?生意気な虫ね」

 彼女は右足のローファーを脱ぐと、それを持ち上げ、彼をその中に放り込んだ。彼はお尻から靴底に着地し、全身の痛みでうめき声をあげていた。ローファーの中は、息も出来ないくらい、沙也香の足の強力な臭気で充満していた。沙也香はローファーを再び床に降ろし、ソックスを脱いだ。

「あなたって生意気だから、靴の牢の中に閉じこめることにするわ。うまく逃げないと、私から踏みつぶされるかもね」

上空から戦慄の死刑宣告が響いた。

「な、何だって…」

彼は慌てて上を見上げると、ルーズソックスを脱いだ彼女の巨大な生足の裏が、靴の中へと降ろされてきたのだった。

「わぁっ〜〜っ!…た、助けて!!」

正也は急いで立ち上がると、靴のつま先の方へと走り出した。靴の中が急に暗くなった。彼を追いかけるように巨大な5本の指が侵入してきたのだ。臭気がますます濃くなっていった。彼は靴の先の行き止まりのところで壁に背中をぴたりとつけながら、呆然と近づきつつあるその巨大な指を眺めるしかなかった。

 彼女の中指が彼をゆっくりと押しつけてきた。彼は両手でそれを押し返そうとしたが、びくともしなかった。

「くっ、このままでは押しつぶされてしまう…」

彼はなんとか中指と人差し指の隙間に入り込んだ。真っ暗になった。沙也香が完全にローファーを履いたのだ。正也は狭い靴先の中で両側から巨大な指に挟まれ身動き一つとれないでいた。指の間は汗と汚れで蒸れ蒸れで、臭いも目も開けられないほどの最高レベルに達していた。

 沙也香は笑いをこらえきれずにいた。足の指の間でこびとがチョコチョコ動いてくすぐったかったのだ。今、自分の靴の中にこびとがいる。彼の小さな命は沙也香の足の指の僅かな動きでぷちっと消えてしまうだろう。彼女は「小さな生き物」の命を蹂躙している自分の力にゾクゾクしていた。

「ぐ、苦しい…」

沙也香のローファーの中で、正也は巨大な指の万力のような力で挟み込まれていた。といっても彼女がわざわざ力を入れているのではなく、ローファーを履いたことによって、自然と指の間が狭まっただけのことである。

「た、助けて…お願い…こんなところで死にたくない…助けて…」

彼は女子高生のローファーの中で、涙を流して懇願していた。意識も薄れかけていた。沙也香はしばらく足の指で正也を弄んだあと、彼を挟んだまま靴から足を出した。彼女は便座に座っていた。正也を指で挟んだ足を、薄ら笑いを浮かべながら上下にブラブラと動かしていた。

 しばらくして沙也香は指の間から正也をつまみ上げた。

「ねぇ、最後にあなたに人生の選択のチャンスをあげるわ。今、踏み潰されて女の子の足の裏の小さな染みになりたい?それとも女の子の所有物として生きていたい?どっちがいい?」

沙也香の巨大な瞳の前につまみ上げられた正也は、究極の選択を迫られていた。

「さ、沙也香ちゃんの……しょ、所有物に……なり…た…い…です…」

正也は屈辱の敗北宣言をした。

「ふ〜ん…じゃぁ、沙也香のものにしてあげるわ。ただし、まず沙也香に今までのことを謝りなさい。そしたら許してあげる」

 彼女は冷たい笑顔を浮かべていた。正也は危険な状況だった。このまま抵抗すると、本当に踏み潰されそうだ。今まで女子社員に虐められることは何度も経験したが、初対面の女の子からここまで大胆に暴力的なことをされたのは初めてだった。相手は女子高生であったが、あまりにもサイズが違う巨人であり、とても太刀打ちできない。あどけなさが残るかわいいい顔からは想像も出来ない酷い仕打ちに、正也は背中に冷たいものが走った。

「…今まで逆らったり…申し訳ありません。…ぼ、僕は…沙也香ちゃんの…もの…です…」

「やっとわかったみたいね。それじゃ、今から君は沙也香の持ち物だよ。絶対服従だからね」

彼女はスカートをまくり上げると、パンティを降ろし、中から小さな人形を取り出し、正也に見せた。新陳代謝が盛んな女子高生のアソコの匂いや染みがこびりついて変色していた。

「ねぇ、見て。これはねパンティの中で一日中使っていた沙也香お気に入りの人形よ。でも今日からこれもいらないわね。わかるわよね?今から、人形の代わりにあなたが沙也香のパンティに入るの」

「そ、そんな…」

「何がっかりしてるの?女子高生のパンティの中にこれからずっと入れてもらえるのよ。喜びなさいよ」

「……」

彼は何も言えなかった。少しでも抵抗しようなら、酷い仕返しをされるだろう。

「元々このパンティは縮小した男を入れるために作られたものだから、やっと本当の使い方ができるわね。ねぇ、ところで君の名前はなんていうの?」

「ま、正也…です…」

「ふ〜ん、正也ね……。あのさぁ、お前はもう私のパンティ専用のこびとなんだから、今日から名前を変えなよ。そうだ、おチビの正也だから『チビマサ』がいいわ。チビマサにしよう〜っと」

彼は見ず知らずの女子高生にペットのような扱いを受けた上に屈辱的な名前を命名され、唖然とするしかなかった。

「どうしたの?かわいい名前でしょう?返事しなさいよ、チビマサ!」

「は、はい…」

「ねぇ、自分で名前を言ってごらんよ。あなたの名前は?」

「僕は、…チビ…マサ…です…。」

正也は震えながら小さな声で答えた。

「ははは、そうよ。これからずっと可愛がってあげる。ねぇチビマサ、今から私のことは『沙也香様』って呼ぶのよ」

「沙也香…様?」

「当たり前でしょ?だって私はあなたの持ち主なんだもん。さぁ、もう一度言うの!」

「は、はい…沙也香様」

「そうよ、チビマサ。ずいぶん素直になったじゃない。ようやく沙也香の持ち物としての自覚が出てきたみたいね」

沙也香がパンティから取り出した人形は、ちょうど彼と同じくらいの大きさだった。

「うふふ…この人形はね、沙也香のアソコに一日中あてがわれてたんだよ。それだけじゃないわ。放課後とか、トイレで収納ポケットから取り出して、アソコに擦りつけたり挿入したりしてあげるの。だからいつもこんなに汚れちゃうの。友達もみんなやってるのよ」

「……」

 彼は縮小男性を入れて使うパンティが爆発的に売れていることは知っていたが、まさか女子高生の間でこんなことが流行っていたとは…。

「それじゃぁ、早速あなたを使わせてもらうわ」

彼女はいきなり彼をつまみ上げ、パンティの中の収納ポケットに入れようとした。

「ま、待って、いやだ〜!」

正也は大声で叫び、体を揺らして抵抗した。

「も〜また暴れてる…こびとって体だけじゃなくて脳みそも虫並ね…」

ドスッ!!

彼女は片方の手の指で彼の小さな体をデコピンのように弾いた。

「ぐっ…い、痛い…ううっ……」

彼はあまりの衝撃と痛みのため、意識が朦朧となりうなり声をあげていた。

「チビマサ、あなた馬鹿じゃない?いくら暴れたって無理だってわからないの?もう二度と抵抗したらだめよ。悪いけど、あなたは沙也香を気持ちよくさせるためだけに使われる小さな用具なの。もう一生私のパンティの中であがなうのよ」

沙也香は収納ポケットの中に彼を放り込むと、そのままパンティをはいたのだった。

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