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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

進学塾「粉飾」の裏のハコ企業

2014年02月28日 [reuters]

東証1部上場の進学塾運営会社(東証1部)の周辺が慌ただしくなっている。過去数年間にわたって80億円余りの売上高を不正に水増ししていたことが明らかになり、当局は本格的な捜査に乗り出そうとしているようだ。すでに「この会社の本社所在地近くの警察署を拠点に内偵捜査が始まっている」との情報が飛び交うとともに、水面下では各マスメディアも動き出している。

第三者機関の調査結果によると、この進学塾が粉飾決算を始めたのは2007年だという。さらにこの進学塾が監査法人を変更したのも粉飾決算が始まったのと同じ時期だった。企業が監査法人や取引銀行を乗り換えるというのは、何か大きな問題が浮上し、対立が深刻化したと見てまず間違いないから、監査法人の交代と粉飾決算は何らかの関係があったとみるのが自然だろう。

粉飾決算の発覚を受けて社長以下、3人の役員が引責辞任したが、売上拡大の旗振り役だった会長は会社に残り、社長を兼務することになった。しかし会長の責任の取り方が不十分なうえ、対外的な説明も満足のいく内容ではなく、捜査が本格化すればマスメディアの取材攻勢が強まるのは必至だ。

ここでもうひとつ気になるのは、粉飾が始まったのとちょうど同じ時期にハコ企業との接点もできていた点だ。2007年にあるIT企業と資本・業務提携を結んで株式の持ち合いを始めており、不健全なもつれ合いがスタートしていたのだ。

このハコ企業はもともと業績も財務内容も散々な内容で、特定の海外投資家を相手に苦し紛れのエクイティ・ファイナンスを行って株主構成が大きく変わったり、監査法人をころころと変更したり、事業内容をがらりと変えたり、経営の迷走ぶりが目立っていた。

最近になって筆頭株主である非上場の投資会社から代表取締役を迎え、近く投資会社に合わせて社名変更もするそうだから、実質的な裏口上場であり、怪しい会社の条件の多くを備えていることになる。

現在、進学塾とハコ企業の関係は当初に比べて薄れているもようだが、売上至上主義に走るあまり、提携相手をよく知らないまま無理な提携を急いだのか。売上高の水増しをしていたくらいだから、提携効果は上がっていなかったのだろう。

進学塾や語学学校などは同族経営の会社が多いこともあって、経営陣の暴走が始まると歯止めが利きにくく、さまざまなトラブルを抱え込んでいることが少なくない。ここでガバナンスの重要性を改めて説くつもりはないけれど、企業経営の落とし穴はどこで口を開けて待ち構えているか分からない。

(この記事は本日ロイターに配信したものです)

投稿者 阿部重夫 - 13:30| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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