2014/02/28(金)更新
スペイン・フラメンコ界ではとても大きな存在であり、アル・ディ・メオラとの共演で世界的に有名なギタリスト。初期作品や映画での演奏など興味深い映像も多数あります。
2014年2月26日、フラメンコ・ギターの巨匠パコ・デ・ルシアが公演のために訪れていたメキシコのカンクンで、急に体調を崩し亡くなった。死因は心臓発作だとされている。
超絶なる技巧を有したギタリストであり、フラメンコを世に知らしめたひとりである。スペインのアンダルシア地方にある、アルヘシーラスという小さな港町で生まれた。デビューは早く、12歳の時に兄のペペ・デ・ルシアと二人で初レコーディング。天才少年の名をほしいままにし、60年代の半ばからは、リカルド・モドレーゴやラモン・デ・アルヘシラスと組んで活動した。
1967年に、初めてのソロ・アルバム『La fabulosa guitarra de Paco』を発表し、フラメンコ・ギターの新星として一躍脚光を浴びる。さらにパコ・デ・ルシアの名を世界中に知らしめたのは、元リターン・トゥ・フォーエヴァーのギタリスト、アル・ディ・メオラとの共演であった。
ディ・メオラの77年のアルバム『エレガント・ジプシー』に参加し、優雅で密度の高い演奏を聞かせてくれた。このことによりパコ・デ・ルシアの名前は、ジャズ/フュージョン界にも知れ渡っていく。その後は、ジョン・マクラフリン、ラリー・コリエルとの3人でスーパー・ギター・トリオを結成、ライヴ活動の幅を広げていったのだ。映画音楽にも寄与していて、カルロス・サウラ監督の『カルメン』『セビジャーナス』などの作品に関わり、自らも映画の中に出演している。
「Bulerias」
テレビ番組の中で、兄のペペ・デ・ルシアと共演したもの。70年代に入ってからの映像だと思われる。テーブルを使ってのパルマのビートにのり演奏されていくが、目をつむり瞑想でもしながら弾くのがパコ・デ・ルシアの独特のスタイルだ。
「Guajira Flamenca」
パコ・デ・ルシアが先輩のリカルド・モドレーゴと組んで作ったフラメンコ・ギターの二重奏アルバム『ドス・ギターラス・フラメンカス・エン・ステレオ』からの1曲。当時パコは17歳、その早熟過ぎる演奏ぶりに注目したい。
「Tico Tico」
67年にソロ・アルバム『La fabulosa guitarra de Paco』を発表した直後の映像だ。パコ・デ・ルシアはまだ二十歳になったばかりのはず。落ち着き払った演奏には、ただただ驚いてしまう。
「Entre dos aguas」
70年台のパコ・デ・ルシアを代表する1枚。アルバムの邦題は『炎のギタリスト』。エレクトリック・ベースやラテン・パーカッションを従えて、新世代のフラメンコ・サウンドを標榜していった。
「Mediterranean Sundance」
パコ・デ・ルシアの名前を世に知らしめた、アル・ディ・メオラの77年のアルバム『エレガント・ジプシー』より。邦題は「地中海の舞踏」。右からはアル・ディ・メオラのアコースティック・ギターが、左からはパコ・デ・ルシアのガット・ギターが鳴り響いていく。その両者が、互いに寄り添うように競いあうように、音の中を舞っていくのだ。
「Meeting of the Spirits」
79年から80年にかけて、パコ・デ・ルシア、ジョン・マクラフリン、ラリー・コリエルの3人はユニットを組んで、全世界をツアーして周った。これはその時にライヴ映像。ユニットを組んで、全世界をツアーして周った。これはその時にライヴ映像。
「Mediterranean Sundance」
スーパー・ギター・トリオは、パコ、マクラフリン、アル・ディ・メオラという組み合わせでもライヴ活動をしている。その80年のライヴより。それぞれが渾身のプレイをしているが、その魂の交歓ともいえる演奏が刺激的だ。
「Spain」
90年にパコ・デ・ルシアは、チック・コリアをゲストに迎え入れ『Zyryab』を制作する。逆にパコは、コリアの82年のアルバム『タッチストーン』に参加することとなるのだ。この「スペイン」でも、素晴らしい交流を聞かせている。
「Stop Crying」
スペイン映画界を代表する巨匠カルロス・サウラ監督が、古典的名作『カルメン』をミュージカル仕立てにした映画。パコ・デ・ルシアが音楽を担当し、フラメンコのダンサーでもあるアントニオ・ガデスが主演した。
「Tangos」
スペイン映画界を代表する巨匠カルロス・サウラ監督が、フラメンコを取材した映画が、この2010年の『フラメンコ・フラメンコ』だ。95年に製作された『フラメンコ』の続編となる。他にも、マノロ・サンルーカル、ホセ・メルセらが登場してくるが、パコは自身のセクステットで出演している。
「Live at the Montreux Jazz Festival 2012」
2012年にスイスのモントルーでおこなわれたジャズ・フェスに出演した際のライヴ映像だ。甥のアントニオ・サンチェス、ハーモニカのアントニオ・セラーノなども参加している。
毎年フランスでおこなわれている「Festival de Fes des musiques sacrees du monde」の2013年のステージから。若々しく、エモーショナルなプレイを繰り広げている。こんな演奏を見ると、パコ・デ・ルシアの死が如何に残念なことか、身にしみて感じてしまうことだろう。
■この筆者「小川真一」の関連リンク
Facebook:
http://facebook.com/ogawa.shinichi
Twitter:
https://twitter.com/#!/shinichiogawa
■この筆者「小川真一」のコラム
読むナビDJ 第96回:追悼 ムーンライダーズのダンディ・ドラマー、かしぶち哲郎の名演15選+1
読むナビDJ 第93回:追悼 名ドラマー、青山純の名演16選+2
読むナビDJ 第76回:追悼 J.J.ケイル 名作10選
読むナビDJ 第75回:ドン・ウォズのプロデュース・ワークス名作10選パート2
読むナビDJ 第73回:ドン・ウォズのプロデュース・ワークス名作10選パート1
読むナビDJ 第66回:ミュージック・メイカー、アラン・オデイのベスト・ワークス12選
読むナビDJ 第62回:NY派スタジオ・ギターの名手、ヒュー・マクラッケン・ベスト・ワークス12選
読むナビDJ 第60回:名プロデューサー、フィル・ラモーン エンジニア/プロデュース・ワークス名作12選
読むナビDJ 第59回:ジャグ・バンド・ミュージックを楽しむための10選
読むナビDJ 第53回:ダニエル・ラノワ・プロデュース・ワークス名作10選
読むナビDJ 第48回:キャラメル・ママ~ティン・パン・アレー作品集 パート2
読むナビDJ 第47回:キャラメル・ママ~ティン・パン・アレー作品集 パート1
読むナビDJ 第46回:追悼 佐藤博ワークス10選 パート1
読むナビDJ 第39回:ペダル・スティール・ギターで聴く、ウエストコースト・サウンド名作10選
読むナビDJ 第35回:イーグルスだけじゃない、70年代ウエストコースト・ロック・バンド名作10選
コラムスピン 第63回:超低価格化が進むCDとダウンロード販売、投げ売り音楽業界に明日はあるのか?