南海トラフ:震災がれき、東日本の11倍 処理に19年

毎日新聞 2014年02月28日 20時28分(最終更新 02月28日 23時13分)

南海トラフ地震の想定領域
南海トラフ地震の想定領域

 環境省は28日、南海トラフ巨大地震が起きた場合に発生するがれきなどの廃棄物は、最大で東日本大震災で生じた約3000万トンの11倍に当たる3億4900万トンに上るとの推計を発表した。全国で広域処理しても、焼却・埋め立てを終えるには19年以上かかる見込み。首都直下地震では最大1億1000万トンのがれきが発生、処理に6年半かかるという。一方、災害に備えて他の自治体と広域処理の協定を結んでいる都道府県は、30%にとどまっていることが分かった。

 阪神大震災や東日本大震災での震災がれき発生量を基に試算し、同日東京都内で開いた専門家会合で示した。推計によると、南海トラフ巨大地震の場合、東海沖から九州沖までどこで発生しても全国でがれきや津波堆積(たいせき)物などが計3億トン前後生じる。最大は、東海地方が大きく被災するケース。冬の夕方に平均を上回る風速8メートルの風が吹くと、火災が多発して3億4900万トンが生じるという。

 このケースでは、近畿地方で最も多い1億1700万トンが発生。既存の焼却・埋め立て施設を使って域内で処理すれば44年9カ月かかるという。8500万トンの発生が見込まれる四国地方は処理施設が足りず、域内処理に142年1カ月かかる。全国で広域処理すれば大幅に迅速化できるが、それでも19年4カ月かかる見通し。放射性物質による汚染は想定していない。

 首都直下地震の場合、火災の広がり具合によって、がれき発生量は大きく変わり、関東地方で6500万〜1億1000万トンが生じると予測。これを域内の施設で処理すると15年3カ月〜25年11カ月かかるが、全国で広域処理すれば3年10カ月〜6年6カ月に短縮できるという。

 環境省が都道府県を対象に実施したアンケートによると、他の都道府県や県外の市町村と広域処理協定を結んでいるのは30%で、そのうち50%は、巨大地震で同時に被災する恐れがある自治体としか結んでいなかった。同省は「東日本大震災を契機に広域処理の連携が進みつつあるが、まだ不十分だ」と指摘した。【阿部周一】

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